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7歳編・第29話:黒衣の少女 ― 創造の継承者とは

黒衣の少女。

小柄な体に深いフードをかぶり、その瞳だけが金色に妖しく輝いている。


リオンはその瞳を見た瞬間、胸の奥の創造核が微かに反応するのを感じた。


(……この子……ただ者じゃない)


少女はスペクトラの前に片手を伸ばし、その暴走体を静かに鎮めていく。

青白い光が霧のように散り、スペクトラは跪いたまま動かなくなった。


アリシアが息をのむ。


「魔素障害体を……一瞬で……」


沙月はリオンの腕をぎゅっと握る。


「リオン……あの子、怖い……」


フェンは低く唸り、リオンの前に立って警戒し続けていた。

少女はそんなフェンに軽く視線を向けると、逆に微笑むように声を零す。


「あなた……やっぱり“守護種”だったのね。 創造主が好む種の子だわ」


その言葉に、リオンの胸がざわついた。


(守護種……? フェンの正体を知っている……? この子、何者なんだよ)


少女はリオンへと歩み寄る。


◆「創造の継承者へ挨拶を」


少女は深くフードをかぶったまま、リオンの目の前でぴたりと立ち止まる。


「初めまして、リオン・レインフォード。

 ——いえ、“藤堂亮介”と言ったほうがいいかしら?」


リオンの体が固まった。

アリシアと沙月も絶句する。

沙月は震える声を出した。


「え……? なんで……お兄ちゃんの……前の名前……?」


アリシアも表情を強張らせた。


「あなた……どうやって……」


少女は静かに言った。


「この世界の“創造主”に関係する者ですもの。そのくらいは知っています」


創造主。

塔の最上層で聞いた言葉が胸をよぎる。

リオンは拳を握り、問いかけた。


「……あんたは……誰なんだ?」


少女はほんの少しだけフードをずらした。

金の瞳。

淡い銀髪。

透き通った白い肌。


そして——

リオンの胸の創造核と同じ脈動を放つ、

“光の粒子”。


「私は——あなたと同じ“創造核の持ち主”。この世界に選ばれた“継承者のひとり”です」


リオンの目が大きく開かれる。


「継承者……? 俺の他にも……?」


少女は小さく笑った。


「ええ。あなたが初めてではありません。

 この世界には、かつて数人の継承者がいたわ。

 でも——」


少女の声がわずかに冷たくなった。


「今、残っているのは私と……あなたくらい」


その言葉は重く、暗い意味を含んでいた。


◆継承者が消えた理由


アリシアが前へ一歩踏み出し、鋭い視線を向けた。


「……残っているのは二人だけ? 理由は?」


少女は振り向きもしない。


「“世界の敵”に殺されたのよ」


沙月が息を呑む。


「世界の……敵……?」


少女はゆっくりと頷いた。


「創造主の力を奪おうとする者たち。それを持つ継承者は常に狙われる。だから、あなたもいずれ——」


少女の視線がリオンに向く。


「“狙われる”わ。塔で覚醒してしまった時点で、避けられない」


リオンの背筋に冷たいものが走った。


(俺が……狙われる……ということは—— 沙月も、アリシアも、家族も……)


少女は静かに言葉を続けた。


「だから——あなたを確認しに来た。 敵になる前に、味方かどうかを判別するために」


アリシアが杖を強く握る。


「あなた……最初から敵の可能性もあったってこと?」


少女は首を横に振る。


「いいえ。 私は“敵”ではないわ。 むしろ——」


少女はリオンに向かって手を差し伸べた。


「あなたと協力したいの。 継承者同士として」


リオンは手を伸ばしかけ——

そして止めた。


少女は、予想通りというように静かに言う。


「警戒するのは当然よ。 でも、この世界の脅威は本物。 あなたは近いうちに理解するわ」


風が吹き、少女の黒衣が揺れた。

スペクトラが静かに少女の背後に立つ。


「この森で発生したスペクトラは、塔の残留意志と魔素の乱流が原因。あなたの覚醒が引き金となったの」


リオンの胸が痛んだ。


「俺が……原因……」


少女は優しい声になる。


「気にしなくていいわ。継承者が覚醒すれば、世界の魔素は必ず揺らぐ。それは“世界の更新”の一部だから」


アリシアは眉を寄せる。


「でも、このままじゃ村に被害が出るわ」


少女は静かに頷く。


「だから、私が“処理”しに来たの。 ——あなたのために」


少女はスペクトラの頭に手を触れた。

青い光がふわりと舞い、スペクトラは粉雪のように消えていく。

沙月が小さく震えた声を出した。


「……消えちゃった……」


少女は微笑んだ。


「迷える魔素は、正しく還るべき場所へ戻るだけ。 恐れる必要はないわ」


そして再びリオンを見る。


「これで証明になったかしら? 私はあなたの敵ではない、って」


リオンはゆっくり頷いた。


「……少なくとも、今は信じるよ」


少女の金色の瞳が少し柔らかくなった。


「ありがとう、継承者。 それだけで十分」


そして少女は踵を返す。


「また会いに来るわ。 “世界の敵”が動き出す前に」


「待って! 名前……!」


リオンが叫ぶと、少女は振り返り、フードの奥で微笑んだ。

そして——


「——シエラ。 それが、今の私の名前よ」


黒衣が風に揺れ、少女の姿は森の奥へと溶けて消えた。

リオンは小さく呟いた。


「シエラ…… 継承者の一人…… そして、味方……か」


アリシアが言う。


「“今は”味方、ね。 信じるのは危険よ」


沙月は不安そうにリオンにしがみつく。


「……また危ないこと、起きるの……?」


リオンは二人の頭を優しく撫でた。


「大丈夫。 俺が絶対に守る」


胸の奥の創造核が、静かに脈打っていた。


(世界の敵…… 継承者の力…… そしてシエラ…… これからどうなるんだろう)


不安は尽きない。

でも同時に——

リオンの心には、確かな決意が生まれていた。


「もっと強くならなきゃ……」


塔の覚醒は、まだ始まりでしかなかった。

『森の浄化 ― 創造核の力と新たな土地』


シエラの言葉を受け、

リオンは森の魔素異常を自らの力で“浄化”しようと動き始める。

そしてその過程で、新しい土地が姿を現す——。

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