表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/147

6歳編・第9話:霧の中の影

秋が深まり、朝の空気が白く曇り始めた。

リオンの村に、少しずつ異変が忍び寄っていた。


「なんだか最近、空気が重いね……」

「ぴぃ(うん。森の方から“魔素の濃い霧”が出てる)」


霧は朝だけでなく、日中にも残るようになっていた。

遠くの木々が白くかすみ、いつもの牧歌的な風景に、不気味な輪郭が混ざっていく。


「森で何か起きてるのかな」

リオンは首をかしげた。

だが大人たちは口を揃えて言う。


「まぁ季節の変わり目だろう。冬が近いからな」


そう笑う父ダリウスも、夜には小さく咳き込むようになっていた。


◆1.異変の兆し


翌朝。

リオンは村の井戸で水を汲んでいた。

すると――井戸の水面が、ぼんやりと紫色に光った。


「……え?」


【鑑定眼:発動】

【対象:井戸水】

【状態:軽度魔素汚染/原因不明】


「魔素汚染……?」


ピィが羽を震わせる。

「ぴぃ、それ、森から流れ込んでるね。魔獣の気配が混ざってる」


リオンは顔をしかめた。

(魔獣……? でも、ここから森までは1キロ以上あるのに)


霧は、風下にある村へと少しずつ侵入してきていた。

その中心には――黒い影が蠢いていた。


◆2.父の異変


「リオン、畑の手伝いを――」


声が掠れていた。

振り向くと、父ダリウスの顔が青白い。

額には汗、そして目の下にうっすらと黒い影。


「父さん!? 大丈夫!?」


「少し、頭が重いだけだ……。すぐ治るさ」

そう言って笑うが、足取りはおぼつかない。


【鑑定眼】

【対象:ダリウス・レインフォード】

【状態:魔素中毒・初期】


リオンの心臓が早鐘を打つ。


(やっぱり……! 霧が原因だ)


「ぴぃ! 魔素を浄化する方法、知らない?」

「ぴぃ……自然には抜けるけど、時間がかかる」


(そんなの待てない……!)


リオンは決意した。

「ぼくが、治す」


◆3.創造パネルによる“魔素浄化装置”


夜、リオンは風車小屋に籠った。

ランプの明かりの下、創造パネルを開く。


【設計モード起動】

【目的:魔素を吸着し、空気を浄化する】


「素材は……この前拾った風石、あと井戸の水を通す導管……」


前世の知識を思い出しながら、彼は必死に描き続けた。

“フィルター”、“循環”、“排気”。

まるで空気清浄機のような魔導装置を、脳内で再現する。


創造魔法アトモス・クリア!」


青白い光が弾け、小さな円盤状の装置が生まれた。

風石を中心に、淡い光を放つそれは、まるで鼓動しているようだった。


「……できた」


リオンはそれを父の枕元に置いた。

すぐに光が広がり、空気が澄んでいく。


「う……ぁ……」


ダリウスが苦しそうに咳をして、やがて安らかな寝息に変わった。

頬に少しずつ赤みが戻る。


「……よかった」

リオンは涙を拭い、装置の光を見つめた。


◆4.森の中の影


翌日、森の偵察に出る決意をした。

「リオン、どこへ行くつもりだ?」

「ちょっと、霧の様子を見てくる」


ダリウスは止めようとしたが、リオンの真剣な目を見て言葉を飲み込んだ。

「気をつけろよ……」


リオンはピィとともに森の入り口へ向かった。


霧は濃く、空気は重たい。

足元の草が枯れ、鳥の鳴き声がしない。


「……ぴぃ、何か感じる?」

「ぴぃ(うん。魔獣じゃない……何か、“人”の魔力)」


その瞬間――


ガサッ。


霧の中から、黒いローブの影が現れた。

その手には、不気味な杖。


「……子供?」

「あなた、誰?」


ローブの人物は笑った。

「ふふ、なるほど。ここが“消された村”か」


リオンの胸がざわつく。

(消された……? なにを言ってる?)


「この土地には、“存在を消された者”の残滓が残っている。

 我々はそれを集めて、世界の“空白”を埋める」


ピィが鋭く鳴く。

「ぴぃっ!(リオン、逃げて!)」


杖の先が光り、黒い霧が渦を巻く。

その中心から――“人の形をした影”が浮かび上がった。


◆5.影との対峙


「創造パネル起動!」

リオンの前に青い光が広がる。


【設計:風圧反転結界】

【出力:最大】


創造魔法ウィンド・バリア!」


轟音と共に風の壁が形成され、黒い霧が弾かれる。

だが影は怯まない。

霧の手を伸ばし、リオンの腕を掴もうとする。


「うわっ!」


ピィが前に飛び出す。

「ぴぃぃぃ!!(風撃波!)」


突風が炸裂し、影は霧散した。

だがその余波でリオンは転倒し、石に頭をぶつけた。


視界が揺れる。

遠くで、誰かの声が聞こえる。


『……また……“創造者”が干渉を始めたか』


『放っておけ。やがて、すべては均される』


その声は、神でも人でもなかった。

ただ、冷たく機械的な響き。


◆6.霧の消失


次に目を開けた時、朝日が差し込んでいた。

ピィが心配そうに覗き込む。


「……リオン、生きてる?」

「うん……あれ、影は?」


「ぴぃ(消えた。霧も全部、風に流された)」


リオンは上体を起こし、森を見渡した。

あの濃い霧は跡形もなく、ただ朝露の匂いが残るだけ。


(……守れた、のかな)


彼は小さく息をつき、村へ戻る。

父も母も元気を取り戻していた。

妹のリリィが笑いながら駆け寄る。


「おにいちゃーん! おかえり!」


その声に、リオンは心の底から笑顔を返した。


◆7.夜、再び創造パネルが光る


その夜。

眠りにつこうとした瞬間、リオンの創造パネルがひとりでに開いた。


【エラー:外部干渉を検知】

【削除データ:rion_core_02】


「……りおん、こあ?」


ピィが小さく鳴く。

「ぴぃ、それ……あんたの“前世のプログラム名”じゃない?」


リオンの背筋が凍る。


(まさか……前の世界で、何かが消えてる?)


霧の影――あの人物が言っていた「消された村」。

それはもしかして、前世の“消去された存在”と関係があるのか。


「……ぼくの存在を、探してる?」


風が鳴り、パネルの光が静かに消えた。


少年はまだ知らない。

その小さな村での異変が、二つの世界の歯車を再び噛み合わせたことを。

霧の一件を経て、リオンは初めて「自分を狙う何か」の存在に気づく。

それでも日々は続き、村では冬支度が始まった。

雪とともに訪れる“新しい命”――

次回、「リリィの笑顔と、冬の初雪」。

家族の温もりが、少年の創造を照らす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