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平成二十五年、二月

 平成二十五年、二月 

 

 いつもより薄暗い空間に、知らないピアノ曲が流れていた。テーブルの隅には琥珀色の砂糖壷がひっそりと光っている。

 静川は注文を済ませ、念珠をした手を膝に置いた。薄暗さから逃れられない夕刻。夜に届かず、外の光がまだ完全に失われていない間の灯りは、どこか虚ろで侘しい。

 ぼんやりと宙を見る。薄暗いのは夕暮れのせいだけではなかった。少し趣のある喫茶店にありがちな椅子やテーブルは黒糖羊羹のような色をしていて、カウンターの奥にいる客のサングラスやスーツも黒い。なにより、静川と違って艶々としている頭髪が黒い。

 僧侶である静川の衣服も負けずに黒かった。袈裟は外し、今は布袍ふほうと呼ばれる黒い僧衣のみなので頭と足元以外はただ黒い。椅子にかけてある古風な外套も黒かった。

 待ち人はまだ来なくて、喫茶『ジャック』の客は二人しかいない。黒いベストに蝶ネクタイのマスターが、ボックス席に座っている静川のもとへ来ると、暗くなった窓に目をやった。

「少しは日が延びたよね」

「もう節分ですからね。明日は立春です、暦の上では春の初めですよ」

「ショウさんとこは忙しくないの」

 静川の目の前にコーヒーを置きながらマスターが聞く。『昌生』と書いて『しょうせい』と読むのが僧侶としての名前だが、得度して二年が過ぎても周囲には定着しておらず、もう二十四だというのに近所の婦人達からは『お寺さんのマサ君』とか『小坊主さん』などと呼ばれている。

 静川は目の前に置かれたコーヒーに合掌しながら言った。

「うちの寺では節分の豆まきなどは行わないんですよ」

「あ、そうだっけ」

 マスターはのんびり肯いてカウンターへ戻っていった。宗派の違いが『お坊さん』のイメージの違いを生み、他人から軽くがっかりされることに、静川は少し慣れている。

 親鸞聖人が得度したと言われる夕暮れ時も過ぎ、空は夜の色に近付いていた。虚ろな薄暗さは消え、頼りなかったはずの灯りは明るさを増し、客の黒っぽさが益々際立ってくる。

 次にくる客がどう思うだろうと考えながら静川がカップに口をつけると、からん、とドアの開く音が響いた。

 こんばんは、と女の声が続き、黒いストールを羽織った若い女性が現れる。おっ、とマスターが顔をあげて明るい声を出した。

「お疲れ、ショウコちゃん」

 待ち人ではない。が、知っている声と名前に、静川はなんとなく気配をひそめて下を向く。しょうこちゃん、と言えば『からす屋』の白野荘子だ。

 ご注文は? というマスターの声に、任せるよ、と涼やかな声が返す。ちらりと見ると、和服姿の白野が入口近くのカウンター席に座るのが見えた。

 また黒い客だった、と静川はひっそりとコーヒーを啜る。締めている帯こそクリーム色だが唐花柄の紬は黒く、肩に届く髪も黒い。荘子ちゃんは若いのに渋いのよ、と祖母が評していたのを思い出す。

 サイフォンのフラスコを火にかけ、機械で豆を挽きながらマスターが聞いた。

「今日も蚤の市? どこであったの」

「市役所の向こうの神社。ただでさえ日曜は混むってのに、今日は豆まで撒いてたよ」

 カウンターに片ひじをついた白野が疲れたような声を出す。古物や雑貨を扱うからす屋は、蚤の市にもよく顔を出すのだと祖母から聞いていた。静川の祖母も趣味で古い器を探しに行くので白野とはいつも顔を会わせるらしい。

 挽いた豆の入った漏斗をフラスコにセットしながらマスターが言った。

「節分だからしょうがないよ。そっちは掘り出し物?」

 そっち、と言われた白野は脇に置いていた小さな風呂敷包みに目をやると、いいや、と薄く笑って黒い拳銃のようなものを取り出し、カウンターに置いた。

「古い銀玉鉄砲。墨壷を買ったらおまけにくれたんだよ。四十年くらい前に流行ったってうちの爺様が言ってた。今も駄菓子屋の親戚みたいな店には売ってるらしいけど、銀玉はもう造ってなくて、最近のは銀玉風のBB弾を撃てるように出来てるよ」

