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心の隙

本作は『優しいだけの俺は捨てられた。』の裏側を描いた、沙里奈視点の物語です。


今回は、彼女が少しずつ違和感に気づき始める回になります。


前話からの流れでお楽しみください。

そして、数年の月日が経った。


「……はぁ」


ため息が、自然とこぼれる。


ついに。


あの二人が――結婚した。


タケシと、りえこ。


お似合いすぎて、笑えるくらいだった。


……ほんと、笑えないけど。



私は今、リョウマと付き合っている。


タケシとりえこが結婚したから?


タケシの結婚を知ったあの日。


私は、思っていたよりもずっと弱っていた。


空いたままの心に、

何かを埋めるように。


気づけば、隣にいたのが――リョウマだった。


……うん、今考えても意味が分からない。


(いやほんと、なんでそうなるの私)


リョウマは、会社で順調に出世して、

気づけば主任になっていた。


……そんなに仕事できるタイプだったっけ。


世渡りは上手いけど。



「なぁ沙里奈、俺たち恋人同士だろ?」


また、その話。


「なんでキスの一つもさせてくれないんだ?」


……まただ。


「リョウマ、ごめんなさい。私、ちょっと怖くて……」


嘘じゃない。


でも、本当でもない。


キスなんて――


本当に好きな人としか、したくない。


こんな形で付き合うのも、やっぱりおかしい。


私は、リョウマの目を見て言った。


「……リョウマ。私たち、別れよう?」


一瞬。


時間が止まったみたいに、空気が固まる。


「……は?」


リョウマの目が、ゆっくり見開かれる。


「そんなの……認めるわけないだろ」


その声は低くて。


少しだけ、怖かった。


(いや、ちょっとじゃない。普通に怖いんだけど)



タケシ。


どうして私じゃダメだったの?


こんなに好きなのに。



数ヶ月後。


私たちの関係は、完全に冷え切っていた。


……いや、違う。


私だけが、冷めていた。


リョウマは、別れる気なんてまるでない。


このまま続けても、

何もいいことなんてないのに。


「……どうすればいいのよ」


ぽつりと呟く。


別れる方法。


ちゃんと終わらせる方法。


そればかり考えていた。


そんな時だった。


リョウマからの着信、、、


(はぁ〜、着信拒否するのは流石にまずいわよね?)


「はい、もしもし...」


「沙里奈、タケシが1年間の単身赴任が決まったんだよ」

ちょっと待ってよ、新婚さんなのよ?


「ちょっと、リョウマ貴方とめられなかったの?」

私は、リョウマを責めるように問い詰める。


「仕方ないだろもう決まった事だから」


なんなのもう。違和感しかないわ...


――タケシが、単身赴任する。


その話を聞いた瞬間。


心がざわついた...






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


少しずつですが、沙里奈の見ている世界に“違和感”が混じり始めました。


この先、彼女が何を見て、どう動くのか――


引き続き見守っていただけると嬉しいです。

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