24.告白(リチャード王太子殿下視点)
セルヴィア嬢の事が気になったのは、姉と弟がセルヴィア嬢と仲良くなってからだった。
最近、弟と一緒に姉のお茶会に参加するようになったセルヴィア嬢に興味が湧いたのだ。
僕もだけど、弟がお茶会に参加したことなんて無いのに、弟が惚れ込んでいる令嬢はどのような令嬢なのだろう。
弟に聞いてもはぐらかされて教えてくれない。
だから、姉のお茶会に飛び込みで参加してみたんだ。
お茶会に行くと、そこには天使がいた。
天使のような少女、完璧な所作、優しくて、話をすると楽しい。
こんなに誰かと話して楽しいのは初めてだ。
弟のことなんて言えない、僕もあっという間に恋に落ちた。
初恋だ。
父上から、セルヴィア嬢が望めばクリストファー王太子と婚約破棄ができると聞いた時は、嬉しかった。
でも、僕も弟と同じだ。
セルヴィア嬢が兄のように慕ってくれている今の状況が壊れるのが怖いんだ。
婚約者、しかも相手がエンドラ王国の王太子のいる令嬢を口説こうものなら、政治的にもどうなってしまうか分からない。
セルヴィア嬢と仲良くはなれたが、それは兄のような存在として。
そんな関係が続いていた時に、クリストファー王太子が我が国に留学してきた。
恐ろしいくらいの美貌と、絶対王者の風格。
同じ10歳とは思えない。
もともとセルシア王国に住んでいたのではと思うくらいの、完璧な言葉と所作。
僕も優秀と皆から言われて生きてきたのに、敵わないと初めて感じた。
彼がセルヴィア嬢の婚約者。
しかも、そんな彼が留学までして本気でセルヴィア嬢を手に入れようとしている。
敗北感を感じている時に、セルヴィア嬢と弟のダンスを見た。
セルヴィア嬢が弟と微笑んだ後に、驚いているところでダンスが終わった。
このような場で動揺を表に出さないであろう彼女を、動揺させるようなこと…告白をしたのだとすぐに気付いた。
彼女は弟を友人としか見ておらず、僕の事を兄のようにしか見ていない。
そんな彼女に今この場で告白した弟に一番驚いた。
僕は戦ってもいないのに負けを認めるのか。
弟は戦っている。
王族は絶対に欲しい物は、絶対に手に入れる。
弟の勇気を見て、僕の気持ちも固まった。
諦めない。
すぐにセルヴィア嬢のところへ向かい、跪いてダンスに誘った。
セルヴィア嬢は弟の告白に驚きすぎたのか、笑顔も少しいつもより固いが、喜んでと一緒に踊ってくれた。
みんなの視線が集まる。
たくさんの令嬢と踊っているのに、ダンスでこんなにドキドキしたのは初めてだ。
でも、僕には今この時にセルヴィア嬢へ想いを告げる決心はできていた。
弟の告白で頭がいっぱいなセルヴィア嬢に、僕の告白で頭がいっぱいになってもらおう。
「セルヴィア嬢、さっきのダンスでイーサンと何を話していたの?」
「えっ」
「なんだか凄く驚いているようだったから気になって。もしかして、告白でもされた?」
驚きすぎて言葉も出ないようだった。
「やっぱりそうなんだ。驚いてるセルヴィア嬢も可愛いね。僕もセルヴィア嬢が好きって言ったらもっと驚かせてしまう?」
「リチャード王太子殿下、ご冗談を…」
「冗談なんかでこんなこと言わないよ。本気なんだ。本気で君に恋をしている。君が欲しいんだ。」
「…私はクリストファー王太子殿下の婚約者です。クリストファー王太子殿下をお慕いしています。」
「でも、クリストファー王太子殿下に恋はしていないよね。」
またセルヴィア嬢は驚いて返事に詰まってしまった。
「…困ります。」
「ごめんね、困らせて。でも、僕のことを思って困ってくれるのすら、嬉しいと思ってしまうんだ。どうしようもないよね。」
セルヴィア嬢は微笑み返してくれずに、困ったような顔をしていた。
「婚約者がいる令嬢にこのような事をするべきではありません。」
「分かっていても諦めきれないんだ。セルヴィア嬢。僕の事を兄としてでは無く、1人の男として見て欲しい。初めてなんだ、どうしても手に入れたいと思ったのも、このような気持ちになるのも。」
周りに聞こえないのをいい事に、必死に口説いた。
今この機会を逃したら、口説くことなんてできないだろう。
でも、セルヴィア嬢は戸惑うばかりで、クリストファー王太子殿下の時のようにドキドキした様子は見せてくれなかった。
焦ってしまう。
君にこんなにも恋焦がれているんだ。
ダンスの時間はあっという間に終わってしまった。