「そういや持ってたなあ。でも、どうするのそんなの。からす屋で売るの?」

 お湯の上がった漏斗を撹拌しながら五十代手前のマスターが聞いた。白野は笑いながらプラスチックの黒い鉄砲を手にして言う。

「昔よりまともな作りのやつが、今は百円かそこらで買えるのに、こんなもん誰が買うよ。ところで、もう節分の豆は撒いた?」

 はあ? と反応に困りながらもコーヒーの抽出を見守るマスターに、鋭い目をした白野が銃口を向け、かちり、と軽い音をさせて引き金を引いた。

 込められていた銃弾にはマスターの体を貫くような度胸は無かったのか、銃からぽろりと転げ落ちてカウンターの上を転がる。壊れてるんだよ、と白野が目を細めて笑うと、マスターはコーヒーを注いだカップを前に置き、転がっている弾を摘み上げた。

「なにこれ大豆?」

「神社でばら撒いてた豆だよ。昔のやつは作りが大味で、大豆が銀玉の代わりになったんだって。当時の子供は高い銀玉を買わずに豆買って撃ってたらしいよ。こいつもバネを変えてちょっと直せば、いい豆鉄砲になるかもな」

 そう言って白野は銀玉鉄砲を置き、白いカップを優雅に持ってゆっくりと口をつけると、おいしい、と小さく息をついた。

 マスターは煙草を取り出そうとする客の側に灰皿を置き、忘れていた外の看板に電気をつけると、カウンターに置かれたままの銀玉鉄砲をちらりと見た。

「それにしても、銀行でそんなの出したら大変なことになるよ」

「そんなことしないよ。銀行なら豆より小銭をばら撒いてくるさ」

 やめたげて、と銀行に同情するようにマスターが眉を寄せる。ごちそうさま、と白野は静かにカップを置いて銀玉鉄砲をしまうと、会計を済ませ上機嫌で出ていった。

 黒っぽい内装に同化していた静川が力を抜いて息を吐く。ぬるくなったコーヒーを飲み、携帯電話で時間を確認していると、がらん、と勢いよく扉が開いた。いらっしゃい、と言いかけたマスターにボルドーのダッフルコートを着た男子学生が早口で言う。

「マサさんいる?」

「あ、ショウさんなら奥だよ」

 今思い出したような顔でマスターが奥のボックス席を示した。今風の眼鏡をかけた高校生がショルダーバッグを外して静川の前に座る。下の名前がまだ『昌之介』だった頃から懐いていた近所の子供が、この藤盛ふじもりだった。

「遅くなってすいません昌さん。彼女の事でちょっと色々あって」

「あ、相談というのは、失恋したとかそういうお話でしょうか」

 声をひそめて尋ねる。藤盛はメニューを用意するマスターに、マサさんと同じの二つ、と告げて静川に向き直った。

「いやいや、マドカが帰りたがらなくってさあ、昌さんと会うだけだって言ってんのに浮気とか疑うんだよ。そういうのって良くないですよね」

「そういう事情でしたら当事者同士で納得のいくよう存分に話し合われた方がよいと思います。それでは」

「あー、違うってばもう」

 立ち上がり外套を取ろうとする静川の腕を慌てて押さえ、藤盛はそのままその頭部を見つめながら続けた。

「しっかりしてそうで神秘的な人に相談したい話なの!」

「……私は普通の人間ですよ」

 仕方なく静川は椅子に座り直し、マスターが二人の前にコーヒーを置いていくと、藤盛が真面目な声を出した。

「実はさ、お祓いっていうか、供養っていうの? とにかく幽霊を落ち着かせるみたいなやつをお願いしたいんだけど」

「お祓いなら神社ですよ。私……寺としては、霊魂とか幽霊を否定しなければならない立場なんですけど……供養というなら、どなたか亡くなられてるんですよね。お葬式もしたのでは?」

「いや、生死不明なんだけど多分死んでるっぽいからさ」

 藤盛がテーブルに身を乗り出して肘をつく。静川は二杯目のコーヒーに手を添えながら困ったような声を出した。

「生きているかもしれない人を死人扱いするのはどうかと思いますよ」

「でも、幽霊が出るんだから死んでると思うってアツノブも言ってたし」

「アツノブって、友枝ともえださんとこの篤伸くんですか?」

 驚いた静川の声に、カウンターの奥にいた客がボックス席をちらりと見た。静川が慌てて頭を下げる。

 友枝篤伸ともえだあつのぶは、町の南西にある裕福な家の子供だった。個人的な交流は無いが、十年ほど前に篤伸の母親が死去した際には、静川の父である住職が葬儀を行っている。

 現在も友枝家からは高額のお布施を預かることが多く、静川のいる浄桂寺にとって友枝家は特別な家の一つだった。関わる際に粗相があってはならない。

 藤盛は砂糖とミルクを足したカップをくるくると混ぜながら言った。

「後輩なんだよあいつ。ガキっぽく見えるけど俺のいっこ下。ちゃんとお経代は払うって言ってるからさ」

「ええと、お布施というのは僧の読経に対して払うものではありません、阿弥陀様に施されるものをお寺がお預かりしているだけで」

「なんでもいいけど、とにかくあいつも用意してるから、助けてやってくださいよ。迷える子羊が苦しんでるんだからさ」

 ですから、と言いかけて静川が黙る。仏教やお布施に関する正しい認識はともかく、誰かの苦しみを軽くする手段として未熟ながらも自分の存在が求められているのは確かだ。寺の存続の為にも、まずは父に相談するべきだろう。

