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少しすぎちゃった☆
あと、ヤンデレ?ってタグをつけたけど、保険だし、そこまでヤンデレってことにはならないと思う。たぶん
あ、ヤンデレは今出ているキャラじゃないから!次か次の次あたりに出てくる新キャラだよ!
意外にも先に仕掛けたのはエフィーだった。
「――水の檻!」
双子の使い魔である雷をまとった狼を、それぞれ水でできた正方形の形をした檻に閉じ込める。
「「なっ!?」」
想定外の出来事でも起こったのか、水の檻に閉じ込められた自身の使い魔を見て双子が一瞬、体の動きを止める。その隙を逃さずにすぐさまノールが青い蝶の髪飾りをつけた少女の懐に潜り込み、手のひらを腹にそっと当てる。
「やっ!」
「ぅ、ぐっ!」
ノールの小さな掛け声とともにその少女は吹き飛ばされるが、器用に飛ばされた状態から体勢を立て直し、木にぶつかる事を防ぐ。
「……油断したわ」
「でも、次はない」
それ程ダメージを負った様子が無いのを見て、ノールは下がり、エフィーの隣へと戻る。
「エフィー、ごめん」
「だ、大丈夫だよ! それに私たちが先輩相手にここまで持つなんて、思わなかった」
油断なく目を双子へと向けながら話をするノールとエフィー。
それを見た双子は眉をピクリと反応させる。
「このままじゃ、私たちの名前に泥がつくわね」
「お遊びはここまでにしましょ」
その言葉を合図に、閉じ込められていた狼が力ずくで水の檻を壊して出てくる。
「……やっぱり、簡易魔法だと持たないわね」
「う、うん。だけど次の、いけるよ」
「なら、少し粘らなきゃね」
「練習3倍は……嫌だもんね」
2人は魔力で強化していたのを一旦解き、先ほどよりも濃い魔力を練り直して自身を強化する。
「――水の加護」
そしてエフィーが何か仕掛けてくると反応して、双子と使い魔が身構えるが、実際はノールとエフィーを薄い水の膜が一瞬だけ包んだ後に弾けて消えただけだった。
「我、速さを求めたり。疾風のように荒々しく駆け巡る速さを!」
双子が呆気に取られている隙をつき、ノールは詠唱を終える。
そして先ほどよりも速く移動し、また青い蝶の髪飾りをつけた少女を狙う。今度は背後を取り、胴に向けて横薙ぎに蹴りを放つが、その間に雷をまとった狼が入ってきたためにギリギリのところで足を止め、距離を取る。
意図せずして、双子を挟むような形になった。
「まさか貴女たちがここまでやるなんて、ね!」
「思ってもみなかった、わ!」
背中を預ける形をとった双子はここで初めて杖を手に構え、それぞれノール、エフィーへと向ける。
「……くっ!」
「……あうっ!」
無詠唱で放たれた雷の矢をノールは左腕に。エフィーは右足に受ける。
「あれ? あまり効いていない」
「本当ね。さっきのあれかしら?」
そこからは一方的だった。
冷静に状況を見ながら無詠唱で魔法を放ち、ノールとエフィーに反撃の隙を与えない。
さらには使い魔までもが2人に襲いかかり、防戦一方になっている。
ノールは素早さを生かして直撃を避けているが、完全に避けきれておらず、かすり傷が増えていく。エフィーも水の壁や盾などを使って防ごうとするが、すぐに先を読まれてあまり意味をなしていなかった。
「最初に私たちを仕留められなかった時点で貴女たちの負けよ」
肩で息をする満身創痍の2人を冷たく見下ろしながらトドメを刺すべく魔法を放とうとした時――。
「「え?」」
ノールとエフィーを守るように水球が2人を包み込む。
双子の少女はノールとエフィーにそのような力は残っていないと考えているため、背中を合わせて周りを見回して警戒を高める。
「――まったく」
木の陰から優がぬらりと現れる。
反射的に双子は杖を向けて雷の矢を放つが、放たれる前には射線上から避けているため、後ろの木に当たり、幹がえぐれて木が倒れる。
「可愛い可愛い俺の主と、可愛い可愛い……弟子? 友達って関係でもないし……、やっぱり弟子?」
途中までは様になっていたのだが、セリフが詰まり、肩に座っていたウルちゃんに頬をペシペシと叩かれている。
「はいはい、悪かったって。まあ、ウルちゃんも同罪だよ? あの水球で守る前まで俺とサボってたんだから」
「あなたの所為なのね、これ」
優の口ぶりからそうあたりを付け、はぐらかされるとあまり期待していない風で軽く尋ねる。
「まあね。正確にはこのウルちゃん(笑)がやってるんだけど、そこのとこはほっといて。一応、ここで負けてもらうには困る……いや、負けてもらってもいいんだけど。――ちょっとおいたがすぎたね」
が、意外にも答えが返ってきた。
