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彼は少年兵(仮)  作者: 村川未幸
1章目 起
4/21

小鬼と呼ばれた男の子4

次の日、朝ごはんを彼の部屋に持って行った。


昨日暴れたから、彼はベッドに固定されていた。身動きの取れない彼は、僕を睨みつけた。


「おはよう」


僕は彼のベッドの横に座って、おかゆをスプーンですくって彼の口元にやった。彼は口を開けようとしなかった。


「お腹、すいたでしょ?食べなきゃ傷も治らないよ」


スプーンを差し出すけど、彼は口を開かなかった。


朝、昼、晩、食べなかった。次の日も、また次の日も、全く口をつけなかった。




彼を保護して5日目。いつものように僕は、彼の部屋へいって、ベッドの横に座った。そして、いつものおかゆをスプーンですくって彼の口元にやった。


いつもは顔を背けてるのに、今日は背けることはなく、ずっと僕を見ていた。


「食べようよ。元気出ないよ?」


彼の目の下には、クマができていた。


「……毎日、眠れてる?」


問いかけるけど、彼は口を開かない。


その時、彼のお腹が鳴った。彼は赤面した。僕は笑っちゃった。


「ハハハ……我慢は良くないよ。ほら」


スプーンを差し出した。


でも彼は、僕が笑ったことに対して怒った。言葉はださないものの、顔で分かったよ。


「あ……ごめん。でも、君を心配してのことだよ」


僕は持っている器を置いて、彼を締め付けているベルトを、上半身の部分だけを外し、彼を起こした。そして彼におかゆの入った器を渡した。


彼は器を、おそるおそる受け取った。


「大丈夫、何も入ってない。冷めないうちに食べなさい」


彼は器を見つめた。スプーンを取っておかゆを少しすくい、口元に近づけた。そして、おそるおそる口に入れた。


美味しいと分かったんだろう、そのあとは一気に口に入れたよ。


僕は嬉しかった。少し心を開いてくれたようだった。


食事をした後、彼はすぐに横になった。そして彼は天井をみつめた。


あの虚ろな目……その瞳はおかしかった。


瞳孔が開ききっていた。


「君、薬か何かやってたんだよね?」

「……」


彼は答えなかった。


よく見ると、手が少し震えていた。目の下のクマと、瞳、食事は元から少なかったかわからないけど、毎日少なくとも1回は暴れるし……。


「もしかして、麻薬?それとも、ガン……パウダーかい?」


すると彼が口を開いた。その声は、か細かった。


「……どっちも」

「どっちも?」


彼はそれ以上口を開かなかった。

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