「わかりました。それでは住職に話してから」

「それなんだけど、あんまり人に知られたくないから、昌さんに頼みたいんだって」






 目を覚ました静川は、しばらく枕に頭をつけたまま、ぼんやりと部屋の障子を見ていた。暗くとも朝である気配に、ゆっくりと上半身を起こす。枕元の携帯電話に手を伸ばし、四時過ぎである事を確認した。起きる頃合いとしては丁度いい。

 二月五日の火曜。今日は藤盛に頼まれた件で、篤伸から話を聞く約束をしていた。

 自分の部屋にいても寒いだけなので布団を畳み、洗顔を済ませて身支度を整える。境内の掃除や用事などは早めに済ませる必要があった。家族には私用と伝えてあるが、午後は友枝家へ行かなければならない。

 白湯を飲み、まだ暗く冷え切った本堂を清掃する。

 話を聞くとは約束したが、静川に霊感の類は無いし除霊の能力も無い。そもそも浄桂寺の宗派はさまよえる霊などいないという考えだ。むしろ篤伸が幽霊や心霊だのに傾倒して日常生活に支障をきたしていないかを心配してしまう。

 苦悩や挫折を繰り返して不本意な現実と向き合わざるを得ない時期に、水子の祟りだとか先祖供養が足りないせいとか名前の画数が悪いせいだと思い込み、克服すべき困難から目を背けてしまうこともある。

 そこまで深刻な話でなくとも、多感で不安定な年頃の少年があえて若く未熟な自分に相談しようというのだから、大人には言いにくい話かもしれない。だが、悩ましい女性の霊につきまとわれて困る、などと打ち明けられたとしても、自分に読経以外の何ができるだろう。

 本堂の掃除を終え、東の空が白む頃には静川の体も温まっていた。掃除道具を片付けると再び本堂へ向かう。冷え切った渡り廊下で足を止め、明け始めた空とうつろう光をぼんやりと見た。

 美しい景色を見るたびに、少し寂しいような気持ちになる。緑がかった暗い青の果てには金色の雲が細くたなびいていた。




「今日は少し暖かいですね」

 外套を畳みながら友枝篤伸に微笑んで見せる。日が差していたこともあり、午後の三時を過ぎた頃には歩きやすい程度に気温が上がっていた。黒衣に輪袈裟わげさ姿の静川に、制服姿の篤伸が緊張したように頭を下げる。学校から帰ってきたばかりらしい。

 北西の外れにある浄桂寺から南、町の南端でもある静かな地域に友枝家の屋敷はあった。敷地は木々に囲まれていて、洋風の屋敷の外では葉の落ちた広葉樹が乾いた木肌を風にさらしている。

 応接間に通され、椅子を勧められた静川が着席すると、篤伸は一度廊下に出て、すぐに茶器などを乗せたトレイを持って戻ってくる。今誰もいないので、と篤伸はコーヒーの入った高価そうな器をテーブルに置きながらもう一度頭を下げた。

「申し訳ありません。本来なら僕がお寺に伺うべきなのに、ご足労いただいて。……あの、藤盛先輩は昌さんってお呼びしているみたいですけど、静川さん、でよろしいでしょうか」

「どうぞどうぞ。その辺りは皆さん困っているみたいで、それぞれが呼びたいように呼んでいます。藤盛君と同じでも構いませんよ。ここはお寺ではありませんから」

「あと、静川さんはコーヒーがお好きだって藤盛先輩から聞いたんですけど」

 どうぞ、と緊張しながらコーヒーを勧める篤伸に静川は礼を言って合掌する。特別お好きというほどではなかったが、篤伸くらいの年頃に少し背伸びして飲んでいたのが定着してしまった。

 普段は僧侶らしくあるためにも『ジャック』以外では日本茶しか飲まないようにしているが、藤盛のお陰で『らしくない』事が他人に伝わってしまったらしい。どこかばつが悪いような感覚に小さく笑う。

