6.誘導
「セルヴィア嬢、どうか私の妃になっていただけませんか?」
一瞬クリストファー王太子殿下の言っている意味が理解できなかった。
時が止まったかのようだ。
家族みんなで驚きを隠せない。
クリストファー王太子殿下は近くで見ると更に美しいと現実逃避をしてしまったが、すぐに我に帰った。
生まれて初めて告白を受けて、どう返事をすればいいか分からない。
「私はセルヴィア嬢が好きなのです。セルヴィア嬢も私の事を好きになってくれますか?」
セルヴィア嬢は聡明とはいえまだ、6歳、好きの意味も分からずに、家族と同じような好きの意味で
「私もクリストファー王太子殿下が好きです。」
と答えてしまった。
クリストファー王太子殿下はとても嬉しそうに微笑み
「私はセルヴィア嬢とこのまま会えなくなってしまうのは、どうしても嫌なのです。私たちが結婚すれば、将来はずっと一緒にいることができます。私はセルヴィア嬢と一緒にいたいのです。妃教育を受けていただく為に教師や侍女は派遣させていただきますが、婚約しても今まで通りご家族でセルシア国で過ごせますし、セルシア国の学園へ通っていただけます。婚約者であれば学園の長期休暇に定期的に私たちが会うのも許されるでしょう。セルヴィア嬢も私と一緒にいたいと思ってくださいますか?」
私も、クリストファー殿下に会えなくなってしまうのは嫌だな。。
クリストファー王太子殿下と一緒にいるのはとても楽しいし…
「私もクリストファー王太子殿下と一緒にいたいです。」
「それでは婚約を受けてくださいますか?」
「婚約を謹んでお受けいたします。」
しかし、セルヴィアには恋愛が何なのか、結婚、婚約が何なのか、まだよく分かっていなかった。
ダルヴァール公爵、公爵夫人は衝撃が大きくて固まってしまったが、流石に大事な娘の婚約、すぐに決めるのは本人が後から後悔してしまうのではと焦った。
クリストファー王太子殿下との婚約は世界一の良縁であるが、娘の事が一番大切なのである。
「クリストファー王太子殿下、恐れながら申し上げます。まだ娘は6歳と幼く、結婚、婚約などについて、しっかりと理解をしておりません。領地、ギルド運営、令嬢教育など忙しさを言い訳に、結婚などについての教育をしなかった私の責任ではありますが、娘はまだ6歳なのです。それにまだ出会って8日間です。そして、クリストファー王太子殿下も失礼ながら8歳、いずれ後悔する日が来るやもしれません。」
「両陛下へは私から婚約の申し込みをすると報告をしたところ、2人とも喜んでくれました。エンドラ王国はセルヴィア嬢を歓迎いたしますし、必ず幸せにすると誓います。どうか、婚約を了承していただくことはできませんでしょうか?」
「申し訳ございませんが、この場ですぐにお返事をするのは」
セルヴィアの言葉が公爵の言葉を遮った。
「お父様、私クリストファー殿下とお会いできなくなるのは嫌です。私もクリストファー殿下といたいです。」
「しかし、まだセルヴィアは結婚がどういうものか分かっていないから、もう少し大きくなってから考えればいいんだよ。」
セルヴィアを諭す公爵。
流石に、世界に名だたる公爵を相手に婚約を強引に進めると、国際問題になりかねない。
ダルヴァール公爵は、世界一の国であるエンドラ王国も簡単には力でねじ伏せられない強大な力を持っているのだ。
「ダルヴァール公爵、私はエンドラ王国の名にかけて、セルヴィア嬢を幸せにすると誓います。幼い子供のいうことなどと言わずに、婚約を許していただけませんでしょうか?」
クリストファー殿下は必死に食い下がった。
8歳と6歳の婚約は、高位貴族では珍しいものではない。
これだけ娘を大切に思ってくれる、これ程の人物は現れないのではないか。
娘も一緒にいたいと望んでいる。
ダルヴァール公爵は
「娘が婚約を破棄したいと望んだのなら、すぐに破棄できる条件ならば、婚約を認めましょう。」
エンドラ王国相手に喧嘩ともとれない発言をしてクリストファー殿下の出方を伺うと、クリストファー殿下はとても嬉しそうな顔になり
「ありがとうございます。必ずや、セルヴィア嬢を大切にし、幸せにしてみせます。2週間後に婚約披露を行いたいのですが…」
気が変わらないうちにと急ぐように、婚約の手筈を整えてしまったのだ。
必ずセルヴィアの心を手に入れようとクリストファー殿下は心に誓った。
ダルヴァール公爵はすぐに従兄弟であるセルシア国王へ婚約する旨の書簡を送った。




