表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/147

7歳編・第18話:氷界塔・ 第三層 ― “心臓部の門”とアリシアの影

第二層の霧が嘘のように晴れ、氷の広間の奥に――

“青白い光の階段”が静かに浮かんでいた。


リオン、沙月、アリシアの三人は、慎重にその階段を上がっていく。


階段は、生きているように脈打っていた。

まるで塔の心臓へ向かっていくような感覚。


(胸が……ざわつく)


リオンは自分の胸に宿った“創造核”の脈動が階段のリズムと同調していることに気づいた。


アリシアが前を歩きながら言う。


「第三層は……“心臓部への門”と呼ばれているわ。塔の本来の目的に触れる階層。昔から、誰もその奥まで進めなかったの」


沙月は少し緊張した様子で聞く。


「アリシアさんは……来たことあるの?」


アリシアは足を止めた。


そして――静かに頷いた。


「ええ。一度だけ。 ……わたしの師匠が亡くなった日。 遺言を果たすために、この第三層に来たことがある」


沙月が息をのむ。


「師匠……?」


リオンも驚いた。


「アリシアって、誰かに氷魔法を……?」


アリシアは微笑んだ。


「そう。 “塔の守護者”と呼ばれた人よ。 ……だけど、あの日、わたしは師匠を守れなかった」


その言葉は深い悲しみを帯びていた。


沙月が口を開くより早く、巨大な扉が視界に広がった。


氷で作られた門。

高さは十メートル以上。

扉には一本の線が走り、その中央に“凍った紋章”が刻まれている。


アリシアの表情が変わった。


「……変わってない」


門を見つめるその瞳は、まるで数年前に置き去りにした記憶を見ているようだった。


リオンは扉に近づき、手を伸ばそうとしたその瞬間――


「触っちゃダメ!!」


アリシアがリオンの手首を掴んだ。


「この門は“心臓部”に繋がっている。塔が試練を与える場所よ。あなたの核は……まだ不安定。触れれば、塔に飲まれる危険がある」


(塔に……飲まれる……?)


アリシアはすぐに手を離し、少し顔をそむけた。


「……ごめん。声を荒げてしまった」


リオンは微笑んだ。


「大丈夫。心配してくれたんだよね」


その時だった。


ゴォォォ……


門の紋章がゆっくりと光を帯び始めた。

アリシアが凍りつく。


「……なんで? わたし達はまだ試練を始めていないのに……!」


沙月がリオンの腕を掴む。


「リオン……胸が……光ってる……!」


リオンの胸の創造核が鼓動を強める。


ドクン……ドクン……!


門の紋章と同じ色――白銀の光。

アリシアの声が震えている。


「まさか…… リオンの核が塔の“心臓部”と共鳴して…… 門が勝手に……!」


門が開き始める。

氷が砕け、重い音が広間に響く。

アリシアが振り返った。


「二人とも……覚悟して。 この先は……わたしにとって、逃げ続けてきた場所よ」


その言葉に、リオンはアリシアの横に並んで頷いた。


「なら……一緒に行くよ。逃げ続けたなら、今度は俺が隣にいる」


沙月も二人の後ろから言う。


「もちろん、わたしも一緒」


アリシアはわずかに目を見開いたあと、小さく微笑んだ。


「……ありがとう」


三人は氷の門をくぐった。


◆第三層・“心臓部の門”内部


そこは広い空間だった。

天井は見えず、床には白い霧が流れ続けている。


中央に――


ひとりの女性の像があった。


白髪の女性。

優しい微笑みを浮かべ、冷たい氷の椅子に座る姿。


沙月がつぶやく。


「……この人……誰?」


アリシアが唇を噛みしめる。


「師匠よ。 “エルセリア=ノースグレイヴ”。 塔の守護者だった人……」


リオンは驚く。


「まさか……ここに……?」


アリシアは頷く。


「師匠は、わたしに何も残してくれなかった。

 最後の言葉すら……

『氷は全てを写す』

 それだけ」


師の像を見つめるアリシアの横顔は、深い悔恨に満ちていた。


そのとき――


像の瞳が光る。

沙月が叫ぶ。


「う、動いてる……!?」


アリシアが前に出る。


「師匠! エルセリア様! 私です! アリシアです!!」


だが――


像は微笑んだまま、静かに言葉を発した。


『試練の継承者へ…… 冷たき心よ、己の影と向き合いなさい――』


アリシアの足元から影が広がる。


そして。

アリシアと同じ姿の“黒い影”が立ち上がった。

リオンと沙月は息をのむ。


「アリシアが……二人……!」


アリシアは歯を食いしばる。


「これが……“心臓部の門の試練”…… わたしの影…… わたしが封じた“弱さ”……!」


黒いアリシアが笑う。


『お前は守れなかった。 師を失い、国を裏切り、望まれなかった氷魔法だけが残った』


アリシアの表情が歪む。


「黙りなさい……! わたしは……そんなこと……!」


影は続ける。


『そして今度は―― “異界の少年”の力に縋った。 また誰かの未来に乗っかるつもり?』


アリシアは絶句した。

リオンはアリシアの肩を掴む。


「アリシア、影の言葉は全部嘘だ!」


だがアリシアは震える。


「違う…… これはわたしの心が知ってる言葉…… 本当に……そう思ってる部分があるのよ……」


黒い影は剣を抜いた。


『弱さを認めない限り、“心臓部”への道は開かれない』


剣先がアリシアへ向く。


アリシアは震えながらも、氷の剣を握り返した。


「わたしは……逃げない。 師匠にも……自分にも……!」


沙月が叫ぶ。


「一人で戦う必要なんてないよ!!」


リオンも声を張る。


「アリシアは仲間だ。 俺たちが支える!」


だが影は笑った。


『この試練は…… “本人だけが乗り越えるもの”』


アリシアは一歩前へ出て、振り返らずに言った。


「……大丈夫。 これは、わたしの戦いだから」


そして。

アリシア対“影アリシア”の激突が始まった。

『影のアリシア――“写し身の真実”』**


アリシアの影が暴き出す“隠された罪”。

そしてリオンの創造核は、影の力に反応し始める――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