小鬼と呼ばれた男の子4
次の日、朝ごはんを彼の部屋に持って行った。
昨日暴れたから、彼はベッドに固定されていた。身動きの取れない彼は、僕を睨みつけた。
「おはよう」
僕は彼のベッドの横に座って、おかゆをスプーンですくって彼の口元にやった。彼は口を開けようとしなかった。
「お腹、すいたでしょ?食べなきゃ傷も治らないよ」
スプーンを差し出すけど、彼は口を開かなかった。
朝、昼、晩、食べなかった。次の日も、また次の日も、全く口をつけなかった。
彼を保護して5日目。いつものように僕は、彼の部屋へいって、ベッドの横に座った。そして、いつものおかゆをスプーンですくって彼の口元にやった。
いつもは顔を背けてるのに、今日は背けることはなく、ずっと僕を見ていた。
「食べようよ。元気出ないよ?」
彼の目の下には、クマができていた。
「……毎日、眠れてる?」
問いかけるけど、彼は口を開かない。
その時、彼のお腹が鳴った。彼は赤面した。僕は笑っちゃった。
「ハハハ……我慢は良くないよ。ほら」
スプーンを差し出した。
でも彼は、僕が笑ったことに対して怒った。言葉はださないものの、顔で分かったよ。
「あ……ごめん。でも、君を心配してのことだよ」
僕は持っている器を置いて、彼を締め付けているベルトを、上半身の部分だけを外し、彼を起こした。そして彼におかゆの入った器を渡した。
彼は器を、おそるおそる受け取った。
「大丈夫、何も入ってない。冷めないうちに食べなさい」
彼は器を見つめた。スプーンを取っておかゆを少しすくい、口元に近づけた。そして、おそるおそる口に入れた。
美味しいと分かったんだろう、そのあとは一気に口に入れたよ。
僕は嬉しかった。少し心を開いてくれたようだった。
食事をした後、彼はすぐに横になった。そして彼は天井をみつめた。
あの虚ろな目……その瞳はおかしかった。
瞳孔が開ききっていた。
「君、薬か何かやってたんだよね?」
「……」
彼は答えなかった。
よく見ると、手が少し震えていた。目の下のクマと、瞳、食事は元から少なかったかわからないけど、毎日少なくとも1回は暴れるし……。
「もしかして、麻薬?それとも、ガン……パウダーかい?」
すると彼が口を開いた。その声は、か細かった。
「……どっちも」
「どっちも?」
彼はそれ以上口を開かなかった。