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7歳編・第33話:魔素の流れ ― 杖と核の“共鳴”

翌朝。

昨日の訓練の疲れを引きずりながらも、リオンは創造杖を握って森の奥の訓練場所へ向かった。


アリシアは既に待っており、いつもの淡い笑顔で迎える。


「おはよう、リオン。体の調子はどう?」

「うん、大丈夫。昨日よりは……たぶん」


フェンが横で「ワフ!」と元気よく吠えた。


リオンは苦笑する。


(フェンは元気だなぁ……)


アリシアは杖の先端を軽くつつきながら言った。


「今日はね、“魔素の流れを分ける”訓練を始めるわ」

「分ける……?」

「そう。昨日は“一本の流れ”で光球を作ったでしょ? 今日はそれを“二本”にするの」


リオンは眉をひそめる。


「一本でも暴走しかけたのに……二本って大丈夫なの?」


アリシアは微笑んで首を振った。


「大丈夫じゃないわね」

「えっ」

「だからこそ、今のうちからできるようになっておくの。 あなたの魔力量なら必須の訓練よ」

「……がんばる」


◆魔素を“二本”に分ける感覚


アリシアはリオンの手をそっと取り、杖の角度を調整した。


「魔素の流れは“水道の蛇口”を思い浮かべて。 今までは一つの蛇口から水を流していた。 今日は蛇口を“二つ”作るの」

「蛇口……」


(わかるような……わからないような……)


アリシアは続けた。


「創造核は“無限の水源”みたいなもの。 だけどあなたは蛇口が一つしかないから、いつも溢れちゃうのよ」

「つまり……蛇口を増やせば制御しやすくなる?」

「そういうこと」


イメージが掴めてきたリオンは、深呼吸して魔素の流れを二つに分けようとした。


胸の創造核から魔素が生まれ、身体を通り、腕に向かう流れが――


二つに……分かれ……


(でき……る……?)


――かけたその瞬間。


創造杖が鋭く震え、杖と核が同時に光った。


ゴオォォォッ!!


アリシアが目を見開く。


「ま、待って! 止めてリオン! 魔素が核と“共鳴”してる!!」


(共鳴!? なにそれ!?)


アリシアの叫びは間に合わなかった。


リオンの両手から、想像もできないほど巨大な魔素が奔流となってあふれだした。


◆“共鳴現象”――制御不能の暴走


空気が震え、地面の草が全部なぎ倒される。


リオンは必死に魔素を抑えようとするが、二つに分けたはずの流れが四つになり、さらに八つになって暴れ回る。


「うわぁぁぁぁっ!! とまれっ……止まってくれぇぇぇ!!」


杖先から放たれた光は、空へ向かって乱射され、森の鳥たちが一斉に飛び立つほどの衝撃。


フェンも必死に距離を取り、尻尾の毛を逆立てて吠える。

アリシアはリオンの背後に回り、両腕で包み込むようにして叫んだ。


「落ち着いて!! 魔素を抑えようとしないで!!」

「む、無理だよ! 止まらないっ!!」

「抑えるんじゃなくて……“流れを一つに戻す”の!! 分かれた蛇口を閉じて、一つだけに!」


(一本に……戻す……)


リオンは必死にイメージする。


胸から広がった八つの光の川を、一本の太い川へと集めるように――


(集まれっ……!!)


すると、暴走していた魔素が一気に収まり、杖先の光がスッと消えた。

リオンの足はがくりと崩れ、地面へ倒れ込む。

アリシアが抱き止めた。


「よく……がんばったわ……」

「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……」


アリシアは真剣な表情で言った。


「リオン。今のは“核と杖の共鳴”。 あなたの魔力が強すぎて、杖の魔素導管が反応したのよ」

「俺の魔力が……強すぎる……?」


アリシアは言いにくそうにしながらも続ける。


「本来なら、大陸でも数百年に一度の“魔王級”の魔力量よ。 七歳でこれだけ出す子は……見たことも聞いたこともない」


リオンは目を瞬いた。


(魔王級……? 俺って……そんな危ない存在なのか……?)


アリシアはリオンの頬に手を添える。


「でも、大丈夫。 危険だからこそ、あなたが“制御を覚えれば”…… 本当に多くの人を守れるようになる」


リオンは唇を噛み、涙をこらえた。


「俺……守れるようになりたい。みんなを……絶対に」

「ええ。私もサポートするわ」


◆再挑戦 ― “共鳴”を恐れずに


十分に休んだ後、アリシアは再び指導を始めた。


「さっきの暴走は、“魔素が急激に増えた時”に起きる。 ゆっくり……ゆっくり流れを分ければ、共鳴は起きないはずよ」

「……うん」


リオンは目を閉じ、さっきの恐怖を思い出さないようにゆっくり息を吐く。


魔素が体内を巡る。

一本の流れが、静かに分岐し――


二つへ。


(……いける……!)


今度は共鳴も起きない。

流れは穏やかに二分されている。


アリシアの声が震える。


「すごい……! 一度暴走を経験した後で、こんなに早く流れを安定させるなんて……!」


リオンは杖に魔力を乗せ、二方向に光球を作った。


右手の先に一つ。

左手の先に一つ。


「できた……!」


フェンが嬉しそうに跳ねた。

アリシアは胸に手を当て、心底ほっとしたように微笑んだ。


「リオン、あなたは本当に…… 恐ろしいほどの才能を持ってるわ」


リオンは照れ臭そうに頭をかいた。


「でも、まだコントロール下手だよ」


「それはこれから伸びるの。 子どもは吸収が早いわ。 あなたは特にね」


アリシアが杖に手を添えた。


「次は……“三方向”。 そして最終的には“十二方向”。 創造杖の適正者が使える、最高の制御技術よ」

「じゅ、十二!? そんなに分けるの!?」


アリシアは真剣に頷く。


「ええ。 あなたの魔力量なら、 いずれ十二方向を同時に扱えるようにならなきゃ危険よ」


リオンは大きく息を飲んだ。


(十二方向…… そんなの、できるのかな……)


創造核が、静かに脈動する。


その音はどこか、リオンを急かしているようにも感じられた。

『三方向制御 ― 杖が示す“限界”』


二方向制御を成功させたリオンは、

次の段階へと挑戦する。


しかし“三方向”になった瞬間、

創造杖は別の反応を示し、

アリシアすら知らない“隠された機能”が目覚め始める。


そして現れる、

謎の“三重構造魔方陣”――。

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