そして、最後のセリフとともに放たれた殺気によって双子の使い魔が優に向かって襲いかかる。
さながらそれは捨て身の特攻。
動物の本能によって悟ったのだ。使い魔では、主では、絶対に敵わない、と。そして主を逃がすために一瞬でも隙を作るろうと全力を出して――。
「おすわり」
だが、一言。覚悟を持ったとしてもただの一言によって逆らうという意思すら持たせずに、雷をまとった2匹の狼は優の前で地に頭をつける。
圧倒的な力量差による無条件降伏。
2匹の間をゆうゆうと通り、優は双子には目もくれずに水球によって守られているノールとエフィーのもとへと足を向ける。
「撤退、教えるべきだったね。練習メニュー3倍、そんなに嫌だった?」
「まあ、ね」
「あ、あの、これは本当にウルちゃんが……?」
「そうだよ」
少し回復した魔力でエフィーが手当てでもしたのか、ほとんどの傷は塞がっている。しかし、ほぼ空であった状態から少ししか休んでないため、十分でなく、治されていない傷や、中途半歩なものもある。このまま放置していれば傷は塞がるかもしれないが、痕が残ってしまう。
「ウルちゃん、治して」
優の軽い口調に不満げな様子のウルちゃんは頬をペシペシの二度叩いた後、ノールとエフィーのほうを向く。
「すごい……」
「……傷が治っていく」
淡い光が2人を包み、傷が塞がっていき、元の綺麗な肌になる。
「取り敢えず、今日は諦めようか。ノール、降参降参。罰は無しにしといてあげるからさ」
「優がそう言うなら……。……降参」
ノールが優に促されて降参といい、双子とその使い魔を残してノールたちは講堂へと戻った。
そして休み前同様に周囲の視線を集める。
「まったく、ウルちゃんに感謝しなよ、2人とも。格上相手に向かって行くとかバカなの? 模擬戦じゃなかったら死んでるよ? ん?」
なぜならば、戻ってそうそうに優がノールとエフィーを隅に連れて行き正座させ、説教を始めたからである。
「みっともない試合をしたら練習メニュー3倍って言ったけどさ……。勝てる勝てないを見極めるのも入ってるんだよね。ってか、普通は選ばない? これは勝てる。これは勝てない、って」
「でも、逃げたらこの先もまた、ずっと逃げ続ける気がして……」
「……そう言われたら何も言えなくなるよ。まあ、ウルちゃんのお陰でギリギリ間に合ったのだし、感謝しておきなよ」
いまだ優の肩に乗っていたウルちゃんは腕を伝って手のひらへと移動する。
「ありがとう、ウルちゃん」
「あ、ありがとう。ウルちゃん」
それぞれ感謝を述べ、ウルちゃんの頭を撫でるノールとエフィー。顔をあげた2人は優の顔を見て、あっと声を上げる。
「そういえば優、助けに来てくれた時に『サボってた』って言ってなかった? 見ていたんじゃないの?」
「そ、そうです! 私も聞きました!」
「あー……っと、ね。こっちでも色々とありまして」
立ち上がったノールとエフィーに詰め寄られ、立場が逆転し、壁に追い込まれた優。
ウルちゃんはとっくにエフィーの肩へと移動しており、呆れたように首を横に振っている。
「そ、それを言うならウルちゃんも同罪じゃないかな!?」
「……!?」
このままで終われるかと、ウルちゃんを巻き込もうとする優。その発言に余計なことを、と恨みがましく目を向けるウルちゃん。
「ウルちゃんは私たちを守ってくれたじゃない」
「それ言ったら俺だって助けたじゃん……」
「た、確かにそうだけど……」
反撃の糸口を見つけたとばかりに優の態度が大きくなりかけた時、模擬戦が終わったのか、鐘の音が聞こえてくることにより、この場は収まった。
☆☆☆
「休み前と変わらず、ロアールのチームが1位、と。クリムが無双したらしいね。見てみたかったよ」
今日はこれで終わりらしく、いまはノールの部屋に俺、ノール、エフィー、ロアール、ウルちゃんと集まって話している。
俺はイスに座り、肩にはウルちゃん。3人はベッドに腰掛けている。
「1位。でも、前回よりもポイントが少なかった。2位のノールたちとの差が縮まってる」
「そうよ! 私たちは1チームに勝ったけど、あの後に負けたのに2位なんて!」
「ゆ、優さんが何かしたんですか?」
「あー、落ち着け落ち着け。ちゃんと話してあげるから」
早く説明しなさいとばかりに、いまにも詰め寄ってきそうなので一度落ち着かせ、ベッドに座るノールたちの前にイスを移動させる。背もたれをノールたちの方に向け、跨るようにしてそこに座り、背もたれに上半身を被せるようにのせてダランとする。
「簡単に説明すると、だ。敵チームを4組ほど屠った。以上」
「「「…………」」」
これ以上にないほど簡単に説明したつもりだったのだが……何かいけなかっただろうか?
