30.ファーストキスと初恋
クリス様の留学生活があっという間に終わった。
1年間ずっと一緒にいたのに、離れるのが寂しい。
春休み、クリス様が帰国する前に最後の庶民デートをした。
1年間で庶民デートだけではなく、貴族としてデートをしたり、馬に乗ったり、たくさんの時を一緒に過ごした。
デートの最後は私のお気に入りの場所で、クリス様と2人きり。
クリス様も別れを惜しんで抱きしめてくれる。
こんなに寂しいのは初めてだ。
「1年間だけだと分かっていたけど、セルヴィと離れるのが辛いな。ずっと抱きしめていたい。エンドラ王国に帰りたくないよ。」
「クリス様。私もです。私もクリス様と離れたくありません。」
「そんな可愛いこと言ってると、本気で帰りたく無くなる。」
「クリス様、…私クリス様とキスをしたいです。」
気づいたら声に出していた。
クリス様は一年前のように驚いた顔をした後に、とびっきりの笑顔になった。
「僕もずっとセルヴィとキスをしたかった。」
クリス様の美しい顔が近づいてきて、私たちはファーストキスをした。
一瞬触れただけの優しいキス。
私はいつの間にかクリス様に恋をしていたんだ。
1年間ずっと一緒にいたのに、離れ離れになる時にようやく自分の気持ちに気づくなんて。
「私、クリス様の事が好きです。婚約者としてクリス様が好きです。」
またクリス様に抱きしめられて、時間の許す限り2人で抱きしめ合っていた。
「ありがとう。僕もずっとセルヴィの事が婚約者として好きだよ。こんな幸せなことは初めてだ。」
「私もこんな幸せなことは初めてです。」
「僕の恋人になってくれる?」
「もちろんです。これからは婚約者だけでなく、恋人としてよろしくお願いします。」
「もしかして自分に都合のいい夢を見ているんじゃないかと疑ってしまうくらい幸せだよ。」
両想いってこんなに幸せなことなんだと初めて知った。




