7歳編・第45話:森の奥の影 ― リオン、創造核の真の力を目覚めさせる
森の奥。
倒れたガルムの影が霧に溶け込む中、リオンは静かに足を進めていた。
胸の奥で、微かな光が脈打っている。
(……まだ残っている……黒い霧……)
補助AIが警告を発する。
――【未知の魔素濃度上昇を検知】
――【創造核未承認帯域の反応が強まっています】
――【危険度レベル4】
リオンは小さく息を吸った。
(危険……でも、逃げない)
森の中、黒い霧が次第に形を変えて、人のようなシルエットを浮かび上がらせる。
「……誰だ?」
リオンの声は震えていない。
胸の奥で、補助AIが微かに囁く。
――【使用者の意志が強いです。恐怖ではなく、保護欲求が反応しています】
リオンは拳を握る。
(俺が……守るんだ……!)
黒い霧の影はゆらりと近づき、森の闇の中で微かに赤い光を放った。
「……魔獣じゃない……?」
補助AIの声も変化する。
――【確認:未知生物。魔獣とは異なる存在です】
リオンの胸が高鳴る。
(俺……前世でもこんな状況に遭遇したことない……)
そして、霧が完全に形を取り、巨大な狼のような姿を現す。
しかし、その目は普通の魔獣の眼ではない。
知性を持ち、リオンをまっすぐに見据えている。
「……君は……何者?」
霧の狼は静かに吠え、その瞬間、リオンの創造核が強く反応する。
――【未承認帯域、制御不能に近い活性化】
――【魔素を吸収・変換開始】
胸の奥が熱く、光が全身を包む。
リオンは恐怖を感じるどころか、逆に力が湧く感覚を覚えた。
(……これが……俺の本当の力……?)
光が手のひらに集まり、指先から放出される。
森の木々、落ち葉、空気の粒子までが微かに揺れる。
狼の影は一瞬たじろぎ、次の瞬間、攻撃的な姿勢を取る。
「くっ……!」
リオンは咄嗟に両手を広げる。
――【創造核、補助開始】
――【暴走率低下、制御安定化】
彼の意思に従って、光は自然に形を変え、狼の攻撃を受け流すように空間に“壁”を作った。
アリシアの言葉が脳裏をよぎる。
「リオン……あなたの力は、想像以上よ」
その瞬間、リオンは悟った。
(これなら、村も、家族も、守れる……!)
創造核の光がさらに膨れ上がり、森全体の魔素を吸い込み、一瞬の閃光とともに、狼の影は宙に浮かぶ。
「……やめろ……!」
リオンの声が森に響く。
光は暴力的にではなく、あくまで制御された圧力として、狼の動きを止める。
――【位相制御成功】
――【暴走率0%】
狼は徐々に霧に戻り、静かに後退して森の奥へ消えていった。
リオンは膝をつき、呼吸を整える。
胸の奥の光も徐々に落ち着き、手のひらの暖かさが残るだけとなった。
「……やった……」
小さな声で呟く。
補助AIも静かに告げる。
――【新たな帯域の適応に成功しました】
――【これで、未承認帯域の暴走リスクは低下】
リオンはゆっくりと立ち上がる。
(……俺……制御できる……?)
しかし、同時に胸の奥に、まだ眠る可能性の残滓を感じた。
森の静寂。
しかし、倒れたガルムと同様、まだこの世界には“異変の種”が潜んでいる。
リオンは深く息をつき、村へ戻ることに決めた。
胸の奥の違和感は、まだ完全には消えていない。
でも、それは恐怖ではなく、“挑戦”の予感だった。
村に戻ったリオンを、アリシアと村人たちが迎える。
「リオン……無事だったのね!」
「……君の力……本当にすごい……」
リオンは小さく頷き、しかし胸の奥で、まだ眠る力を意識しながら、静かに決意する。
(この力……俺が、ちゃんと使いこなすんだ……!)
そして、森の奥で静かに動く影は、次なる試練を予感させていた。
『森の奥に潜む未知 ― リオン、創造核と向き合う』
森の奥で消えた黒い霧。
リオンは創造核の力を制御できたものの、
未承認帯域の存在はまだ眠ったまま。
村ではリオンの力に驚きと期待が入り混じるが、
森の奥では新たな影が静かに動き、次の戦いの序章を告げていた。