「藤盛君と仲良しなんですね」

「はい。藤盛先輩は彼女もいるし頼りになります。安全だし」

「……一般的には彼みたいなタイプのほうが危険に思えたり、爆発しろとか思ったりするものではないですか」

「とんでもないです。僕が信頼して相談できるのは藤盛先輩だけです。あの、今日はどうぞよろしくお願いします」

 篤伸は静川の向かいに座り、丁寧に頭を下げる。

 藤盛の一歳年下と聞いていたが、外見は高校生というより中学生のように見えた。しかし言動は大人びていて、まともな現実感覚を持っているように思える。

 僧侶ならホイミ一発お願いしますよ、などと言っている藤盛とは違う生き物のようだ。これなら除霊してほしいとか霊が見えるなどの話ではないかもしれない。

 静川はコーヒーに口をつけ、ほっとしたように尋ねた。

「それで相談というのは」

「除霊して欲しいんです」

 鼻に入りかけたコーヒーの痛みをこらえ、無理矢理飲み込む。いろいろと考えることはあるが、まずは篤伸の話を聞いて状況を理解するべきだ。口元を押さえて平静を装いながら尋ねる。

「なにか霊的な現象で、生活に支障をきたしていたりするんでしょうか」

「実は、真弓子まゆこの様子がおかしいんです。時々、真弓子の父親の霊がここに来ているみたいで、真弓子と話をしているようです。……真弓子の事情は、ご存知ですよね」

 篤伸が確かめるように静川を見た。あそこの家も色々あったからねえ、と祖母が話していたのを思い出す。

 マユコ、と篤伸が妹のように呼び捨てにしているのは、篤伸よりも一つ年上の星尾真弓子ほしおまゆこのことで、春には高校三年生になる少女だった。

 祖母から聞いていたのは、真弓子にとって唯一の身内である父親が失踪し、親しかった友枝家が真弓子を引き取っているという話だった。その後、彼女の父親が見つかったとか死亡したという話は聞いていない。

「霊、というからには、真弓子さんのお父さん……星尾竹人ほしおたけとさんは、亡くなられていたんですか」

「そういう訳ではありませんが……行方不明になって七年になります。確認は出来ていませんが……状況から考えて、死んでいると思っています」

 真剣な目をして篤伸が言い切る。『状況』といっても雪山で消息を絶ったとかではなく、突発的な夜逃げのようなものだと静川は聞いていた。

 その際、真弓子の父親である星尾竹人は篤伸の父親に娘の事を頼んだという話だし、警察にも自分の意志による失踪と判断されている。

 七年も音沙汰がなければ生きていない可能性を考えてしまうのも仕方ないが、わざわざ姿を消した人間が、わざわざ化けて出るのだろうか。

「霊らしきものについては、真弓子さんは君になんと説明したんですか」

「それは……本人からは聞いてません。真弓子は僕の前で父親の話をしないし、僕もその話はしにくくて。でも、先日も真弓子が古い知り合いに話しているのを、偶然聞きました。『近いうちに父もお礼に伺います』って」

「はあ」

「あとから、誰の話をしてたのかと聞いたら、『誰の話もしていない』と言われたんです。霊に乗り移られて、自覚がないのかもしれません。もちろん、聞き違いなんかじゃありません。一度や二度じゃないんです」

 篤伸は強い口調で言うと、自分を落ち着かせるようにブラックのままコーヒーを飲んだ。静川もカップに手を添えながら慎重に尋ねる。

「では、真弓子さんのお父さんが生きて会いに来たのではありませんか?」

「それなら僕の父や、僕にも顔を見せるはずです。真弓子が『父が会いに来た』とか『昨日話した』と言っているだけで、それを見た人はいません。真弓子にしか見えないし、霊だと気付いてないんです」

「……ええと」

「真弓子は子供の頃から、ずっと父親が迎えに来るのを待っていました。だから、真弓子にショックを与えないよう、霊が自然に消えていくようにお願いしたいんです」

 大人びた口調で篤伸は真剣に言う。真弓子の前だけに現れる、生死不明の父親の霊。

 星尾竹人の失踪は、娘を抱えた生活が立ち行かなくなったせいだと聞いている。ならば霊というよりは、生きた星尾が娘の顔をこっそり見に来たとかそういう話ではないだろうか。

 篤伸に死んでいると断言されたら、真弓子も父親の話などできないだろう。

「真弓子さんも篤伸君も、お互いに気を遣っているんですね。……だからこそ、近い人には言えないこともありますよ。仮に真弓子さんと、幸いにして無事だった星尾さんが再会していたとしても、それを手放しで周囲に言える事情でもないでしょう」

「聞いた話では、真弓子はまるで普段から父親と会っているみたいに話していたそうです。携帯で父親と話しているらしいところを見た人もいて、……こっそり真弓子の携帯を確認しましたが、それらしき履歴はありませんでした。父親らしき連絡先もありません」

 篤伸が気まずそうに篤伸が俯く。それは少し怖いかもしれない。繋がっていない携帯電話と真弓子が話をしていたら、篤伸でなくとも心配にもなるだろう。

 問題があるのは真弓子かその携帯電話のどちらかだと思うが、そのどちらでもない可能性を追求するべく、篤伸は真剣に言った。

「……星尾さんの霊は、真弓子をどこへ連れて行こうとしているんでしょうか」

 思い詰めたような篤伸に、どう話すべきか考える。静川の寺の宗派は、成仏できずにさまよったり、枕元に立って恨み事を言ったりする霊魂の存在を認めていない。誤解を解く機会は貴重だ。

