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7歳編・第49話:選択の時 ― 村に残るか、王都へ行くか

レストが王都行きを提案した翌日。

村には静けさが戻ったはずだった。


だがリオンの胸の中だけは、昨日からずっとざわついていた。


(王都に行く……? 本当に、それが俺の未来に必要なのか……?)


朝。

家の外から手を振る声がした。


「おにいちゃーん! はやく!」


リリィが家の前で待っていた。

その笑顔を見るだけで、不安が一瞬溶ける。


「リリィ、今日も畑に行く?」

「うん! おてつだいするの!」


(この毎日が、すごく大事だ……)


リオンは妹の手を取り、畑へ向かった。


だが、そんな穏やかな日常の裏で――

すでに“別の視線”が動いていた。


■ 村の外れでの気配


昼前。

リオンは畑からの帰り道、奇妙な気配を感じた。


(……まただ。昨日からずっと…… 誰かがこっちを見ている)


レストとは違う。

もっと荒々しい魔力。


「リリィ、先に家に戻ってて」

「え? おにいちゃんは?」

「ちょっとだけ確かめたいことがある」


リリィは首を傾げつつも、走って家へ向かった。

リオンは村外れの小さな森へ足を踏み入れる。


木々の間を抜け、人気のない場所に出た瞬間――

空気が一変した。


「やっと見つけたぜ。坊主」


木の影から現れたのは、黒いマントを羽織り、鋭い目をした男だった。


(この魔力……冒険者じゃない。 もっと……危険な匂いがする)


男はニヤリと笑う。


「昨日の魔獣騒ぎ。 “あれ”を吹っ飛ばしたのはお前だろ?」


リオンは身構えた。


「誰ですか」

「おっと、そんな怖い顔すんなって。

 俺は“ギルド外郭警備部隊”のサリム。

 簡単に言うと――

 お前の“力”を確かめに来た」


(ギルドの別部隊……? レストと同じ組織だけど……雰囲気がまったく違う)


サリムは腕を組んでリオンを見下ろす。


「監査官のレストはよ、ああ見えて“甘い”。 お前の力の危険性も分かってねぇ。 だから俺が直接見ることにした」


(まずい……この人は本当に“試す”つもりだ)


サリムの足元に黒い影が集まり、瞬時に小型の魔物――影狼が現れる。


「こいつを倒してみろ。 本気でな。 できなきゃ王都なんざ行く資格ねぇ」


影狼が牙を剥いた。

リオンは息を飲む。


(ここで戦えば……また力を見せることになる。 でも……逃げられる相手じゃない)


創造核が淡く震え、補助AIが警告を出す。


――【注意:戦闘不可避】

――【創造魔力の出力制限を推奨】


(くそ……!)


影狼が飛びかかってきた。


■ 出力“制限”の戦い


リオンは地面を蹴り、瞬時に距離を詰める。

指先に魔力を集中し、ぎりぎりまで“力を抑える”。


バチッ――!


青白い火花が散り、影狼の身体が弾かれた。

サリムは驚いたように目を細めた。


「へぇ……やるじゃねぇか。 だが、本気はそんなもんじゃねぇよな?」


(試されている……!)


影狼が三体に増え、四方から襲いかかる。

リオンは息を整え、低くつぶやいた。


「……【衝撃波インパクト】」


バシュッ!


完全魔法ではなく、ごく小さな圧縮衝撃を指先から放つ。

三体の影狼が一瞬で吹き飛び、霧のように消えた。

サリムは口笛を吹く。


「すげぇな。 お前、本当に7歳か?」


リオンは歯を食いしばる。


(これ以上は……見せられない)


だが、サリムは楽しそうに笑いながら一歩近づく。


「いいねぇ。 なら――もう一段階いくぞ」


サリムが両手を広げると、地面から巨大な影狼が立ち上がった。

普通の影狼の三倍、大人の男を丸呑みにできるサイズ。


(……っ!)


補助AIが叫ぶ。


――【通常抑制では対処困難】

――【中出力の行使を推奨】


(いや……見せたくない!)


巨大影狼が飛びかかる。

リオンは咄嗟に体をひねり、その爪を避ける。

だが土煙を上げながら、影狼がさらに加速して迫る。


(避け切れない……!)


リオンの心に、昨日のレストの声が蘇った。


――「君の力を、私たちにも理解させてほしい」


(そんなの……嫌だ!)


少年の体を光が包む。


「だめだ……ここで負けたら…… 全部持って行かれる……!」


リオンはカッと目を見開き――

ぎりぎりのラインで魔力を押し出した。


「……【衝撃壁シールド・バースト】!」


ドンッ!!


透明な衝撃の壁が一瞬で発生し、巨大影狼を真正面から叩き潰す。

地面が抉れ、木々が揺れ、砂埃が空へ舞い上がる。


「お、おお……!」


サリムが後ずさった。

影狼は霧散し、静けさだけが残った。

サリムは肩を震わせて笑った。


「ハハッ……やっぱり本物だな、お前。 レストが“特級候補”って言ってたのも納得だ」


(……レスト、やっぱり俺の情報を上に回してる)


サリムは笑みを深める。


「坊主。 お前は王都に行け。 行けば絶対に強くなれる。 ここじゃ狭すぎる」


リオンは俯きながら小さく言った。


「……行きません」

「なに?」

「俺は……家族と離れる気はありません」


サリムは呆れ、次に笑い、最後にため息をついた。


「なら、こう伝えとけ。 “王都はお前を手放すつもりはない”ってな」


そして背を向け、森の影へ消えた。


■ 家族の答え


夕方。

家に戻ると、両親が深刻な顔をしていた。


レストが再び訪れ、「明日、決断を聞きたい」と言い残したらしい。


父が静かに言った。


「リオン。 お前の決めた道を、俺たちは尊重する。 どちらを選んでも、責めはしない」


母はリオンを抱き寄せた。


「でも―― 無理に背伸びしなくていいのよ。 7歳なんだから」


リリィは泣きそうな顔で言った。


「おにいちゃん、いかないで……」


胸が締め付けられる。


(……俺の答えは、最初から決まってる)


リオンは家族一人ひとりの顔を見た。


「俺は――」


言葉を続けようとしたその瞬間。


家の外で、レストの冷たい魔力が揺れた。


まるで

「逃げられない」と告げるように。

『決断の夜 ― レストの“本当の任務”』


リオンは家族のため、村のため、自分のために決断を下す。

だがその夜、レストが動く。

彼が王都から受けている“真の任務”とは――

そしてリオンの選んだ道を、国家は許さない。

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