1ー19
やった!ちゃんとサボらず乗せられた!
でも、もう一つの異世界ものサボってる!
いまから頑張って書いてこよう、うん
「ああ……やっぱり、美味しいな」
「そう? そう言ってくれると私も嬉しいわ」
なんだか嫌な予感がしたので、甘いものを食べながら待っていると言い、ロアールたちだけで行かせたはいいのだが……。
「私の顔に何かついているかしら?」
「いや……なんでもないよ」
目の前に座っているのさ。おっさんが。
まあ、嫌いではないのだが、気を許してうかつなことを漏らすと食われそうといった考えはある。それと同時に、そんなことはしない、とも。オカマとか、そういった人たちは人との距離の取り方がうまい。だから一応は安全と言えば安全なのだ。
時間的にもそろそろロアールたちが帰ってくるころあいだな。と、紅茶を飲みながら考える。そして先ほど食べ終えたケーキの皿を重ね、近くにおいてあったおかわりのケーキを手元に寄せたところで、後ろから肩をたたかれた。
まあ、近づいてくる気配はあったし、驚くようなことはないけど。
「ん」
ケーキを一口食べてから振り返ると、ロアールが立っており、その後ろにどこか上の空でいるノールとエフィーの姿が見える。
「ロアールちゃんたちも帰ってきたし、私も戻るわね」
「ん、ああ。何だかんだいって居心地はよかったよ」
「んふ。ならよかった」
入れ替わりでロアールが俺の目の前に座る。
ノールとエフィーも近くのイスに座って紅茶を飲んで落ち着いているのが見える。
「何かあったの?」
「エガースがお嬢と呼んでいた、初代女王陛下に似た人と会った」
「ふ~ん、そっか。それでエガースは引き受けてくれた?」
「うん、大丈夫。明日にはできるって言っていた」
「なら、さらに実践的な練習は明日、エガースのところで武器を受け取ってからだな」
練習と言った言葉に反応して、ロアールの顔色が少しだけ悪くなったように見える。
「顔色が悪いけれど、大丈夫?」
「……エガースが、優の練習はキツイって言われた。初代女王陛下も泣いて逃げ出すほどの練習だ、って」
あー……なるほどね。それが不安だったのか。無駄にロアールを不安にさせたエガースは死ぬべきだな。うん、隕石でもあの家に落ちてこないかな? ……ねーか。
ま、そのことなら問題ないか。
「安心しなよ、ロアール。ちゃんと個人のレベルに合わせて練習メニューは考えてあるから。あいつの練習をきつくしたのだって、調子に乗っていてイライラしたからストレス発散に……じゃなくて、お灸をすえるためにやったことだし。その点、ロアールたちは自身の判断をしっかりとできているからね。……ノールとエフィーはちょっと勘違いしているところがあるから、それもゆっくりと直していけばいいし」
「ん、分かった」
「さて、ノール、エフィー。そろそろ落ち着いたかい?」
ケーキを食べ終え、紅茶の飲んで一度間を空けた後、2人に声をかける。
「……大丈夫。まだ実感できないけれど、噂が本当だったのが分かったから」
「わ、私も大丈夫、です」
まだ少し、地に足が着いていないような感じだが、まあ、練習を始めたら意識もしっかりとするだろうさ。
「よし、3人とも。今から練習に行こうか。あ、お金はここに置いておくから」
エガースからくすねた金貨を三枚ほどテーブルに置いてイスから立ち上がる。
「こんなにいらないわよ?」
見送りに来た際、おつりを渡そうとしてきたが、それを手で遮る。
「おつり持っているのとか面倒だからさ、そっちで預かっていてよ。また食べにくるから、それから引いておいて」
「そう。それなら預かっておくわね」
俺の意を汲んでくれたようで。
店から出て、イスに座って少し強張った体をほぐすために、伸びをする。
「さて、どこかにそこそこの大きさをした平原はないかな?」
「それならこっち」
「あ、その前にノール、エフィー。冒険者登録ってしてある?」
「あるわよ。エフィーも一緒に登録はしてあるけれど、登録しかしていないからランクは一番下よ?」
「ん、あるなら問題ないよ。いこっか」
依頼を受けに行くときは仕方が無いとはいえ、面倒になるのは目に見えて分かっているから、出来る限りは行きたくない。……もう、この国面倒臭い。
最悪、バレテも構わないってなったら昔使っていたギルドカード見せて黙らせればいいし。だけど、その最悪はできればこないでほしいけれどね。
「ん? もうへばったの?」
そこそこ広い草原には周りを見回しても、俺ら4人のほかに誰一人いない。
平原へと移動した俺たちは、俺対3人で付与魔法、魔力強化ありの模擬戦をしているところ……していたところだった。
なぜなら、俺の前で息も絶え絶えな3人がいる。疲れきって動けないようだ。まったく。そんなに運動させたやつは誰だよな。ほんと。
俺はというと、多少息の乱れはあるものの、しばらくすれば落ち着くし体力も残っているからまだいける。
前にぼそっとウルちゃんに言われたことなのだが。
『ちゃっかり黒自身も勘を取り戻していますよね?』
まさしくその通りです。
勘どころか、素人ならではの戦法といえるか分からないけれど、面白いと思った攻め方などを自分用にアレンジしてものにしたり、体力もまた戻り始めている。全然あの頃には遠く及ばないが。
……3人とも、ありがとう!