「一応、お寺としてのお話をさせてもらいますね。往生即成仏といいまして、亡くなられた方は阿弥陀様のお力によってすみやかに極楽浄土へ往き、仏となります。ですから、成仏できない霊魂とか幽霊などはいないという考えです」

「では、どうかお願いします、星尾さんもそうなるようにとりあえずお経をあげて頂けないでしょうか。僕には霊とか解らなくて」

 だからそれはこっちも解りません、とも言いにくくなり、姿勢を正して僧侶らしい態度を作る。とりあえずお経、という言葉に不安を覚えた静川は、なるべく優しい声でやんわりと説得を試みた。

「ええと、お経はそういうものではないんですよ。こういうことに関しては応急処置にすら」

「不勉強ですみません、でも静川さんなら助けてくれるって藤盛先輩が言ってくれたんです。こちらは僕から用意できるお布施です。どうぞよろしくお願いします」

 篤伸は取り出した白い封筒を滑らせるように静川の前へ置き、深く頭を下げた。静川も思わず反射的に合掌しながら必死に考える。

 本来ならば寺の宗旨について話し、幽霊などの存在は否定してやるべきだ。しかし今、ここで自分に求められているのはそれではない。

 生霊だか死霊だかわからないが、ただ否定するだけでは前に進めないから篤伸は自分に助けを求めている。こういう用意をしているくらい、本人にとって深刻な問題だ。

 僧侶は施しを断ってはいけないし、受け取るからには信頼に応えたい。篤伸を救う方法はまだ見えないが、今、自分にできることは読経くらいだった。

「…………お預かりいたします」

 

 洋風建築の友枝家も、仏間はれっきとした和室だった。馴染みのある線香の匂いの中、手入れされた立派な仏壇が置かれている。

 経文などの準備を済ませ、篤伸に電話や来客なら構わず応対するように言う。それでは勤めさせていただきます、と篤伸に告げて仏壇に向き直り合掌した。

 篤伸の求める効果はここにない。彼の望みは真弓子の父親の霊を遠ざけることにある。仮にこの世界が篤伸の思うような構造でも、解決すべきは真弓子に起きている現象であり、そのためにはそれぞれの心に向き合う必要がある。

 とはいえ、この時間と行いが無意味なものとは考えない。本来、静川たちにとっての読経は死者のためのものでなく、この場にいる生者のためにあるものだった。


 経文を目で追いながら読経を進めると、周辺の空気がとろりとしたものに変わり、緑色を帯びたあたたかな水の中にいるような感覚が訪れる。

 頭の中にある経文を意識し、手にしている経文を目で追い、正しく声に出す、というそれぞれの命令が統合され、読経しているという意識が点のように小さくなり、ふと見えなくなる。

 この状態が訪れて自分の位置や立場、感情のようなものから抜け出している時は、周辺で起きていることの影響をほとんど受けない。

 とはいえ感覚は極めて鋭敏になるので、周辺の小さな動きや音、振動する誰かの携帯機器や呼び鈴を鳴らそうとする来客の気配などを感じ取ることもある。

 なので友枝家の電話が鳴り響いた時も、自分の背後でびくりと体をこわばらせた篤伸が申し訳無さそうに仏間を出ていっても、静川は全く影響を受けずに読経を続ける。

 しかし今日は、そんな静川の自動機能も続かなかった。ふとした音に意識は揺らぎ、翡翠の溶けたような空間はかき消えてしまう。

「……阿逸多菩薩 乾陀訶提菩薩 常精進菩薩 與如是等 諸大菩薩」

 自分の声と重なって、どこからか気味の悪い声が聞こえたような気がした。動揺したところで読経を中断するようなことはないが、思わず同じところを二度読んでしまう。

「爾時佛告 長老舍利弗 從是西方 過十萬億佛土……」

「マユコ」

 マユコ、とかすかに聞こえてしまったような気がする。弱々しく奇妙にしゃがれた声は決して篤伸の声ではない。何より今のが篤伸の声ならばいろいろと大変だ。篤伸の頭か何かがどうかしている可能性を考えなければならなくなる。

「有世界 名曰極樂 其土有佛 號阿彌陀 今現在説法……」

「パパだよマユコ」

 自分に、何が聞こえているのかわからない。集中力を取り戻そうと、普段より力強い声を出す。

 空耳や物音でも一度日本語として聞き取ってしまうと、そうとしか聞こえなくなったりするのはよくあることだ。トラックが後退する際に流れる『バックします』が『ガッツ石松』に聞こえてしまうという話も聞く。

