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本当は昨日に載せられたけど、相変わらず編集サボったよ!
もう一つの異世界もの、今回は早く載せられると思うから(おそらく)、つぎもそれほど期間開けずに載せられるよ!(たぶん)
「ほら、踏み込みが甘い」
「あたっ!」
「踏み込みも甘ければ付与魔法も中途半端。また集中が切れて解けていたよ?」
「数日でそんなに上手くなるわけないじゃない……」
「そう言われたらそうなんだよねぇ……。100の練習より1の実践。って言葉があるんだけど、実践に行かせるには経験が足りないから実践に近い形でやってるんだけど……やっぱり、心のどこかで安心しているのかな?」
気がつけば休みも今日で最終日である。
……初めの数日は俺とロアールでブラブラしてたのもあるけれど。
側に目を向ければ、ノールの前に限界まで俺と模擬戦をして疲れはてて横たわるエフィーとロアールの姿が。
「この模擬戦での伸び代が高かったのはエフィーだったね」
「あ、ありがとうございます」
理由はわからないが、教えた魔法もどんどん自分のものにしていった。
完璧か? と聞かれたら首を横に降るレベルであるが、学院でも下の中から下の上。もしかしたら中の下までいっているかもしれない。学院のレベルがどれくらいなのか知らないため、辛口評価をしているつもりだ。
ロアールはもともと平均的に高いため、伸び代で言えばそれほどでもないが、いままでよりも確実に強くなっていっている。
問題のノールなのだが、教えた付与魔法も使えるようになっているし、一応主であるため、2人よりもノールに重視を置いて練習しているため、近接戦闘も一般人相手には負けない程度にはなっていると思う。
先ほどもノールは自身に付与魔法を付けて戦っていたのだが、ふとしたことで集中が切れて解けてしまっている。俺もそうなのだが、ノール自身も本当に強くなっているのか疑問を抱き始めている。
確かめるにはエフィーかロアールと戦わせるのが手っ取り早いのだが、なんとなく、やらないでいる。なので明日にでも学院の誰かに喧嘩でもふっかけてノールに戦ってもらおうかな、なんて思っていたり。
「本当は今日、ギルドの依頼で儲けて魔物を狩りに行こうかなとか考えていたんだけど、ケガとか負ったら困るし、止めておいたのがアダになったか……?」
「アダになってない」
「ん?」
「今日、ケガを負ったら困る」
「困る? なんで?」
「……ノール、説明していないの?」
「……あはは」
ロアールが何を言っているのか分からないが、ノールが原因であるといったことだけは理解した。明日、何かあるのだろう。また、模擬戦とかだと嬉しいのだが。わざわざ喧嘩ふっかけなくても済むから。
「それで、明日には何かあるの?」
「うん、また模擬戦をやるの」
「……ほう」
「「「…………」」」
嬉しいなぁ。何故か3人は俺を見て少し引いているように見えるが――。
「――これで、喧嘩ふっかけなくても済むな」
「何しようとしてたの!?」
ふと漏れた心のつぶやきが聞こえたらしく、ノールに勢いよく詰めかけられた。
「いやさ、実力試すのに学院の他の生徒だと楽かな?と思って、そこらの生徒に喧嘩売ってノールになすりつけようか――なんで首を絞めているのでしょうノールさん。締まってる苦しい、いや本当に」
説明をしてあげたのに首を締め上げられて危うく昇天しかけた。
まったく。エフィーが止めてくれなかったらどうなっていたことやら。
「ありがとう、エフィー」
「い、いえ」
「実は、エフィーにも同じようなことをしようか考えて――エフィー? 落ち着こう? 首を睨むのは止めよう。あと、その構えた手もおろしてさ」
エフィーにまで殺られそうになるとは……。あの大人しいエフィーが。
さて、ふざけるのはここまでにして、どうすっかな。まだ、日が沈むには時間があるし……。午後3時くらいか? でも、明日に模擬戦やるって知ったとなると、ここで切り上げて明日に備えるほうがいいか。
「よし、今日はここまでにしよ――やっぱり続けようか?」
……ここまでにしようと言い切る前に目を輝かせた3人を見て、徹夜で練習させるかという考えが頭をよぎった。
「冗談だからそんな顔するな。軽く体ほぐしたら終わりにしよう。……ケガとか負ったりするなよ?」
「「「やった!」」」
今日もすぐに寝るのだろうな。
俺はどうしようか……。……そうだ。
「あ、エフィー」
「な、なんですか?」
「そんな怯えないで。とくにどうとかではないから。ちょっとさ、エフィーの使い魔を貸して欲しいだけなんだ」
「それなら、大丈夫ですけど」
手のひらに水の精霊である、えっと……。
「エフィー、この子の名前なんていうの?」
「えっと、ウルちゃんです」
「ウルちゃん、ね。ありがとう。明日の模擬戦が始まる前までには返すよ」
「は、はい」
ウルちゃんを受け取った俺はその子を肩に乗せ、地面に腰を下ろす。
「俺は夕食までには戻るから、先に戻ってていいよ」
3人はそれぞれ返事をして、戻っていった。これから風呂にでも入るのだろうななんてことを考えつつ、姿が見えなくなるのを待つ。
「…………」
そろそろ、かな?
