7歳編・第1話:創造の目覚めと、運命の試練
朝の光が、リオンの頬を照らしていた。
春の匂いを含んだ風が、部屋のカーテンを優しく揺らす。
リオンはゆっくりと目を覚まし、窓の外を見た。
そこには、いつもと変わらない田舎の村の風景――
けれど、胸の奥で何かがざわついていた。
(昨日の夢……なんだったんだろう)
闇の中に光が流れ込み、声が響いていた。
それは、自分を呼ぶ誰かの声。
優しくて、懐かしくて、少し悲しそうな声。
「……リオン」
――それは、確かに自分の名前を呼んでいた。
◆1.異変の朝
「リオン、おはよう。今日は市場まで一緒に行くよ」
母・リーナが明るく声をかける。
「うん。あ、リリィは?」
「まだ寝てるの。昨日は夜更かししてたからね」
リオンは笑いながら、パンとスープの朝食を取った。
しかし、ふと手を伸ばした瞬間――
コップの中の水が、ふわりと浮いた。
「え……?」
リオンが驚いて手を引くと、水は音もなく宙で波打ち、ゆっくりとコップに戻る。
母は気づかない。
だがリオンは、確かに“見た”。
(今の……魔法、なのか? いや、意識していないのに……)
心臓が早鐘を打つ。
そして彼の頭の中で、音声のようなノイズが響いた。
【re:rion_link_synchronized】
【New core access detected】
「……っ、誰だ!?」
リオンは思わず声を上げた。
母が驚いて振り返る。
「どうしたの、リオン?」
「な、なんでもない!」
(今の声……どこかで聞いたような……)
◆2.村外れの丘にて
昼過ぎ。
リオンは一人で村外れの丘に来ていた。
草の香り。鳥のさえずり。
どこまでも穏やかな世界――
けれど、彼の中では何かが変わり始めていた。
「……この世界の“魔力”って、どうなってるんだろう」
リオンは前世の記憶を頼りに、思考を組み立てる。
エネルギー、循環、因果。
自然の法則に似た構造。
そして、空気中の粒子が光を帯びた。
青白い光が指先に集まる。
(あのときの水……やっぱり偶然じゃない)
「……もしかして、これが僕の“スキル”?」
その瞬間、再び声が響いた。
『スキル認識完了。創造因子、レベル1を確認。』
『re:rion_core、起動。』
リオンの瞳に、光が差し込む。
(……何だこれ……! 頭の中に、情報が流れ込んでくる!)
◆3.創造のスキル
視界の端に、半透明の文字が浮かんだ。
他の人間には見えない、リオンだけの“インターフェース”。
【スキル:創造(Creation)】
発動条件:想像と意志
使用制限:肉体・精神負荷大
現段階:Lv.1(物質構成 - 基礎)
補助AI:re:rion_core
「……AI?」
リオンの頭の中に、穏やかな声が響く。
『初めまして。あなたの内部構造を監理する補助システムです。
名前は――re:rion_core。あなた自身の記録から生成されました。』
「僕の……記録?」
『はい。あなたの“前世”の残滓が、再構築され、今あなたの中に統合されています。』
リオンは息を呑んだ。
“前世”という言葉。
その響きが、彼の心を震わせる。
(じゃあ……やっぱり、僕は――)
『藤堂亮介。あなたのかつての名前です。』
リオンの手が止まる。
空気が、一瞬止まったように感じた。
◆4.失われた自分との再会
「……とうどう、りょうすけ……」
リオンはつぶやいた。
その名を口にした瞬間、頭の奥で映像がよぎる。
深夜のオフィス。
パソコンの光。
缶コーヒー。
疲れた手でキーボードを叩く青年。
(……俺、だ)
記憶が蘇る。
そして、胸の奥から懐かしい声がした。
『君が今ここにいるのは、偶然じゃない。
世界が“創造者”を求めた結果なんだ。』
「創造者……僕が……?」
『そう。君の中には、“世界を再構築する権限”がある。
けれど、それを使うには覚悟が必要だ。』
リオンは拳を握りしめる。
小さな体の中に、確かな熱が宿った。
「……わかった。僕は、逃げない」
『いい返事です。では、初期テストを開始します。』
◆5.創造、初動試験
目の前の空間が淡く光る。
リオンは目を閉じ、頭の中で“イメージ”を描いた。
(小さな石……丸くて、白くて……)
手のひらの上に、光の粒が集まり、形を取る。
数秒後、そこには“白い石”が一つ、静かに転がっていた。
「……できた……!」
『成功。創造レベル1:物質構成、安定稼働を確認。』
リオンは感嘆の息を漏らす。
前世では夢にも思わなかった、現実の創造行為。
だが、その直後――頭に鋭い痛みが走った。
「う、ぐっ……!」
『警告。脳内魔力回路への過負荷を検知。
使用時間を制限してください。』
リオンは石を地面に落とし、深呼吸する。
視界が少し霞む。
「……なるほど。力には、代償があるってことか」
『あなたが“人間”である限り、そうです。』
リオンは小さく笑った。
(でも、これなら――僕にも、できることがある)
◆6.運命の予兆
その夜。
村の空に、淡い流星が走った。
人々はそれを“幸運の兆し”だと言った。
だがリオンだけは、胸の奥で“別の反応”を感じていた。
【Warning: unknown anomaly detected】
【Signal origin: Eastern Forest / coordinate 28°N-146°E】
「……異常信号?」
『はい。あなた以外の“創造波”が観測されました。』
リオンの瞳が光を宿す。
(僕以外にも……この力を持つ者が?)
月が静かに照らす夜。
その下で、少年は新たな運命に気づき始めていた。
――これは、“創造者”同士の物語の始まり。
未知の“創造波”を探るため、リオンは初めて村の外へ。
そこで彼が出会うのは、もう一人の“転生者”だった。
次回――7歳:東の森の来訪者