 余計な思考を追い出し、経文に集中する。それ以降、妙な音声は聞こえなかった。篤伸は電話に加えて宅配業者の応対が続いたせいで、読経が終わるころまで戻ってこなかった。

 

 応接間に戻ると、申し訳ありません、と済まなさそうにコーヒーを勧める篤伸に、よくあることですから、と静川は穏やかに笑って訊ねた。

「ところで先ほどの話ですが、……篤伸君は、星尾さんの声を聞いたりは、してないんですよね?」

「はい。僕には用がないんだと思います。そういう意味では悪い霊ではないのかも……」

 ため息をつく篤伸に、静川は気を取り直して言った。

「先ほども申し上げましたが、亡くなった人の精神や魂が、幽霊になって私達にちょっかいを出すようなことはありませんよ。特別な人たちにしか見えなくて、除霊しないと不幸になるなんておかしいでしょう。そもそも魂の存在を肯定するなら、汚れや埃みたいに扱うのも失礼な話です」

「それはお寺としてのお話ですよね」

「……私個人としては、亡くなった人の魂があるとしても、生きてる私達にとっては残り香のようにかすかなものだと思います。この世を去るというのは、私達生者の世界に干渉できなくなるということです」

「でも実際……」

「ですから、星尾さんが来たのなら生きて戻ってきたということですし、亡くなっているなら、それはもういないということです」

「いないはずのものがいるから、怖いんじゃないですか」

 篤伸もこの手のものは怖いのか、どこか拗ねたように言う。そうですね、と静川は安心させるようにのんびりとした声を出した。

「私も理解を超えたものに対する原始的な恐怖はあります。幽霊は存在しないと教えられて理屈で理解しようとも、人はそれを見てしまったり、聞いてしまったりする事はあるようですし」

「ここだけの話、静川さんは、霊とかどう思っているんですか」

「……ここだけの話、そんなのがいたら怖いです。見たくありませんし、見えるという人と関わるのも怖いです」

「信じてるんじゃないですか」

 篤伸が責めるような声を出す。どこか砕けてきたような空気を感じながら静川は言った。

「存在しているから怖いわけではありません。夢でも幻覚でも怖いものは怖いです。相手は人だと解っていてもお化け屋敷は怖いでしょう」

「幻覚でも霊でも、……真弓子がこのままどこかへ連れて行かれたらどうすればいいんですか。このあいだも、掃除とか料理とか、自分で出来るようにならないといけない、って家政婦さんと話してたんです。どこかへ行く準備をしているような気がして」

「それは自立しようとしているだけでは……」

「それだけなら、真弓子は僕に隠したりなんかしません。僕だって、真弓子が霊に呼ばれてるなんて思いたくないです。幻覚とかかもしれないけど、僕といる時の真弓子は普通なんです」

「普通は幻覚とか見えないものですが……」

「静川さん、どうか助けてください。父親が迎えに来るのを、ずっと真弓子は待っていて……一緒に待つと約束した僕には、責任があるんです。霊でも幻でも、いきなり真弓子の父親を否定するわけにはいかないんです」

 苦しげにコーヒーを飲み干し、篤伸は下を向いた。真弓子の苦しみや幻想を共有しようとするあまり、いろんな物を追い越してしまったような気もするが、彼女を救いたいという思いはわかる。

 静川は同調するように思いをこめて言った。

「私も未熟で至りませんが、できるだけ力になりたいと思っています。いろいろと混乱はあるようですが、君の気持はわかります」

「……わかってくれるんですか」

 不安そうに顔を上げる篤伸に、静川は肯きながら言った。

「とはいえ、すぐにすべてが解決できるわけではありませんから、焦らないでください。ところで、現実に起きている問題として、真弓子さんは今、困っている様子があるんですか」

「……いえ、本人にそういう自覚はないかもしれません」

「それと、真弓子さんの父親である星尾竹人さんは、彼女や篤伸君を困らせるような人でしたか?」

「……そんなことは、ないと思います。もうあまり覚えていません」

 慎重に篤伸が答える。悪人ではなかったのか、除霊したがる割には星尾竹人を悪く言おうとしない。生きていたとしても、今の真弓子が困っていないのなら有害な存在ではなさそうだ。

「真弓子さんの様子が明らかに異常であれば学校の人達も気付くと思うんですが、今までそういうことはありましたか?」

「少なくとも、僕の前ではありませんでしたし、学校でもないと思います。真弓子は学校で父親の話をしないので。そういう話をしていたのは、昔星尾さんと付き合いのあった人達です」

「では、もう少しだけ様子を見ていてください。私も星尾さんの話には触れないよう、真弓子さんとも近いうちにお話ししてみますので、焦らず対策を考えましょう。こういったことに詳しそうな人がいたら、聞いてみますから」

