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7歳編・第71話:村の平穏と影 ― 魔力と政治、そして動き出す陰謀

リオンが「八歳になるまでの猶予」を勝ち取った日から、三日が過ぎた。


村はゆっくりと平穏を取り戻していた。

人々は普段どおり畑を耕し、家畜の世話をし、子どもたちは走り回る。


しかし――リオンだけは知っていた。

胸の奥の“光”が、時おりかすかにざわめいていることを。



朝。


家の裏の丘で、リオンは魔力の呼吸を整えていた。

風が草を揺らし、鳥の声が響く。


(この三日間……暴走の兆候はない。

 でも、光の脈動は前より“深く”なってる……)


胸に手を当てた瞬間。


「おにーちゃん! おさかな、捕まえにいこうよ!」


妹リリィが満面の笑みで駆けてきた。


リオンは苦笑した。


「リリィ、いきなり大声出すなって……びっくりするだろ」


「だってお兄ちゃん、最近ずっと難しい顔してるんだもん。

 リリィ、笑わせにきたの!」


「……そっか。ありがとう」


リオンは光のざわめきがすっと静まるのを感じた。


(リリィ……すごいな。

 ぼくの魔力よりずっと、強い力を持ってる気がする)


家族の温かさに救われながら、リオンは村の生活へ戻っていった。



しかしその頃――

王都では、すでに激しい動きが始まっていた。


◆ 王国会議室


白金騎士団、蒼天の塔、聖輝会。

三勢力の上層部が王城の円卓を囲んでいた。


冒頭、王国側の議長が言った。


「――では、本題に入ろう。

 “神性魔力を持つ少年”についてだ」


空気が一変した。


まず口火を切ったのは、聖輝会の最高司祭デゼル。


「リオン・レインフォードは、神の器である可能性がある。

 これ以上、俗世に置いておくのは危険だ。

 早急に教会で保護すべきだ」


白金騎士団の総団長バルターが即座に反論する。


「保護という名の監禁だろう。

 あの少年は自分の意思で猶予を求めた。

 国としては、その意思を尊重すべきではないのか?」


「甘い!」

デゼルの声は鋭かった。


「神性魔力は放置すれば暴走の危険がある。

 品行方正な少年だからこそ、早く正しい導きを与えねばならぬ」


(※本人に選択の余地を与える気はまったくない)


次に、蒼天の塔の主導者である大賢者ミルドが口を開いた。


「……君たちは、冷静な議論ができているのかね?」


その声音は柔らかかったが、目だけは鋭く光っていた。


「神性魔力――

 それが本当に“神の力”なら、我々魔導師の研究体系が根本から崩れる。

 これは宗教や軍事ではなく、学術の問題だ。

 少年を最優先で“研究対象”として確保すべきだ」


バルターが低く唸る。


「ミルド……貴様、少年を実験材料にする気か」


「素材を見るのは研究者として当然だろう?」


(※良く言えば純粋な探求心、悪く言えば倫理観ゼロ)


三者三様の意見がぶつかりあう。


議長は頭を抱えた。


「……少年はまだ七歳だぞ。

 まずは彼の一年の猶予を認めるのが先決だ」


するとデゼルが静かに言った。


「猶予など無意味だ。

 “八歳の儀”までは、神性が覚醒しやすい時期。

 むしろリスクは高まる」


蒼天の塔も続く。


「一年後に成長した神性魔力の観察ができる……

 研究価値はむしろ高まるだろう」


二つの勢力が、まったく別の理由で“一年後”に執着していた。


白金騎士団だけが、リオンの意思を尊重しようとしている。


(……三つ巴の思惑、最悪の構図になってる)


議長は本気で胃が痛くなっていた。



その日の深夜。


王都の裏通りを、黒いローブの集団が歩いていた。


聖輝会の内部組織――

光導派こうどうは”。


彼らの代表が低声で言った。


「デゼル様は遠回しなお言い方だが……

 我々はわかっている。

 神性を持つ者を野放しにするなど、ありえない」


「では……村へ?」

部下が囁く。


代表は静かに頷いた。


「動くなと言われても、動く。

 それが“信徒の義務”だ。

 ――少年を、確保する」


それは「保護」という名の誘拐であった。



一方その頃、蒼天の塔にも別の影があった。


大賢者ミルドの側近、

冷徹な魔導師フェルネスが報告を受けていた。


「“光導派”が動いたとの情報が」


フェルネスは小さく笑った。


「ならば我々も動かねばなるまい。

 少年は貴重な研究対象……

 あの狂信者どもに奪われるのは不愉快だ」


蒼天の塔は、

教会の動きを牽制するためにも“独自に”動くつもりだった。



さらに遅れて。


白金騎士団の団長バルターも密かに連絡を受けた。


「団長、教会と塔が裏で動いているようです」


バルターは拳を握った。


「……やはりか。

 あの少年の意思を踏みにじるような真似は許さん」


白金騎士団もまた、

リオンを守るために動き出した。


すべての影が――

小さな村へ向かっていた。



そして村。


リオンは、夜の窓から月を見上げていた。


胸の光が、静かに脈動する。


(……なんか嫌な感じがする)


胸の奥の光は、ただの魔力ではない。

危険を前にすると必ずざわめく。


リオンは布団を抜けだし、家の外へ出た。


冷たい風。

暗闇の向こう、村の入り口。


――ざっ……


誰かが、道を歩いている。


フードを深くかぶった、複数の影。


(誰……?)


リオンの背中を、嫌な汗がつたう。


胸の光が一瞬で警告に変わった。


(来た……!)


リオンは振り向き、家に向かって叫んだ。


「お父さん! お母さん!!

 “なにか”来る!!」


こうして――

三つの勢力の影が、村で交錯し始めた。


少年をめぐる、最初の“暗闘”が幕を開ける。

『影の衝突 ― 村の夜、三勢力の激突』


深夜の村に忍び寄る教会の影。

彼らの動きを察知した蒼天の塔と白金騎士団も、

同時に村へ侵入していた。


三勢力が“リオン確保”を狙って動き、

村は一瞬で戦場へ。

そして――

リオンの胸の光は、再び激しく脈動する。

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