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7歳編・第28話:村の異変と“見えない影”

リオンたちが塔から戻って三日。

村は以前より穏やかで、空気は澄み、森から流れる魔素は柔らかく安定していた。


しかし——その“安定”は、逆に“異変”の前触れでもあった。


◆朝の村に広がる違和感


その朝、リオンはフェンに顔を舐められて目を覚ました。


「フェン、朝か……って、舐めすぎ!」

「キュウ!」


アリシアが台所でパンを焼きながら苦笑する。


「フェン、リオンが好きすぎよね。まるで……守護獣みたい」


沙月は席につきながら元気いっぱいに言った。


「だって、リオンは“創造の核”を持ってるんだよ! そりゃフェンも大好きだよ!」


リオンは顔を赤くしながらも、どこか誇らしげだった。


(家族って……こんなに温かいんだな)


しかし、その幸せな時間は、村の外から響く叫びによって破られた。


「森の方で光が……! なんか、変なのが出たぞ!!」


ダリウスが急いで外に出る。

エルナが振り返り、真剣に言った。


「リオン、気を付けて。 あの光……ただ事じゃないわ」


リオンはうなずき、アリシアと沙月と共に村の外へ走った。

フェンも「キュウ!」と後を追う。


◆森の中で起きていた現象


村の外へ出ると、森の奥から淡い青い光が立ち上っていた。

リオンは近づくにつれ、胸の奥の創造核が微かに震えるのを感じた。


「……リオン、感じる?」

アリシアが問う。


リオンは静かに答えた。


「うん。 あれは自然の魔素じゃない…… “塔の同調反応”だ」


沙月が眉を下げる。


「同調反応って……塔の光と同じやつ?」


「そう。 俺が覚醒したことで、森の一部が“反応した”んだと思う」


アリシアは周囲を慎重に見渡した。


「ただ……この反応は安定していないわ。 暴走の気配がある」


リオンは頷き、足早に森の奥へ向かった。


◆光の正体


光の中心へ到着すると、そこには奇妙な光景が広がっていた。

地面から生えた“クリスタル状の柱”が、周囲の魔素を吸い込みながら脈動している。


しかもその柱は——

塔と同じ紋様を持っていた。


沙月は驚いて叫ぶ。


「塔の……ちっちゃい版みたい!」


アリシアは顔をしかめる。


「これ……完全に自然のものじゃないわ。塔と同じ“創造魔法式”。でも、制御が不完全」


リオンは柱に手を伸ばし、そっと触れた。


その瞬間——

胸の創造核が強く脈打つ。


「っ……!」


光が反応し、柱がまるでリオンの魔力を求めるように震えた。

フェンが警戒して鳴く。


「キュウッ!!」


アリシアが近寄りながら叫ぶ。


「リオン、離れて! いま触れたら危険よ!」


だがリオンは、柱の中に“声”のようなものを感じた。


(……助けて……? これは……誰の声?)


小さく、かすかな声。

まるで迷子の子どものような。


(塔の残留意志……? それとも、俺の力が引き寄せた……何か?)


混乱しながらも、リオンは手を離そうとした。


その瞬間——


柱が破裂した。


「リオン!!」

「リオン兄ちゃん!!」


光と風が渦を巻き、三人と一匹は後方へ吹き飛ばされる。

リオンは木に背中を打ちながらも、なんとか踏ん張った。

アリシアが駆け寄る。


「大丈夫!? 怪我は!?」

「う、うん……なんとか」


沙月は震えながらリオンの袖を掴む。


「リオン、あれ……」


柱のあった場所に、“何か”が立っていた。


人の形。

だが明らかに普通ではない。


青白い光をまとい、半透明の体。

目は虚無のように空を見つめている。


アリシアは息を呑んだ。


「……これは……“魔素障害体スペクトラ”……?」


沙月はリオンの腕にしがみつく。


「なにそれ……」


アリシアは真剣に答える。


「魔素の暴走が“生命の形”を取ったものよ。

 本来は強大な魔力の土地でしか生まれない。

 なのに、どうして……」


リオンはその存在を見つめ、胸の奥がざわつくのを感じた。


(……感じる。あいつ……“塔の残滓”の気配を持ってる)


スペクトラがこちらを向いた。


体の中心で、塔と同じ紋様が明滅する。

フェンが牙を剥いて鳴く。


「キュウゥゥ!」


アリシアが叫ぶ。


「リオン!! 来るわ!!」


スペクトラは音もなく地面を滑り、リオンに向かって突進してきた。


◆迫りくる影


リオンの手が反射的に動く。

創造核の光が掌に集まる。


「……来い!!」


光の盾が瞬時に展開され、スペクトラの突進を弾いた。


「……っ!!」


アリシアが叫ぶ。


「リオン、魔力の扱いが上手くなってる!!」


沙月は目を輝かせて叫ぶ。


「すごいよリオン!!」


だがリオンは汗をかきながら言う。


「いや……やっぱりまだ……制御が難しい……!」


スペクトラは怯むことなく、再び突撃してくる。

アリシアが杖を構える。


「危ない! 防ぐわ!!」


しかし——


その時だった。


「……まだです。 あれには“手を出してはいけません”」


柔らかな声が森に響いた。

リオンたちが振り返ると、そこには『黒衣の少女』が立っていた。


顔はフードで隠れている。

しかしその存在感は圧倒的だった。


少女は軽く手を振ると、スペクトラの動きがぴたりと止まった。

そして、なぜかスペクトラは少女の前で跪く。


アリシアが驚愕の声を漏らした。


「……なんなの、この子……?」


少女はリオンに向けて、静かに言った。


「初めまして、“創造の継承者”。 あなたの覚醒を確認しに来ました」


リオンは息を呑んだ。


「……誰……?」


少女は微笑んだ気がした。


「私は——“あなたの敵ではありません”。 少なくとも今は」


風が吹き、少女のフードが揺れる。


その下には、リオンとよく似た“金の瞳”が輝いていた。

『黒衣の少女 ― 創造の継承者とは』


謎の少女の正体。

暴走するスペクトラの理由。

そしてリオンの力が呼び寄せた“影”の目的とは……。

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