心の隙
本作は『優しいだけの俺は捨てられた。』の裏側を描いた、沙里奈視点の物語です。
今回は、彼女が少しずつ違和感に気づき始める回になります。
前話からの流れでお楽しみください。
そして、数年の月日が経った。
「……はぁ」
ため息が、自然とこぼれる。
ついに。
あの二人が――結婚した。
タケシと、りえこ。
お似合いすぎて、笑えるくらいだった。
……ほんと、笑えないけど。
◇
私は今、リョウマと付き合っている。
タケシとりえこが結婚したから?
タケシの結婚を知ったあの日。
私は、思っていたよりもずっと弱っていた。
空いたままの心に、
何かを埋めるように。
気づけば、隣にいたのが――リョウマだった。
……うん、今考えても意味が分からない。
(いやほんと、なんでそうなるの私)
リョウマは、会社で順調に出世して、
気づけば主任になっていた。
……そんなに仕事できるタイプだったっけ。
世渡りは上手いけど。
◇
「なぁ沙里奈、俺たち恋人同士だろ?」
また、その話。
「なんでキスの一つもさせてくれないんだ?」
……まただ。
「リョウマ、ごめんなさい。私、ちょっと怖くて……」
嘘じゃない。
でも、本当でもない。
キスなんて――
本当に好きな人としか、したくない。
こんな形で付き合うのも、やっぱりおかしい。
私は、リョウマの目を見て言った。
「……リョウマ。私たち、別れよう?」
一瞬。
時間が止まったみたいに、空気が固まる。
「……は?」
リョウマの目が、ゆっくり見開かれる。
「そんなの……認めるわけないだろ」
その声は低くて。
少しだけ、怖かった。
(いや、ちょっとじゃない。普通に怖いんだけど)
◇
タケシ。
どうして私じゃダメだったの?
こんなに好きなのに。
◇
数ヶ月後。
私たちの関係は、完全に冷え切っていた。
……いや、違う。
私だけが、冷めていた。
リョウマは、別れる気なんてまるでない。
このまま続けても、
何もいいことなんてないのに。
「……どうすればいいのよ」
ぽつりと呟く。
別れる方法。
ちゃんと終わらせる方法。
そればかり考えていた。
そんな時だった。
リョウマからの着信、、、
(はぁ〜、着信拒否するのは流石にまずいわよね?)
「はい、もしもし...」
「沙里奈、タケシが1年間の単身赴任が決まったんだよ」
ちょっと待ってよ、新婚さんなのよ?
「ちょっと、リョウマ貴方とめられなかったの?」
私は、リョウマを責めるように問い詰める。
「仕方ないだろもう決まった事だから」
なんなのもう。違和感しかないわ...
――タケシが、単身赴任する。
その話を聞いた瞬間。
心がざわついた...
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
少しずつですが、沙里奈の見ている世界に“違和感”が混じり始めました。
この先、彼女が何を見て、どう動くのか――
引き続き見守っていただけると嬉しいです。




