7歳編・第56話:村に迫る“王都クロウズ”――騎士団の影
翌朝、森を出ると、リオンは小川のほとりで顔を洗い、まだ熱い魔力の余韻を感じていた。
「……昨日のは、やっぱり危なかったんだな」
レストは肩をすくめる。
「危険だったね。でも君も少しずつ慣れてきた。 今日は村に戻って、“基本操作”の復習だ」
リオンはうなずいた。
だが、森を抜けて村の方角に向かう途中、視界の端に何かが光った。
「……あれ?」
レストも視線を向けた。
森の縁、村の入口に近い場所に、黒い外套をまとった数名の騎士が立っていた。
その背には、王都クロウズの紋章。
魔力を操ることも容易に想像できる、精鋭の雰囲気を漂わせていた。
「……騎士団だね」レストの声は低かった。
「王都……!?」
リオンは驚きのあまり、後ろに一歩下がる。
「どうして村に……?」
レストは指先で彼らを示す。
「異能児の魔力反応。 君の魔力がここに存在することを感知したんだ」
リオンの心臓が高鳴る。
(……俺、捕まったらどうなるんだ……? いや、捕まったら絶対、危険になる……!)
レストはリオンを見下ろす。
「落ち着け。 今からやるのは“情報収集”。 戦うのはまだ先だ」
しかし、リオンには不安が募る。
騎士団の中で、一人、鋭い目を光らせる騎士がいた。
その視線が、まるで“魔力の灯台”に吸い込まれるかのように、リオンに刺さる。
「……あの人、俺を見てる……?」
レストは軽くうなずいた。
「ええ。 あの人物は特別な訓練を受けた“魔力感知の達人”だ。 近づけば一瞬で位置を特定される」
リオンの背筋に冷たいものが走った。
「逃げる?」
レストは首を振る。
「今はまだ無理。 ここで変に動けば、村全体が危険になる。 君は僕の後ろに隠れていなさい」
リオンは深くうなずく。
しかしその目は、恐怖と戦意で燃えていた。
■ 騎士団の接近
騎士たちは森の中を慎重に進んできた。
一歩一歩が静かで、無駄がない。
黒い外套が影のように揺れ、目の前の草木まで緊張感を帯びる。
「魔力反応は……確かにここだ」
リーダー格の騎士がつぶやいた。
その声は冷たく、感情をほとんど含まない。
「子どもか……」
仲間の一人が小声で言った。
「異能児は危険だ。 捕獲、または制御対象として確保する」
リオンの心がざわつく。
(制御対象……。 捕まったら、絶対に危ない……!)
レストはそっとリオンの肩に手を置く。
「君は見ているだけでいい。 逃げようとしないこと」
リオンは目を閉じ、深呼吸する。
■ 初めての魔力隠蔽
レストは地面に手を置き、静かに呟く。
「よし……魔力隠蔽。 君も一緒にやってみる?」
リオンはうなずく。
「はい」
レストはリオンの両肩を軽く押さえる。
「魔力は存在するだけで反応する。 だけど“存在感”を消すことはできる。 力の流れを“閉じ込める”イメージだ」
リオンは深く息を吸い、胸の魔力に集中する。
(止める……止める……誰にも見せない……)
体の中で熱く渦巻く魔力を、自分の意志で押し込み、閉じ込める。
最初は暴れた魔力が、少しずつ静まり、光が淡く沈む。
レストは目を閉じ、確認する。
「……悪くない。 これで、騎士たちは君を感知できないはず」
リオンは小さく息を吐く。
「本当ですか……?」
「本当だ。 でも注意して。 少しでも流れが外に出れば、すぐ感知される」
■ 騎士団の通過
黒い影たちは、村の外縁を通過する。
リーダーが慎重に森を調べるも、リオンの魔力は完全に隠されていた。
「……反応なしか」
「どうやら、子どもだけの生活圏には魔力はいないようだ」
騎士たちは無言で去っていく。
森に残された静寂の中で、リオンは深く息をついた。
「……ふぅ……」
レストはリオンの頭を軽く叩く。
「よくやったね。 君はまだ7歳だというのに、魔力をここまで制御できるなんて」
リオンは頬を赤らめる。
「ありがとうございます……レストさん」
レストは少し遠くを見つめる。
「でも油断はできない。 王都はまだこちらを見ている。 次に来るときは、もっと本気でくるだろう」
リオンは拳を握る。
(俺……負けられない。 家族も、村も、レストさんも……守るんだ!)
森の奥、
風に揺れる葉の音だけが、二人の決意を静かに包み込む。
『リオンの初めての創造魔法 ― 村を守るための試練』
王都の騎士団が去った後、
リオンは初めて自らの創造魔法を戦闘目的で使用することに挑む。
レストの指導のもと、
魔力の制御と創造魔法の応用を同時に学ぶ試練が始まる。
村の安全を守るため、
リオンは魔力を“道具”として初めて使いこなす――。




