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7歳編・第35話:創造杖の“正体” ― 王家が追い求めた遺物

三方向制御の成功――

そして杖の“反応段階”と三重魔方陣の発動。


そのすべてが気がかりで、アリシアは翌朝から文献の調査に没頭していた。

リオンは森でフェンと軽い訓練をしながら、アリシアの帰りを待っている。


(昨日の魔方陣……なんだったんだろうなぁ。あれが普通じゃないのは分かるけど……)


体内には、確かに魔力の“ライン”が刻み込まれたような感覚がある。

三方向制御も、挑戦という感覚はなく、自然とできるようになっていた。


(でも……あの杖の光り方は、絶対ただの偶然じゃないよな……)


フェンが木の上から飛び降り、リオンの肩にふわりと着地した。


「ワフ?」


「ん、まだアリシア戻ってこないね。なんか嫌な予感でもしたのかな……?」


フェンは少し耳を伏せて、森の奥をじっと見つめた。


そのとき――


「リオン!!」


アリシアの切迫した声が響いた。

リオンとフェンは反射的に振り返る。

アリシアは息を切らし、顔色を変えてこちらへ走ってきていた。


「ど、どうしたの!?」


アリシアは喉を鳴らすように息を整え、震える手で一冊の古い書物を差し出した。


「リオン……これは大変よ……

 あの杖、あなたの創造杖……

 “普通の魔導具じゃない”。

 むしろ……“国家が喉から手が出るほど欲しがる大遺物”よ……」


◆古文書に記された“創造のレガリア”


リオンはアリシアが持つ書物を見た。

革張りの外装は擦り切れ、ページは黄ばみ、端が欠けている。


「この本、王立学院の資料庫から写された古写本なの。

 記述の年代は約三百年前……

 大賢者《ルル=エストレア》が残した遺文書よ」


アリシアはページをめくり、震える指である章を指した。


《創造のレガリア(Regalia of Creation)》


リオンは息を呑む。


「……レガリア?」


「“王家が代々探し求めた六つの創造遺物”。

 そのうちの四つが行方不明になっているの。

 そして……」


アリシアはリオンの杖を示しながら言った。


「その一つが、

 “創造杖クリエイト・スタッフ”――

 別名《設計するエンジニア・ロッド》よ」


リオンは思わず吹き出しそうになった。


「エ、エンジニア……?」


(プログラマー時代の俺を刺しに来る名前だ……)


しかし笑っている状況ではない。

アリシアは真剣に続ける。


設計デザイン創造クリエイトを同時に行う、

 千年前の失われた技術。

 持ち主の魔素流路に合わせて“形を変え”、

 “技能を与える”機能を持っていると記されているの」


リオンは三重魔方陣を思い出してゾッとした。


(じゃあ昨日の反応…… 杖が……進化? 変形? それに近いことをしてた……?)


アリシアはページをさらにめくり、ある一点を見せた。

そこにはこう記されていた。


《真なる適性者は、杖に選ばれる。選ばれし者は“十二流制御”を解放する》


アリシアはリオンの肩をつかんだ。


「リオン……

 “十二方向制御”は、この杖が前提だったのよ。

 普通の魔法使いが理論上存在するだけの話じゃない。

 あなたは実際にその“器”を持ってる……」


リオンは言葉を失った。


(そんな……

 俺みたいな、ただの異世界転生者に……?

 しかも身体能力はドジで……

 どこにそんな才能が……)


アリシアは、はっきりと言った。


「あるのよ。

 だって、昨日の共鳴は“杖があなたを認めた証”。

 そして……杖が完全に目覚めれば――」


アリシアは深く息をのみ、


「リオン。あなたは“レガリアの継承者”になる」


と断言した。


◆杖の“起源”はどこか?


リオンはようやく声を絞り出した。


「でも…… どうしてそんなすごい杖が……うちの村に……?」


アリシアもその点はまだ悩んでいるようだった。


「それなのよ……

 この文献によると、レガリアの一つ《設計の杖》は、

 三百五十年前に“急に王都から姿を消した”らしいの」


「盗まれて……?」


「それも記録にはあるけど……

 肝心の“その後”が完全に抜け落ちている。

 数冊の記録が、同じ年を境に綺麗に消されているの」


「……誰かが意図的に?」


アリシアは頷いた。


「そう。

 そして村にあった杖は、“魔力封印され、ただの木杖のように見える細工”が施されていた。

 たぶん、誰かが意図的に隠したとしか思えないわ」


リオンはぞわりと背筋が震える。


(この村に……そんな事情が……? じゃあ俺は……偶然じゃなくて…… 必然的にこの杖を拾った……?)


アリシアは言葉を続ける。


「杖が選ぶのは“魔素構造が特殊な者”。

 でも七歳にして“魔王級の魔力量”を持つあなたが拾ったことで、

 封印が解かれたのかもしれないわ」


(魔力無限の俺が触っちゃったから……? うわぁ、完全にバグ利用だ……)


そしてアリシアは、さらに顔を曇らせた。


「リオン…… もし王家に知られたら、 あなたは“国家レベルで保護対象”になるわ」

「……保護って、軟禁と同じじゃ……?」


アリシアは否定しなかった。


「そう。だから絶対に言わないで。

 絶対に、誰にも。

 王家にも、ギルドにも、誰にも知られてはいけない」


リオンは唇を噛みしめ、強く頷いた。


◆その夜──杖が“囁く”


家に戻った後。

眠ろうとするリオンの耳に――


コ……コ……


微かな振動が聞こえた。

枕元に置いていた創造杖が、静かに光っていた。


(え……また……?)


手に取ると、杖の青い魔石が光りながら、まるで声を発するように、魔力の波を送ってきた。

リオンの脳裏に、また“ライン”が刻み込まれる。


(これ……四方向制御の……流れ……?)


杖はまるで、「次に進め」と言わんばかりだった。

リオンは小さくつぶやく。


「……お前、俺をどこに連れていく気なんだろうな……」


闇の中、杖の光だけが静かに明滅していた。

『四方向制御 ― 杖が望む成長速度』


創造杖が夜中に“次の流れ”を刻みこんだことで、

リオンは四方向制御に挑むことを決意する。


しかしアリシアは反対し、

二人は初めて“意見の対立”をする。


その裏で、杖はさらに深い反応を見せ始め――。

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