「3人とも家に入ったと思うし、もう大丈夫じゃない?」
肩にいたウルちゃんを手のひらに乗せて話しかけるが、首をかしげるだけで返事はない。
「こんなとこで何やってるんだよ――ウンディーネ」
面倒になったのでストレートにそう言うと、一瞬だが手のひらにいるウルちゃんが身体を強張らせた。それでも返答がないうえ、警戒心を抱いているように見える。普通の人は気付かない程度だが……まあ、自身がウンディーネですって教えてくれるのは伝わってくる。
「エガース……じゃなくて、ヘタレチキンって言えば分かるか?」
「……黒? いえ、ですが髪が――はっ!?」
「いやいや、いまさら取り繕ったって遅いし。それに黒であってるよ」
声が漏れていることに気がついてウルちゃんは口に手を当て、何事もなかったように口から手を離す。
それにしても、相変わらず抜けているな。
「……本当に黒なのですか? 確かに、髪の色は違いますが似ているような」
「ほら、これなら信じられるだろ?」
髪を黒くして見せると、納得したように頷く。黒だと信じてもらえたようなので、ノールたちが戻ってこないとも限らないので髪の色を白に戻し、ウルちゃんに話しかける。
「それで、こんなところで何やってるの、ウルちゃん|(笑)(かっこわら)」
「かっこわらとかつけないで下さい。……相変わらずですね。そうやって小馬鹿にするのは。――お帰りなさい。黒」
「まあ、また戻ってくるとは言ったけれど、ただいまって言うよりはなんだろ? 会いに来てやったよ、見たいな?」
「五百年も待たされましたけれど」
「俺の世界じゃ五年しか経ってないんでね」
俺の手のひらから膝の上に移動したウルちゃんはジト目を俺に向けてくるが、嬉しいといった感情も漏れていて可愛らしいものだ。
「黒にとっては五年しか経っていないのかもしれませんが、私たちは五百年も待たされたのですよ? 特に黒が元の世界に帰ってから数年……数十年は姫様を抑えるのが大変でした……」
「ところどころ強調してくるなぁ……。まあ、お疲れ様」
「他人事だと思って……」
ため息をつき、額に手を当てて首を数回横に振る。だが、しばらくしてクスッと笑みを漏らす。
「そういえば黒。いつ、私だと気がついたのですか?」
「え? エフィーに初めて見せてもらった時」
「……流石ですね。サボっていたようですが、勘は衰えていないようで」
「やっぱり、サボってたのバレるよな。エガースは気付かなかったようだけど」
「あのヘタレチキンはしょうがないですよ。しょせん、ヘタレチキンなのですから」
「相変わらず厳しいな。で、ウルちゃんよ。なぜ、エフィーの使い魔に?」
「そう、ですね。ストレートに言えば暇だったからです。もともと、誰も私を使い魔に出来ず、使い魔になる気も無かった私を黒たちは暇ならついてこいと言って半ば無理やり色々なところへ引っ張り回されました」
「あれ? 無理やりだっけ?」
「……ええ、遠回しに遠慮していたのに何を勘違いしたのか肯定と受け取って無理やり、です。ですが、とても楽しかった。新たに増えていった仲間や、無双ゲーと言って敵の大軍に突っ込んでいったりと。黒がいなくなってからは皆、落ち着ける場所を見つけていき、会うこともなくなりました。だから暇つぶしにと使い魔になってみたのですが……」
「そしたら俺がいた、と」
まったく、来るならもっと早く来てください。と小さな声で呟いたつもりのウルちゃんだが、しっかりと俺の耳に届いている。
だけど、ここでそれを言うのは野暮ってものかな?
