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7歳編・第10話:土の遺跡 ― 大地の胎動 ―

◆1.湖を離れて


水の遺跡を後にし、リオンと沙月は湖畔の森を抜けて、南へ向かって歩き始めた。


深い森を踏みしめるたびに、木々のざわめきがリオンの耳に響く。


「次は……土の遺跡、だよね?」

沙月が肩の袋を直しながら尋ねる。


「うん。大地の底――『ガルドの大穴』って場所にあるらしい」

リオンは鑑定眼で地図を確認しながら言う。


前方には、茶色い煙のような霧が立ち上がる荒野。

乾いた土と岩の世界だった。


「……なんか、空気が重いね」


「この辺り、魔力の流れが少し濁ってる」

リオンは足元の石を軽く蹴る。

すると土がわずかに震えた。


大地の脈動――

「土の遺跡」は、生きている。


沙月は、やや怯えながらリオンの袖を掴んだ。

「リオン……なんかいやな感じする」


「大丈夫。俺がいるから」


その言葉に、沙月の手の力が少し抜けた。


◆2.ガルドの大穴


二人が荒野に足を踏み入れて三時間。

巨大な“穴”が視界に現れた。


大地が直径百メートル以上にわたって陥没している。

底はほとんど見えず、暗闇が口を開いているようだった。


風が底から吹き上げ、低く唸る。


「……ここ、本当に入るの?」

沙月の声が震える。


リオンは静かに頷いた。

「ここが《土の遺跡》。

 ミリュアさんが言ってた“胎動”の場所だよ」


羽根型の“水の鍵”を取り出し、魔力を流す。


大穴の縁が光り、円形の魔法陣が地に刻まれた。


――遺跡認証。

――“創造核”のアクセスを確認。


地面が震え、大穴に“螺旋階段”が形づくられる。


「相変わらず、鍵の力すごいね……」


「行こう」


リオンは先に足を踏み出し、沙月は少し躊躇してから後を追った。


◆3.大地の回廊


内部は、重く静かな空気に満ちていた。

水の遺跡とは対照的で、暗く、乾き、孤独な世界だ。


壁は硬い岩盤でできていて、

時折脈を打つように震える。


「リオン、これ……遺跡っていうより、

 なんか“大地そのもの”って感じがするね……」


「土の魔力が濃すぎる。

 ここは他の遺跡とは少し違う気がする」


歩みを進めるたびに、足元から“鼓動”のような音が響く。


ドン……ドン……

ドン……ドン……


「ねえリオン……これって、生き物の鼓動……?」


「……いや、多分“世界の心臓”みたいな場所なんだ」


道を進むと、巨大な扉が現れた。

扉には古代文字が刻まれている。


――“創造主の胎動”

――“大地は、創造核と共に目覚める”


リオンは手を伸ばし、ゆっくり扉を押した。


◆4.石の守人


扉の先は――

巨大な洞窟状の神殿だった。


中央に、巨人が座っている。


岩と鉱石が積み重なって形作られた、まさに“大地そのもの”のような存在。


リオンが近づくと、巨人の目に光が灯り、ゆっくりと立ち上がった。


「――来たか。

 創造核《β版》よ」


声が洞窟全体を震わせる。


沙月が悲鳴をあげてリオンの後ろに隠れる。

「む、無理無理無理! あれ絶対やばいやつだよ!」


リオンは落ち着いた声で聞いた。

「あなたが……土の遺跡の守人ですか?」


巨人は頷いた。


「我が名は《ゴルド》。

大地を生み、大地に帰る者。

創造主と、初めて契約した守人だ」


リオンはその言葉に目を見開く。


「創造主……?」

「契約……?」


ゴルドは重々しく一歩踏み出した。


「β版よ。お前が“生まれた理由”を知りたいか」


リオンは息を呑む。

胸の奥がざわつく。


「知りたい。でも――怖いです」


ゴルドは洞窟を震わせるように笑った。


「恐れることは悪ではない。だが、真実から逃げてはならぬ」


巨人は大地へ拳を打ちつけた。


大地が震え、

中央に“土の鍵”が浮かび上がる。


しかし、ゴルドは鍵をすぐには渡さなかった。


「鍵を得る条件は一つ。

 ――お前が“創造核の核心”を知り、それを受け入れることだ」


リオンは固く唾を飲み込む。


「核心……?」


ゴルドは低い声で告げた。


「お前は――

神々が作り上げた“世界修復用の人工生命体”だ。」


空気が止まり、洞窟が沈黙に包まれた。


沙月が震えながらリオンの腕を掴む。


リオンは小さく息を吐き、ゴルドを見上げた。


「……人工生命体。じゃあ、俺は……人じゃないってことですか?」


ゴルドはゆっくりと首を振った。


「違う。お前は“人を超える”存在だが、人として“生きられる”存在だ。」


「……よくわからない」

リオンは苦笑する。


ゴルドは続けた。


「創造主が最後に作り出したのが“α版”。

 そして――

 その力を調整し、“人として生きられる形”に作り直したのが“β版”。

 お前だ、リオン。」


リオンの胸に重い圧力がのしかかる。


(俺は……神が作った?

 世界を修復するための……道具?)


沙月がリオンの背中を軽く叩く。


「リオンは……リオンだよ。道具とか、そんなの関係ない」


リオンは沙月の言葉に救われたように微笑む。


ゴルドは満足げに頷いた。


「その答えを得たならば――

 “土の鍵”を授けよう。」


大地の光が収束し、茶色の羽根がリオンの手に落ちてくる。


――“土の鍵” 授与。


ゴルドは腕を組み、静かに言った。


「次に向かうのは――

 《風の遺跡》。世界の“空の境界”だ」


リオンは拳を握りしめた。


「俺は……俺として生きる。

 β版でも人工生命でも構わない。

 この世界で、ちゃんと“家族”を守りたい」


ゴルドは満足したように笑った。


「その意思こそ、“創造核”の証だ。」


洞窟が光に包まれ、

外への道が開かれた。


◆5.遺跡の外で


地上へ戻ると、沙月は大きく伸びをした。


「ふぅぅ……なんか、怖かったけど……

 リオンが戻ってきてよかったよ」


リオンは地平線を見つめた。


「次は、空の上か……行けるかな」


沙月は笑って拳を突き出した。


「行けるよ! だってリオンだし!」


リオンは微笑み、拳を合わせる。


――“β版”ではなく、一人の少年として。


風が二人の髪を揺らし、空の向こうから鳥の声が静かに響いた。

空の果てに浮かぶ“風の遺跡”。

待ち受ける守人は、誰よりも自由で、誰よりも孤独な少女。

そこでリオンは、自らの“生まれた意味”をさらに深く突きつけられる――。

次回――7歳:風の遺跡 ― 空の境界を越えて ―

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