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彼は少年兵(仮)  作者: 村川未幸
1章目 起
6/21

小鬼と呼ばれた男の子6

朝、彼は目が覚めた。僕はちょうど部屋を離れ、朝ごはんを持ってきたところだった。


「おはよう」

「……」


返事はない。いつも通りだった。


「朝ごはん、持ってきたよ」


僕は彼の前にご飯を置いた。


「……なんで」

「ん?」

「なんでほっといてくれないんだよ」


悲しそうな目で彼は僕を見た。


僕はこう言ったよ。『僕は心配性だから』って。


「本当、奇跡だよ。3階から飛び降りて足を挫くだけで済んだんだ。君が生きているのも、奇跡なんだろうね」


彼は何も言わない。ご飯にも手をつけなかった。


僕はご飯を下げた。そして、反頭先生に相談した。


「先生、彼、禁断症状が出てるみたいですが」

「あぁ、話は聞いている。だがどうすることもできん。このまま部屋で、退薬症状に耐えてもらうしかない」

「食事もあまり取りません」

「うーん、無理してやる必要はないだろう。少し痩せているが、まだ大丈夫だろう。しかし、食べるように促すことは続けてくれ」

「わかりました」


僕は先生と話を終えて彼の部屋へいった。


彼は部屋の窓から外を見ていた。


この施設は、とある田舎にある。隣は林があり、少し歩くと木の実などの山の幸がある。反対側にはただの一本道。その周りは畑や田んぼがあるだけ。民家はほとんどない。その一本道を2kmほど行くと、数年前に戦場になった市街地だ。そこはまだ復興されておらず、焼け野原となっていた。


彼の部屋から見える景色は、林の木々ばかり。たまに、その木に鳥が止まったりしている。


「外に、出たい?」

「……」

「見てるだけでいいの?」

「……うん」

「……そっ」


僕は彼の包帯を取り替えた。頭と腕と脚と。


「だいぶよくなったね。もうすぐ自由に動けるよ」


彼の右目を、大きくガーゼで覆い、紙テープで固定した。


「はい、おしまい。もう横になっていいよ」


取り替えた包帯とガーゼ、ゴミを持って僕は立ち上がった。


「あんた」

「ん?なんだい?」

「……タバコ……持ってる?」

「よく僕がタバコを持ってるって分かったね⁈」

「あんたの胸ポケット。手に…匂い」

「アハハ、見えた?」

「……1本……くれよ」

「ダメだ。タバコは20はたちから。君、いくつ?」

「……20」

「嘘はいけないよ。まだヒゲも生えてないじゃないか。」

「……14」

「ほらね、だからダメ」


彼は僕の胸ポケットを見つめた。僕は無視して部屋を出た。

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