「素直じゃないな、ウルちゃん|(笑)(かっこわら)」
まあ、からかいはするけれどね。
「ですから、かっこわらをつけないで下さい」
「でも、安心しなよ」
「はい?」
何を言っているのか分からないといったように首をかしげるウルちゃん。
これで気付かないとは。ウルちゃんも衰えたものだな。
「また、みんな集めてバカみたいに笑おうよ」
「……そうですね。また、あの騒がしい日々が戻るのならばついていきますよ」
「あ、ノールにエフィー、ロアールも連れてな」
「エフィーにケガを負わせたら承知しませんからね?」
「……うわ、引くわー」
「引くわーとは何ですか! 主人の心配をするのは当然です!」
膝の上に立ち、地団駄を踏んでいるが痛くも痒くも無い。そりゃ、本来の姿で無いのだし、当然といえば当然か。
「まあ、取り敢えずはエガースとウルちゃん。2人と再会できたわけか。……エガースもそうだけど残ってる奴ら、曲者しかいなくね? マトモなのって俺とウルちゃんぐらいしかいなかったよな?」
「……場を引っ掻き回したり先ほど言った無双ゲーと言って大軍に突っ込んで行ったのは黒ですけれど?」
「まあ、あの時の俺はまだ子供だったし、若かったから。――いまの俺はあの時よりも派手に出来るよ!」
「そういった意味ではないのですけれど……」
呆れたようにため息をつくウルちゃんだが、しばらくするとまた、クスッと聞こえてくる。
「……ほんと、素直じゃないんだから」
☆☆☆
「それで、いつまでに戻るって言ったっけ?」
「……夕食までには、と」
「で、夕食の時間になったのに戻ってこなかった理由は?」
「……寝て、気づいたらこの時間に」
俺は今、地面に正座をさせられています。なぜ、こんなことになったのかと言うと、ウルちゃんと昔話で盛り上がり、時間を忘れてこの時間に。本当のことを言うわけにはいかないため、このようなウソをつかねばならぬ。
ちなみに、ウルちゃんはエフィーの肩に座り、バカにしたような笑みを浮かべて俺を見ている。
……後で覚えてろ、ウルちゃん(笑)。ちみも原因の一つなのに。この場でバラしてやろう――。
「――優! 聞いているの?」
「……聞いてるよ」
自分が悪いとはいえ、正座が辛くなってきた。なんとかして説教を終わらせなければ……!
「ノールたちはもう食べたの?」
「まだよ! 優が帰ってくるの待ってたんだから!」
やべ……やぶ蛇やらかした……。
「そ、そか。ありがとね、待っててくれて。でも、ノールたちは明日に備えなくちゃいけないからさ、遅れた俺が言うのもなんだけど早くご飯食べて寝よ? ね?」
ウルちゃん、呆れたようにため息つくの止めよ? ちみも原因の一つなんだからさ。
それに俺だって自分で惨めだって分かってるんだから。
「ノ、ノールちゃん。優さんの言う通り、そこまでにして、ね?」
「……エフィーが言うなら。ほら、行くわよ」
「ん」
エフィーのおかげで終わった。
助けてもらっておいてなんだけれど、もう少し早いと助かったかなぁ……足が痺れた。
でも、そんな俺に気付かずに3人は行っちゃうし……。我慢して行きますか。
「そう言えばさ」
「なに?」
なんとかついていって、いまは3人と一緒にご飯を食べている。
そこでふと、思い出したことを尋ねてみることにした。
「明日ある模擬戦のチームって、休みの前と一緒?」
「は、はい。一緒です」
「そか、ロアールとは敵なのか」
「……手加減は、しない」
「大丈夫大丈夫。ノールもエフィーもそれなりに強くなってるから、少しは持つはずだよ」
「か、勝手にハードルを上げないでよ!」
ノールが何か喚いているが、いまは食事中だ。もう少し静かに出来ないのかね。
口に出して言ったわけではないので、自身で、気づいたからか、恥ずかしさで頬を朱に染めて大人しくなる。
「まあ、何にしてもそこそこの学生には勝てるはずだし、気負わずに行こうよ。失うものなんて何もない!」
……あ、この休みって使い魔とのコミュニケーションを取るためだっけ?
なら、明日の模擬戦では使い魔も参戦するわけで……。
…………黙っておくか。
「明日は俺、よっぽどのことがない限りは観戦に徹するから、自分たちで頑張ってね」
「え? 戦わないの? 私の使い魔なのに?」
……使い魔も戦うこと、忘れていなかったか。
「それだと、どれだけ強くなったか分からないでしょ? それに、よっぽどのことがない限りは、だから。ってか、ロアールはクリムとのコミュニケーション、大丈夫なの?」
「大丈夫。初日ですでに終えている」
「さすが。なら、ノールとエフィーも頑張ろう! 取り敢えずはみんな食べ終えたのだし、食休憩終えたら明日に備えて寝ようか!」
明日はどんな模擬戦になるのやら。
……チーム決めるときに俺が声かけた双子の女の子たち、結局誰だったんだろ? ロアールのチームに負けたと思うのだけれど、オーラだっけ? なんだかそんなんがどうこうとか言ってた割には弱いのかな?
別にいっか。
またいるとしても、ロアールのチームが倒してくれるだろうし、気にすることでもないか。
「それじゃノールたち、おやすみ」
ノールの部屋の前で3人と分かれ、あの普通の部屋へと向かう。
――願わくば、明日は寝坊しませんように。
誤字脱字あったら教えてくれると本当に嬉しいな!
もう一つの異世界者作品もよろしくね!
また次回!