「お願いします。レベルの高いお寺の人達なら、霊を倒せるんですよね」

 そう言って篤伸は希望の灯った目を向けた。二秒ほど動きを止めた静川は、手にしていたコーヒーをとりあえず飲み干して聞く。

「どこでそんなことを聞いたんですか」

「藤盛先輩です」

 先刻からどうにも手ごわい妙な認識の違いを感じていたが、元凶を知って納得する。様々な誤解はおいおい解くことにして、静川は暗くなる前に友枝家を退出した。


 外套を羽織り、薄暗くなってゆく道を歩きながら考える。藤盛のおかげで妙な誤解があったといえ、在り方として今日の自分は褒められるべきものではなかった。必死な篤伸を思うと胸が痛い。

 解決できそうにない問題に関わり、対策もないまま依頼を受け、拒否できないとはいえしっかりお布施は受け取ってしまった。

 求められていることに対して、自分はなにひとつ役に立っていない。解決すべきは真弓子のきわめて内面的な問題のように思えるが、前を向くことを恐れながらも自分を頼ろうとした篤伸に、読経だけで終わりにするわけにはいかなかった。

 

 今までとは違う解決方法を学ぼうと駅前通りの書店に立ち寄り、役立つものはないかと本棚を眺めた。

 『顧客の求める問題解決法』や『解決のためのビジネス分析』などの見出しが並ぶビジネス雑誌の前に立つと、ダイヤモンドやらプレジデントやらを手にしたスーツ姿の男性達が少し驚いたように場所を空けた。

 頭を下げて軽く合掌し、静川はおもむろに雑誌を吟味する。

 馴染みのないビジネス用語を丸呑みしながらも、手掛かりのようなものは得られた。どうやら、顧客の情報を集めて需要を推測し、顧客の不安を解消して満足のいく対応をとり、その後も良好な関係を築くというのが肝要であるらしい。

 篤伸や真弓子の状況をよく知り、二人が納得する結果に向けた適切な対応を考え、彼らの憂いを取り除き、良好な関係を築くことで『葬式でお経をあげる人』から『良い人生を歩むための教えを説く僧侶』となるかもしれない。それは寺の存続のためにも重要だ。

 睨んでいたビジネス雑誌から顔を上げる。少し離れたファッション雑誌のコーナーにいる黒いコートの男と、なんとなく目が合ったような気がした。サングラスをかけているので確かなことはわからないが、眉の形で不思議そうな表情をしているのがわかる。静川は一応男に軽く会釈すると雑誌を手にして会計へ向かった。


 自宅へ戻り、篤伸から預かった封筒を住職である父親に渡す。詳しい事情は話せないが、お布施は僧侶の報酬ではないので自分の懐に入れるような真似はできない。

 袈裟を外して居間で寛いでいた父親は、封筒の中身と名前に驚いた。

「どうしてお前が友枝さんの?」

「いえ、篤伸君のほうからです。少し個人的にお話をした際にお預かりしました」

「個人的って、なんの話があってお前に?」

 なぜかビジネス雑誌を手にしている息子を見て、混乱気味に父親が追及する。説明できずにいると、テレビを見ていた和服姿の祖母が宥めるように引き離した。

「まあまあ、この子に個人的な用事なんて一つでしょ、追及するこたないわよ」

 ね、と祖母に強引に廊下へ出され、落ち着かないまま自分の部屋へ戻る。とりあえず正座してビジネス雑誌を開き、カスタマーサービスの向上やら結果を出すためのメソッドやらを読み進めた。

 しばらくすると祖母である静川園しずかわそのが二人分の湯呑みを持ってきて、なぜか目を輝かせながら聞いてきた。

「どうだったの? 縁談っぽい話だったんでしょ、フランス人形みたいな真弓子ちゃんと」

「……どうしてそういうことになっているんですか」

「違うの? 前に友枝さんと話したとき、お願いしておいたんだけど。真弓子ちゃんももうすぐ十八になるし」

 またか、と静川が顔を顰めてつるりとした頭に手を添えた。園はこの頃、年頃の娘がいる家には必ずこんな風に声をかけている。

「十八歳未満の高校生にまで縁談を打診しないでください。お勤めに支障が出ますから」

「何言ってんの、あんたに支障がでるようなお勤めなんてないでしょ。だいたい、真弓子ちゃんくらい箱入りでないと、もう誰も引っ掛かってくれないわよ。そもそもあんたに用事なんて、他にないじゃない」

「ありますよ。今回だって若輩ながらも真弓子さんに悪影響を与えない、人畜無害な僧侶だと判断されての指名ですから」

 静川が力強く言い聞かせると、園はつまらなさそうにため息をついた。

「うちの宗派はハナっから妻帯オッケーなのに、あんたはどこの戒律を大事に守ってそんななのかしらね」

 剃髪だってしなくていいのに、と髪のない静川の頭を見る。住職である父親も同じく髪は無いが、剃らなくてももう生えてこないという事情があるので、住職は息子のヘアスタイルについては何も言わない。

