沙里奈の独白
本作は『優しいだけの俺は捨てられた。』の裏側を描いた、沙里奈視点の物語です。
前作をお読みいただいた方は、「あの時、彼女は何を思っていたのか」を楽しんでいただければ嬉しいです。
本作単体でも読めますが、前作とあわせて読むことで、より深く楽しめる構成になっています。
私の名は沙里奈。
幼い頃から、タケシが大好きだ。
優しくて、いつも笑っていて、
何かあるたびに、当たり前みたいに私の頭を撫でてくる。
……あれ、ずるいと思うのよね。
そんなことされたら、
好きにならない方が無理でしょ?
だから私は、
タケシと結ばれるものだと、ずっと思っていた。
――疑いもしなかった。
◇
私とタケシは、同じ大学に進学することになった。
「タケシと同じ大学行くために、死に物狂いで勉強したんだからね!」
ちょっとドヤ顔で言ってみる。
「よく頑張ったな、沙里奈。ご褒美あげよう」
ぽん、と頭に手が乗る。
……きた。
「ちょ、ちょっと!恥ずかしいからやめて!」
反射的に手を払ってしまう。
あぁ、もう!
(ほんとは、もっとしてほしいくせに……!)
素直になれない自分に、毎回ちょっとだけ凹む。
◇
大学に入ってから、
りえことリョウマと仲良くなった。
りえこは、優しくて、可愛くて、清楚。
……うん、完璧すぎてちょっと腹立つ。
リョウマはイケメンで、明るくて、距離感近いタイプ。
正直、ちょっと軽い。
でも、いい奴ではある。
そんな4人で、
よく遊ぶようになった。
楽しかった。
……ほんとに。
でも。
時間が経つほどに、
分かってしまった。
りえこが、タケシを見ている目。
あれは――
同じだ。
私と、同じ。
「……うそでしょ」
思わず、小さく呟いていた。
◇
私は焦った。
私だって、アプローチしてたつもりだった。
一緒にいる時間だって、誰より長かったはずなのに。
でもタケシは――
私を、“妹みたいなもの”として見ていたのかもしれない。
……それに気づいた時、
ちょっとだけ、笑えた。
(あーあ、そりゃ勝てないわ)
◇
四回生になる頃には、
二人は、もう恋人同士だった。
「どうしてこうなったのよ……」
誰にも聞こえないように呟く。
◇
「なあ、沙里奈」
リョウマが隣に座る。
「あの二人、いい感じだよな。俺たちも応援してやろうぜ」
「……応援?」
何を言っているの、この男は。
「え、ええ……そうね」
(なに頷いてんのよ、私のバカ!!)
内心で全力ツッコミを入れる。
◇
ちなみに私は、
大学でそれなりにモテた。
というか、めちゃくちゃ告白された。
でも。
「ごめんなさい。誰かと付き合うつもりないから」
全部断った。
……タケシじゃないなら、意味ないし。
「キツイなー沙里奈。でも、俺はそんなお前が好きだぜ」
リョウマが、軽く笑いながら言う。
……ほんと、この人は。
「……ありがと。でも無理」
即答。
(優しさは持ってるのよ、私だって)
◇
あぁ、神様。
どうしてこんなにうまくいかないの?
……ねえ、タケシ。
私は、ずっとここにいたのに。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
本作は『優しいだけの俺は捨てられた。』の裏側として、沙里奈の視点から描いてみました。
前作では見えなかった彼女の想いや葛藤、少しでも伝わっていれば嬉しいです。
まだ物語は続きますので、沙里奈がどんな選択をしていくのか、見守っていただけると幸いです。




