表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/147

7歳編・第30話:森の浄化 ― 創造核の力と新たな土地

黒衣の少女シエラが去った後も、森には微かな魔素の濁りが残っていた。


風の流れが不自然で、色彩すらどこか沈んで見える。

アリシアが周囲に杖を向け、魔力を探る。


「……まだ魔素が揺れてるわ。 スペクトラを倒した後の残滓が消えてない」


沙月はリオンの袖を掴んだまま、不安げに言う。


「リオン……帰ろうよ……。 おうちの方が安全だよ……」


フェンも低く鳴いて警戒を続けていた。


——そのとき。


リオンの胸の奥の“創造核”が淡く光り始めた。


(……まただ)


塔で覚醒した以来、何度か感じている脈動。

けれど今はその強さが明らかに違う。


アリシアがリオンを見る。


「リオン……あなた、何か感じてる?」

「うん……この森…… “助けてほしい”って言ってる気がする」


アリシアは目を見開いた。


「それって、創造核の……?」


リオンは頷く。


「わかんないけど…… でも、浄化できる気がするんだ」


沙月は目を潤ませながら言う。


「リオンがやるなら……わたしもいるから……」


アリシアは深く息をついた。


「……無茶はさせたくないけれど、今ここでこの異常を放置したら、村にも影響が出るかもしれないわね」


リオンは胸に手を当てた。


(できるかどうかじゃない。——やらなきゃダメなんだ)


そして、森の奥へと進み始めた。


◆森の中心へ


濁った魔素が濃く集まる方向へ歩くたび、胸の光が強く脈動した。

まるでリオンを導いているようだった。

アリシアが眉を寄せながら周囲を見回す。


「魔素の乱流……普通の人なら ここに数分いるだけで気分が悪くなるのに……リオンは平気なの?」

「むしろ……魔素が寄ってきてる感じがする」


アリシアは息を呑んだ。


「創造核…… 魔素を“引き寄せる”の?」


リオン自身も驚いていた。


(まるで、俺の中に吸い込まれてくるみたいだ……)


しばらく進むと——

突然、視界が開けた。


そこは広い空間になっていて、中心に大きな黒い“穴”のような魔素の渦が沈んでいた。

沙月が恐怖に震える。


「……これ……なに……?」


アリシアが険しい表情で杖を向ける。


「魔素障害の“核”よ…… ここから森全体に濁りが広がってる」


フェンが牙をむいて唸った。

リオンはその渦に引き寄せられるように歩き出す。


「リオン!危ないわ!」


アリシアが叫ぶが、リオンは振り返らずに言った。


「大丈夫。 ……あれ、多分……俺にしか消せない」


胸の創造核が熱を帯び始める。

光の粒子が身体の周囲に舞い、魔素の渦が反応して揺れた。


(怖い……でも……このままじゃ森が……みんなが困る)


リオンは手を前に伸ばし、そっと渦に触れた。


瞬間——


光が爆ぜた。


◆創造核の“浄化”


黒い渦が吸い込まれるようにリオンの胸に集まり始めた。

アリシアは慌てて駆け寄る。


「リオン!やめて! それ以上吸い込んだら——!」

「大丈夫…… これは、“戻ってる”だけ……」


渦の魔素はリオンに吸われているように見えたが、実際は違った。

創造核が“正しい形”へと魔素を変換し、世界へ返しているのだ。

それはシエラが言っていた言葉と一致していた。


——継承者の覚醒は、世界の魔素を揺らす。

——余波を戻すのも、継承者の役目。


胸の奥から光が溢れ、森全体に波のように広がっていく。

濁った木々の色が戻り、草花が一斉に立ち上がった。

風が吹き抜け、黒い霧は一瞬で晴れていく。


沙月が小さな声で呟いた。


「……きれい……」


アリシアも驚いたように息を飲む。


「これが……創造核の浄化能力…… 信じられない……」


リオンは少しふらつきながらも立っていた。


「……終わった……みたいだ」


フェンが嬉しそうに鳴き、リオンの頬を舐めてくる。

リオンは苦笑しながら撫でた。


「ありがとな、フェン」


そして——

浄化された中心の地面が、まるで“眠りから覚めた”かのように光を帯び始めた。

アリシアが驚愕の声を出す。


「リオン……あれ……!」


地面がゆっくりと盛り上がり、新しい“土地”が姿を現した。

そこは草花が一面に広がる小さな丘で、中央に白い石碑のようなものが生えていた。

それは古代文字が刻まれた円柱で、淡い光を放っている。


「これ……なんだろ……?」


アリシアは震える声で言う。


「多分、森の“本来の姿”よ…… 魔素に隠された土地が…… 浄化されたことで現れたの」


リオンは石碑に近づく。

すると、創造核が微かに共鳴した。

石碑に刻まれた文字が光り、リオンの目の前に薄い光のプレートが浮かぶ。


そこに表示された文字は——


『創造の守きもりち ― 継承者の資格地』


リオンは息を呑む。


(これって……塔のものと同じだ……)


アリシアは呆然と呟く。


「まるで……あなたを待っていたみたいね……」


沙月がリオンの手を握る。


「リオン……ここ、怖くないよ。なんか……あったかい感じする」


リオンは静かに頷いた。


(シエラが言ってたこと…… “世界は継承者に反応する”って…… こういう意味だったのか)


石碑の足元に、柔らかい光の種のようなものが芽生えていた。

リオンが手を伸ばすと、その種はふわりと浮かび、リオンの掌に収まった。


アリシアが驚く。


「それは……?」


光の種は優しく脈動し、リオンの創造核と共鳴していた。


『新生の種子 ― 継承者の未来の鍵』


(未来の鍵……? これも、俺が……?)


アリシアは深刻な表情になる。


「リオン…… ここからが本当の始まりなのかもしれないわ」


リオンは種を握りしめ、静かに呟いた。


「うん。 もっと強くならなきゃ。 一緒に生きていくみんなを守るために……」


陽光が差し込み、新しい丘が輝いていた。


それは——

リオンにとって“初めての継承地”だった。

『浮かぶ試練 ― 新生の種子が示すもの』


浄化の後、リオンが持ち帰った“光の種子”は、

夜になると不思議な輝きを放ち始める。

そして——

リオンにだけ見える“光の道”が浮かび上がった。


“守るために強くなれ”

その声に導かれ、リオンは新たな試練へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