表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/147

7歳編・第7話:風の遺跡 ― 記録されし“RION_SYSTEM_01” ―

森の奥に、奇妙な風の音が響いていた。

ざわざわと葉を鳴らすそれは、まるで誰かが言葉を紡いでいるような、不思議な“旋律”を持っていた。


「……この風、普通じゃないな」

リオンは足を止めた。


沙月が首をかしげる。

「音が……声みたいに聞こえる」


風は、まるで彼らを誘うかのように吹き抜けていく。

その先――

森の木々の間に、人工的な石造りの遺跡が姿を現した。


◆1.封じられた入口


それは、自然の中には明らかに不釣り合いな建造物だった。

円形の広場に、複数の柱が立ち並び、中央には巨大な石扉がそびえ立つ。

その扉には、古代語でこう刻まれていた。


【RION_SYSTEM_01 風の記録層】


「……システム?」

沙月が呆然とつぶやいた。


リオンの心臓が、どくん、と跳ねた。

“RION”。

それはこの世界での彼の名――だが同時に、前世の亮介が作った人工知能プログラムの名称でもあった。


(まさか……俺の開発してたシステムと、同じ名前?)


冷たい汗が背中を伝う。

ここが、ただの古代遺跡ではないことを、本能が告げていた。


◆2.目覚める声


石扉に手を触れると、淡い光が走った。

刻印が反応し、空気が震える。


――アクセスコード、認証完了。

――管理者識別:“藤堂亮介”。


「ッ!? なんで俺の……!」


沙月が驚愕してリオンを見る。

「藤堂……って、前の世界の……?」


リオンは唇をかみしめた。

この遺跡は、明らかに彼の前世の情報にアクセスしている。


「……入るしかない」


彼は扉に魔力を流し込み、重い音とともに石扉が開いた。

中は暗闇。だがその奥で、青いホログラムのような光がゆらめいている。


「――おかえりなさい、マスター」


澄んだ女性の声が洞窟内に響いた。

その姿が、ゆっくりと光の中に現れる。


銀色の髪、無表情な顔、そして瞳に宿る青の光。

それは、リオンがかつて自分のAIに組み込んだ人格モデルそのものだった。


「私の名は《イリス》。あなたが設計した補助思考体です」


◆3.創造主の記録


イリスの背後に、いくつもの光のパネルが浮かび上がる。

そこには、かつて亮介が開発していた“仮想空間創造アルゴリズム”の設計図が並んでいた。


「これ……俺の研究データだ」

リオンが息を呑む。


イリスが静かにうなずく。


「マスターの世界の技術は、この世界の“創造神”に転用されました。

神はあなたの記憶を“原型”として、この世界の構造を構築したのです」


「……つまり、この世界は俺のプログラムをベースにして作られたってことか」


「はい。そしてあなたは“創造核”の断片として、この世界に転生させられた」


リオンの心臓が痛む。

神のミス。

あの日、転生の瞬間に感じた“バグ”のような違和感。

それが、これで繋がった。


沙月が不安げに尋ねる。

「それって……リオンが、この世界の一部ってこと?」


イリスが答える。

「正確には、“管理者権限”の保持者。あなたが死ねば、この世界の基幹が不安定化します」


「……なんてこった」


◆4.試練のコード


イリスが一歩前に出る。


「マスター。この施設には、神が遺した試練が存在します。それを乗り越えた者に、次の“鍵”が与えられる」


「鍵?」


「創造システムを制御するための、“風の鍵”です。あなたが望むなら、試練を起動します」


リオンはしばらく沈黙した後、うなずいた。

「やるよ。……逃げたくない」


「試練開始――」


床が光り、足元に魔法陣が浮かぶ。

周囲の空気が渦を巻き、突風が吹き荒れる。

沙月の姿が霞み、視界が白く染まった。


◆5.風の試練


風の中、リオンは無数の幻影に囲まれていた。

それは過去の自分――

研究室で孤独に過ごす藤堂亮介の姿だった。


「お前は何を作った?」

「自分を神にでもしたつもりか?」

「救いたい? 結局、誰も救えなかったくせに」


幻影の言葉が、刃のように胸に突き刺さる。


(違う……俺は、ただ“誰かの役に立ちたかった”だけだ)


リオンは拳を握りしめ、叫んだ。

「確かに俺は過去を悔やんでる!

 でも今は――この世界で、みんなを守るために生きてるんだ!!」


その瞬間、風が一瞬で止まった。

幻影が崩れ去り、光が彼を包み込む。


――試練、完了。


イリスの声が再び響く。

彼の手の中には、銀色の小さな羽根が現れていた。


「それが“風の鍵”。次の施設――“炎の遺跡”への道を開くものです」


リオンは深く息をつき、静かにそれを握りしめた。


◆6.封印されし真実


外へ出ると、夕陽が森を金色に染めていた。

沙月が駆け寄る。

「リオン! 大丈夫だった?」


「うん……少し、思い出したよ」


「思い出した?」


リオンは空を見上げながらつぶやいた。

「この世界を作ったのは、神じゃない。

 ……“人間”だ」


沙月が息をのむ。

風が二人の間を抜けていった。

それはまるで、誰かが笑っているような音だった。

“風の鍵”を手にしたリオンと沙月。

次に向かうは、山脈の奥深くに眠る“炎の試練”。

だがその地で、彼らを待っていたのは――

神に創られた“もう一人の自分”だった。

次回――7歳:炎の遺跡 ― 灯るは原罪の火 ―


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