「よその戒律を守っているわけではありません。禁止されていないということにとらわれていないだけです。禁じられていなくても、むさぼることが許されているわけではありませんから」

「だからって、彼女作らなくていいとか、ヘアスタイル気にしなくていいってことじゃないでしょ? 草食系はもう廃れてるわよ」

「それ年輩の女性によく言われます」

 僧職だけに草食系なのよね、という冗談に慣れてしまった。これを言われるたび、僧侶らしくあることで積極性の無さを正当化しているような気分になる。

 バレンタインも近いのにねえ、と園がため息まじりに言った。

「それで、縁談でも合コンでもないなら、あんたは友枝さんの所へ何しに行ってきたのよ」

「そうでした。あのう、秘密なので詳しく話せないんですが、若い女性の不安定な精神状態や携帯電話について詳しい方などご存知ありませんか」

「自分の携帯ならアタシだって詳しいし、昔は若かったわよ。……篤伸君と真弓子ちゃんの話?」

 なんで秘密なのよ、と責めるように園が睨んだ。言えないから秘密なんです、とビジネス雑誌に目を逸らす。園は低い声で言った。

「差し障りの無い程度に教えなさいよ。なんなの携帯電話って」

「……説明しにくいんですけど、真弓子さん本人か、真弓子さんの携帯電話がおかしいせいで混乱しているというか……何かにとりつかれて見えるみたいで、心配するあまり篤伸君の精神状態が不安定で、とにかく真弓子さんを非常に心配しているようです」

 真弓子の父親である星尾竹人に触れないよう説明する。絶対に秘密ですよ、と念を押すと、言ってることがわかんないから話しようがないわよ、と園が冷たい目をした。

「ただ、篤伸君が真弓子ちゃんを心配するのは仕方ないのよ。篤伸君も早くにお母さんを亡くしてるし、たったひとりのお姉ちゃんみたいなものでしょ、真弓子ちゃんは」

「そういう感じでもなさそうですけど」

 篤伸の様子を思い出す。姉を心配する弟というより、娘の素行を心配する父親のような、この先真弓子に恋人ができたりしたらどうなってしまうのか興味深い関係のように思えた。

「それより、個人的な悩み相談ならそんな恰好で行くこともなかったんじゃないの。篤伸君だってお布施要求されてるような気になるじゃない」

「最近洋服を買ってないので仕方ありません。それに篤伸君から読経を求められたのでこの恰好でいいんです」

 そう言って静川はお茶を飲み、園は開いてあるビジネス雑誌を見ながら尋ねる。

「篤伸君の悩みと真弓子ちゃんの携帯電話と、あんたの読経とその本は何か関係あるの?」

「一応あります。……この本で言うところのクライアントの望むソリューションは、真弓子さんに対する外部からのアプローチ及びモーションの遮断なんです。ただ、篤伸君は相手が死者である可能性を考慮して僧侶のコアコンピタンスを生かしたエンパワーメントを考えていたんですよね」

「あんた自分でわかって言ってないでしょ」

 雑誌を見ながら棒読みする静川を園は胡散臭そうに見た。静川はそのまま考え込む。

 依頼者である篤伸は、友枝家の管理下にある真弓子に星尾氏の霊的なものが非公式な形で接触している可能性を危惧していた。その懸念は真弓子への悪影響、及び真弓子自体の損失と予測される。

 そして篤伸が求めているのは星尾氏を遠ざけることによる真弓子の安全確保と友枝家の秩序回復。星尾氏が生者だろうが死者であろうが、現時点での真弓子に対する接触を篤伸は公正なものとは認めていない。これは今後の課題になるだろう。

「篤伸君は、真弓子さんの安全だけではなく、友枝家のエスタブリッシュメントの回復も望んでいます。そのためにもエビデンスとして携帯電話の異常や真弓子さんの症状の確認が重要なんですが……」

「ああそう」

「しかし霊……ではなくターゲットとはインタラクティブな関係の構築が不可能なうえに、こちらのメソッドが有効とも思えず、お念仏を個々が意識することによる精神衛生の向上を思い、私は読経することしかできなかったんです」

 ふう、と勝手に一人で落ち込みはじめた静川に、園は慰めるような声で言った。

「言ってることは全然わかんないけど、僧侶が読経して悪いことはないわよ。いいじゃない、どうせあんた他に何もできないんだし」

「……そうですね」

 何事にも役立っている実感のない静川が部屋の隅に目をやった。用意しておいた重々しくもきらびやかな袈裟を見る。二日後には静川も補助として参加する法要が控えていた。



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