だけれど、ちゃんとノールたちも成長している。それもすごい早さで。
もうへばったの? なんて聞いたが、一度だけ昼休憩を取ったとき以外はずっと模擬戦をしていた。空を見てみると日は沈みかけ、オレンジ色に染まっている。……つか、気がつけばいつも日が沈んで空がオレンジ色に染まっているんだよねぇ……。それだけ俺も楽しんでやっていたということなのだろう。
感覚的には5、6時間はやっていたと思う。
うん。これだけ動けたのならば、明日の練習を少しだけハードにしてもモツヨネ?
――ビクゥゥッ!
「ん? どうかしたの?」
3人とも肩をふるわせたかと思うと、恐る恐るといった様子で俺のことを見上げてくる。
どうかしたのか、と問いかけてみても、3人は首を横に振るだけだし……。
別にいいか。
後は帰る前に魔法の練習をしておくかな。
ま、なんにしても明日が楽しみだな。
夜、そのまま宿屋に泊まる――なんてことはなく、ロアールの転移でノールの家へと戻っている。相変わらず両親はいないうえ、姉の方も忙しいらしく帰ってないとかなんとか。
3人は風呂と夕食をときどき船を漕ぎながらも済ませた後、仲良くベッドで眠っている。口とか開いていたらすごいイビキが聞こえてきそうなほどにぐっすりと。
いくら体力がついてきたとはいえ、やりすぎたかな……? でも、後悔はしていない。体を壊さなければ大丈夫だと思ってるし。
いまはウルちゃんを肩に乗せ、散々走った……走らせた池まで来ている。
「あー……疲れた」
「しっかりしてください。だらしないですよ」
「少しは大目に見てよ。今日やった練習とか見てたでしょ?」
「せめて上体は起こしてください」
草の上に寝転んだだけで文句を言ってくるとは……。まあ、何も言わずに寝転んだからウルちゃん、落ちそうになって必死に肩にしがみついていたもんな。
ここまで煩く言ってくるとは……オカンか。俺のオカンなのか! いや、年の差とかありすぎだろ。ただでさえ離れていたのに、加えて500年近く離れたんだよな。もう、立派な大お婆様だな。
「む? 何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「そんなことはないさ」
「それならいいのです」
昔、旅をしてた時も思ったけれど、よく考えていることが分かるよな、と思う。昨今のマンガやラノベなんかも。
魔法で本音を言わせるといったものはない。吐かせるなら基本は拷問だし。心を読む、考えを読む魔法とかも聞いたことがない。作ろうと思えば作れるとら思うが、無い方がいいだろう。悪用されるのが目に見えている。
なんにせよ、その時になぜ分かるのか聞いてみると。
『女の勘よ』
と返ってきたので、なんだかイラっときたから。
『女(笑)』
って返しておいた。
もちろん、そのあとには捕まれば死ぬ、鬼ごっこが始まったわけだが。変則ルールで逃げるの1人、追いかける鬼複数だった。
……懐かしい。
「まあ、とりあえずのところ、今日はエガースんところに俺はいかなくて正解だったな」
「それに関しては私も同意見です。あそこに優がいたらどうなっていたことか……」
そのことを想像でもしたのか、嫌そうな雰囲気が漏れ出ている。
……そんなに嫌なのか。ただ、昔の仲間に会って、少々面倒なことに……いや、楽しいことが起こるだけなのに。
ああ、それが嫌なのか。もともと連れ出したの俺たちが無理やりだって言っていたし。
「……ウルちゃんも姿を見せなかったなんて薄情だよね」
「この姿を見せろと言うのですか? からかわれるに決まっています」
「元に戻ればいいじゃん」
「エフィーたちにバレてしまうではありませんか」
……今更な気がするけどね。
模擬戦の時に2人を守った上に、回復までしてたんだし……いまさらバラしたってそんなに驚きはしないだろう。
なんにしても。
「いずれまた、仲間を集めて馬鹿騒ぎするのは決まっているのだし、そこのところは諦めようか」
「……そうですね。いまさら何をしたって黒に見つかった時点で逃げ道はないのですし、諦めます」
嫌そうな態度ながらも口元が緩んでいるのにウルちゃんは自分で気づいているのかな。
終章はまた、明日か明後日の今頃にでも…はい
また次回〜




