小鬼と呼ばれた男の子8
彼は次の日も、また次の日も、外に出たいと言った。
僕も周りの人に言って、彼と一緒に外に出た。
行く先はいつも林。彼はいつもそこで目を閉じていた。
僕はいつも、草の上に座って本を読んで……。いつもそんな感じ。
彼は、少しずつだけど、僕にだけは心を開いてくれていた。
「……なぁ」
「……ん?」
彼は僕の読んでいた本を取り上げた。
「あ、僕の本」
「あんた、名前あんの?」
彼は僕を見下ろして言った。驚いたよ。彼が聞いてくるなんて、一生ないと思ってた。
「僕?僕は君の名前を知りたいなぁ」
「あんたが教えてくれたら、言ってやる」
「はいはい。僕の名前は、御門巽。『タツミ』って呼んで」
「みかど?」
「そう。何?変?」
「あ、いや」
「そう?じゃ、君の名前を教えてよ」
「……小鬼」
「コオニ?」
「……皆、俺をそう呼んだ」
「皆って?」
「……旅団の皆や敵の兵士も」
「ふーん、本当の名前は?」
「あんた、聞かないのか?なんでこんな名前が付いたのか」
「うん、聞かない。君が話したくなるまで聞かないし、君はここでは小鬼じゃないよ」
「……」
気持ちいい風が吹いた。春らしく、涼しい風だったよ。
「……矢城」
「……やしろ?」
「……矢城悠也」
「ゆうやか。いい名前だね」
僕は彼に笑って見せた。彼は、微笑みすらしなかった。
何で笑わないんだろう?面白くないと笑わないのか?って思った。
でも、理由はそうじゃなかった。
このことは、後で綴ることにするよ。