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7歳編・第68話:王都の会議 ― リオンを巡る三つの思惑

王都アールヴェント。

その中心にそびえる白壁の巨大建造物――王城“セレスティア宮”。


今朝、王城の最上階にある“光華の会議室”に、

王都の三大勢力が呼び出されていた。


国王直属の騎士団“白金騎士団”。

魔法学府“蒼天の塔”。

そして教会本部“聖輝会”。


三つの勢力の代表が、同じ円卓に座るなど、

年に一度あるかどうかの異例の事態だった。


議題はただ一つ。


「神性魔力を持つ少年、リオン・レインフォードについて」


静まり返った空間に、国王の補佐官が報告書を置く。


「この資料は、北西の辺境村で観測された魔力暴走の記録だ。

 教会が一次調査を行い、魔力の種類を“神性魔力”と断定している」


ざわ……と空気が揺れる。


神性魔力。

伝説の中にしか存在しないはずの力。


教会の啓示官――ヘルムートが咳払いをし、言った。


「事実だ。この百年、神性魔力の観測は一度もなかったが……

 今回の現象は、疑いようがない」


白金騎士団団長ライナルトが腕を組む。


「……その少年は、どの程度の脅威になる?」


教会の司祭が答えた。


「暴走の規模は……半径数十メートル。

 しかし、空間が歪曲した形跡があり、その中心には魔素の欠損が見られました。

 本来、存在し得ぬ現象です」


「で、その少年をどう扱うつもりだ?」


ライナルトの質問に、会議室の空気が固まる。


――保護か。

――隔離か。

――排除か。


意見は大きく割れる。

全員が、子どもの安全より“王国の安全”を重んじているのは明らかだった。


その時、魔法学府代表の青年アークが口を開く。


「排除案は愚かだ。

 神性魔力の研究は、世界の魔法体系を百年分進める可能性がある。

 僕はあの子を“被験――」


「待て」


ライナルトが鋭い目で遮った。


「その子どもは国民だ。

 実験材料のように扱うつもりか?」


アークは肩をすくめる。


「扱い方を間違えれば、国が吹き飛ぶかもしれないよ?

 でも――知識が足りなくて暴走すれば、もっと酷いことになる」


会議は荒れ始める。


教会は“保護”を主張。

魔法学府は“観測と研究”。

騎士団は“リスク管理(=隔離に近い)”。


三つの思惑がぶつかり合う。


国王の補佐官は、ついに口を閉ざした。


(誰一人として、リオンの意思を考えていない……)



その頃、王都から遠く離れた辺境の村では。


リオンは家の裏庭でせっせと土を盛りあげていた。


「リオンおにいちゃん、これ何つくってるの?」


「んーっとね……新しい遊び場!

 魔法でちょっとだけ形を整えて……」


ぴかっ、と光る。


土がふわりと浮き、自然に滑らかな坂やトンネルの形を作り始めた。


「すごーい! じぶんで動いたー!」


「うん、ちょっと便利な魔法だよ。

 このくらいなら、村のみんなも喜ぶと思うし」


のほほんとした光景だ。


しかし裏では――

王都がリオンを巡って揺れている。


リオン自身は、自分の体の奥から絶え間なくあふれる“光”に

少しだけ違和感を感じ始めていた。


(……なんだろ。最近、魔力が息をしてるみたい)


「ねぇおにいちゃん、これリリィもやってみたい!」


「ん、お手伝いする?」


「うん!」


リリィが魔力を少し流すと、土がくねっと変な方向に曲がった。


「わぁ!? 変なトンネルになった!」


「ははっ、面白い形になったね」


兄妹は楽しそうに笑い合った。


その真上――静かな空の遠くを、王都からの速馬が走っていた。



会議室に戻る。


意見はまとまらず、ついに国王代理の補佐官が結論を出す。


「――ではこうしよう。


 白金騎士団による“護衛名目の監視”。

 魔法学府から一名の“研究観測者”。

 教会から一名の“保護司祭”。


 三者による合同の“小規模調査隊”を派遣する」


全員が沈黙する。


「つまり、異常があればすぐに封鎖し、

 もし少年が危険であれば……最悪の判断も許可する」


ライナルトは苦い顔をした。


「……その判断、子ども一人に背負わせるのか」


アークは目を輝かせていた。


「行ってみないと分からないよ。

 “世界の奇跡”かもしれないし、

 “世界のバグ”かもしれない」


ヘルムートは重く頷く。


「神の意思を探る必要がある」


三者三様の思惑は、互いに交わらないまま――


“合同調査隊”の派遣が決定した。


世界が動き出す。


その目的はただ一つ。


――リオン・レインフォードという少年の真実に触れること。



会議が終わった廊下。


アークは早歩きで外へ向かおうとしていた。


「アーク君」


後ろから声をかけたのは、教会のヘルムートだ。


「君は危険を理解していないな」


「分かってますよ。でも――危険だからこそ知りたいんです」


アークの瞳は輝いていた。


「彼を見れば世界が変わる。

 僕は……その瞬間を見たい」


ヘルムートはため息をついた。


「若いやつらは恐れを知らん……

 その好奇心が国を滅ぼさんことを祈るよ」


アークは軽く笑う。


「じゃ、行ってきます。

 歴史が動く瞬間を、見逃すなんてできませんから」


彼は大きく手を振って去った。


老啓示官はその背を見送りながら呟く。


「……世界はもう、元には戻れんだろうな」



同じ頃、村の裏庭。


「おにいちゃん、このすべりだい、すごい!」


「でしょ! 魔法でつるつるにしたんだ」


作りかけの遊び場で、子どもたちの笑い声が響く。


リオンはふいに空を見上げた。


(……なんだろ)

(胸の光が、ざわざわしてる)


その“光”――

神性魔力は、遠くから迫ってくる“視線”を敏感に感じ取っていた。


世界の三大勢力が、すでに動き出していることを。


だがリオンはまだ気づかない。


自分が――

**「世界を変える存在」**として見られていることを。


そしてそれは、

彼の人生を揺るがす“初めての出会い”へとつながっていく。

『派遣 ― 三者合同調査隊、村へ』


白金騎士団、教会、魔法学府の三者が合同で村へ向けて出発。

それぞれが異なる目的を抱きながら、

“神性魔力を持つ少年”との接触を試みる。

リオンはその頃、村で新しい遊び場を完成させ、

みんなに自慢しようとしていた。

だが――調査隊が村に姿を見せた瞬間、

リオンの胸の光が激しく脈打ち、世界の空気が変わり始める。

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