肩にいるウルちゃんからも呆れた様子が見ないでも伝わってくるから、あら不思議。
「敵チームを屠った?」
「4組ほど?」
「まあ、別にそんなことはどうでもいいんだよね。ってか、今回は最後まで生き残らなかったのに2位なことに驚きだよ」
まだ理解が追いつかないのか、呆然としているけれど……俺としては2位なことに疑問を抱いている。
まあ、間違えているとは思わないし、倒した4組が高位にいたのか、リタイアしたときにノールたち、ロアールたち、あの双子の3チームしかいなかったから。ってのが理由としてあげられるか。
「ほら、一旦戻ってきて。これからのことについて話すからさ」
手を2回ほど鳴らすと、3人は仲良く体をビクッとさせてこちらに目を向ける。
「それでさ、明日からって何かある? 学校行って授業とか」
「確かに、明日から授業はあるけれど……強制じゃないわよ? 定期的に行われるテストに出て合格ラインに達せられるならこなくてもいいんだもの。……ま、合格ラインに達せられるレベルの人は数人しかいないんだけどね。ロアールはいつも余裕で合格しているわ」
「大学みたいなもんか。行ったことないけど」
「ダイガク? 初めて聞くわね」
「ああ、俺の元いた世界の話だ。ここでは忘れて。……それじゃ、明日からはノールとエフィーも授業にでなくていいな」
「……今の話聞いていた? テストに合格できるのはロアールみたいに――」
「ノールこそ何を言っているんだ。そんな机に向かって上手くなるようならとっくになってるよ。たった数日であの双子に深手までとはいかないけれど不意をつけるほどになったんだ。任せろ」
「……それもそうね。エフィーはどうする?」
「わ、私も優さんに任せます」
ロアールは? と目だけで聞いてみると、首を縦に振っていたので、一緒に来るのだろう。
楽しみになったな、ウルちゃん。
――ペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシ
なんか不機嫌になって頬を叩いてくるんだけれど……。
ほら、ノールたちも驚いた様子で見てるぞ。
そんな考えが伝わったのか、頬を叩いてくるのを止める。
「それじゃ、明日は一通り練習メニューこなしてから俺の魔法講座な。んでもって明後日から本格的に身体動かしていこうか」
そこで一度区切り、ニッコリと微笑む。
「あ、全員、練習メニューは2倍ね」
ピシリと音がしそうなほど綺麗に?3人は固まった。
そして一拍の間を空けて詰め寄ってくる。
おいおい、そんなに詰め寄られたらイスから落ちちゃうって。
「れ、練習メニュー、罰はないって!」
「い、言ってたの私も聞いてましたよ!」
「私も? 私も2倍なの?」
ものすごく真剣な顔をしているが、俺にとっては非常にそそる。人が必死こいている姿っていいよね。そんなことを考えているとウルちゃんに頬をグリグリとされるが、拳にしてはプニプニと柔らかすぎるため、たいして痛くもない。
「確かに、練習メニュー3倍っていう罰はないよ? 2倍にしたのは、まあ、なんとなくだ」
なんとなくと伝えると、3人はがっくりと地面に膝をつき、項垂れる。
このまま背中とか頭を踏みつけたら気持ちいいんだよね。……さすがに、ノールたちにはやらないけれど。
「まあ、頑張っていこうか」
俺の声に誰も反応することはなく、虚しく消えていった。
最近、新たに3つの小説ネタが出てきたんよね……
書きたいけど、更新がものっそい遅くなるし……悩みどころだ
まあ、そんなことは気にせずまた次回〜




