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7歳編・第19話:氷界塔・第三層 ― 影のアリシア ― “写し身の真実”

氷の広間に、アリシアと“影アリシア”の剣がぶつかり合う音が響き渡った。


キィン!!


氷の粒が散り、冷たい風が渦を巻く。

リオンは拳を握りしめた。


(アリシア……! 本当に一人で戦わせるしかないのか……!)


沙月も悔しそうに唇を噛んでいる。


「……どうして、手を出しちゃいけないの?」


リオンは目を細めた。


「たぶん……この試練は、塔が彼女に課している“心の鏡”なんだ。

 アリシアの影は、アリシアが自分で認めない限り倒せない」


沙月は小さくうなずいた。


「……アリシアさん……」


その間にも、アリシアの戦いは激しさを増していた。


◆影の刃


影アリシアが声を放つ。


『私はお前の罪。弱さを憎み、強さに縋り、誰も救えないくせに、正しくあろうとする偽善者。』


アリシアの顔が苦悶に満ちる。


「黙って……!」


氷の剣が振り下ろされる。

しかし影は軽やかに受け止める。


『お前は師を見殺しにした。違うと言える?』


アリシアの剣が止まった。

リオンの胸が軋む。


(アリシア……そんなこと……!)


アリシアは震える声を絞り出した。


「……わたしは……師匠を守れなかった…… でも……! わたしは逃げなかった……最後まで戦った……!」


影は冷たく笑った。


『戦った? 違う。

 “助けて”と言えなかっただけ。

 誰にも弱さを見せたくなかっただけ。』


アリシアの心に突き刺さる言葉。

沙月が泣きそうに叫ぶ。


「そんなの違う!! アリシアさんはずっと優しくて……誰より頑張り屋で……!」


影が沙月に目を向けた。


『他人が庇ってどうするの?

 これは彼女が認めるべき“弱さ”。

 優しいふりをしても、心は氷より冷たい。

 ――誰も、彼女の本当の顔を知らないだけ。』


沙月の体が震えた。


「……そんな言い方……!」


リオンが前に出ようとする。


「やめろ。アリシアを傷つけるのは――」


だがアリシアの声がかぶさった。


「リオン……止まって!」


振り返ったアリシアの目には涙があった。


しかし、その奥に――

炎にも似た意志が宿っていた。


「これは……わたしが乗り越えなきゃいけないことなの……!」


リオンは拳を振り上げたまま動けなくなった。


(アリシア……)


アリシアは深く息を吸った。

そして、自分の影と向き合う。


◆アリシアの告白


「……確かに、わたしは弱い。本当は、ずっと怖かった。

 師匠が死ぬのも、仲間に頼るのも、自分の居場所を失うのも……!」


影の目が細められる。


『認めるのね?』


アリシアはゆっくりとうなずいた。


「そうよ。

 わたしは強いふりをして生きてきた。誰にも弱さを見せたくなかった。

 師匠の死を……全部自分のせいにして、罪を抱えてる方が楽だった……!」


影の足元が揺らぎ始める。

アリシアは声を張り上げた。


「でも――」


氷の剣に力を込め、前に踏み込む。


「わたしは、もう一人じゃない!!」


影の瞳が揺れる。


「リオンも……沙月も……

 わたしの弱さを受け止めてくれた。だから、もう隠さない。

 わたしは――弱い!!」


その瞬間、影の体にヒビが走った。


パキ……パキ……!


リオンと沙月は息をのむ。


影アリシアは静かに言った。


『弱さを認めたのなら――

 もう私はお前を責めない』


アリシアが剣を握りしめる。


「ありがとう。

 わたしの影……

 今まで、目をそらしてごめんなさい」


影は穏やかに微笑んだ。


『これで……お前は前に進める』


そして、影は光の粒になって消えた。


アリシアの剣も霧のように消え、アリシア自身がゆっくりと膝から崩れ落ちる。


沙月が駆け寄る。


「アリシアさん!!」


リオンも隣にしゃがみこむ。


アリシアは涙をこぼしながら、二人に微笑んだ。


「……二人がいたから……乗り越えられた……本当に……ありがとう……」


リオンは無意識にアリシアの手を握った。


「当たり前だよ。アリシアは一人じゃない」


沙月も笑う。


「仲間だもん!」


アリシアはしばらく泣いていた。


その涙は、氷ではなく――

ようやく溶けた、あたたかい涙だった。


◆塔の反応


その時。


ドォン……!


塔全体が揺れた。

門の奥へ続く、白銀の道が開かれていく。


アリシアがその光を見つめ、静かにつぶやく。


「……認めてくれたのね。わたしが“心臓部”に進む資格を」


リオンは立ち上がり、その白い道を見つめた。


(塔の心臓部……そこに、俺の“創造核のルーツ”がある……?)


アリシアは涙をぬぐい、二人に向けて微笑んだ。


「行きましょう。 “塔の真実”が待っている……」


三人は歩き出した。


塔の奥深く――

まだ見ぬ光へ向かって。

『心臓部の扉 ― 創造核の鼓動』


塔の第三層奥へ。

アリシアの影を越えた先で、待ち構える“核の共鳴”。

リオンの胸に宿る創造核が、ついに正体を現し始める――。

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