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6歳編・第1話:春風と新しい誓い

雪が溶け、村に春が訪れた。

土の匂いが強くなり、あちこちから芽吹きの緑が顔を出す。

村の子どもたちは裸足で走り回り、家々からは笑い声が聞こえた。


リオン・レインフォード、6歳。

身体は少しずつ丈夫になり、顔つきも少年らしくなっていた。

冬の間に身につけたのは、薪割りと料理の手伝い。

しかし――彼にはまだ“克服できない弱点”があった。


「リオン、また転んだの!?」

「いってぇ……あ、うん。ちょっと石につまずいただけ」


母のエルナが苦笑いしながら包帯を取り出す。

「ほんとにあなたは……もう少し足元を見なさい」


「は、はい……」

(52歳の経験があっても、身体が子供だとダメか……)


リオンは苦笑いしながら、足の擦り傷を見つめた。

彼の中では、まだ“藤堂亮介”としての思考が残っている。

だが、身体は6歳の子供。

思考と反射のズレが、毎日のように小さな事故を起こしていた。


◆1. 妹への思い


その日、家の外ではリリィが泣いていた。

小さな手で木の枝を振り回し、何かを探している。


「リリィ、どうしたの?」


「ガラガラ、なくなっちゃったの!」


リオンはハッとした。

冬の間、妹のために父が作ってくれた木のガラガラ。

リリィのお気に入りだったが、壊れやすい木製のおもちゃだ。

たぶん、どこかに落としてしまったのだろう。


リオンはしゃがみ込み、妹の頭をなでた。

「そっか。じゃあ新しいのを作ろっか」


「ほんと!?」

「うん。今度はもっと、音がきれいに鳴るやつ」


リリィの瞳が輝く。

その笑顔を見た瞬間、リオンの心が温かくなった。


(……そうだ。俺はもう、一人じゃないんだ)


前世では“家族”というものに触れられなかった。

だからこそ、今この瞬間を大事にしたかった。


◆2. “モノがない世界”の現実


だが――リオンはすぐに気づく。

この世界には、彼の知る「現代的なものづくりの道具」がない。


釘もノコギリもなく、鉄の加工は貴族や職人の仕事。

村の道具はすべて、青銅と木で作られている。


(このままじゃ、ろくなモノが作れない……)


とはいえ、あきらめるつもりはなかった。

リオンは“手段”を考える。

前世の知識を使えば、ある程度の形にはできる。


「木の中に空洞を作って、小石を入れる。

軸は細い枝で……回転させれば音が鳴る、か」


父に頼み、木材を削ってもらう。

だが、うまくいかない。

中身の小石が動かず、ただの“棒”になってしまった。


「うーん……」

「おにいちゃん、これ、ならないよ?」


「ごめん。もう一回やってみよう」


リオンはくじけない。

夕方になっても、何度も試行錯誤を繰り返す。

構造を変え、形を変え、枝を変え――。


(あぁ、まるで昔のプログラムデバッグみたいだな……)


根気よく、試行錯誤。

動かない原因を探し、何度も直す。

この作業が嫌いではなかった。


夜になり、ついに完成した。

丸い木の中に小さな種を入れたガラガラ。

リリィが振ると、カラカラと優しい音が鳴った。


「すごい! おにいちゃん、できた!」

「……よかったぁ」


彼の顔には、心からの笑みが浮かんでいた。


◆3. 小さな発明家


次の日。

村の子供たちが集まってきた。

「リリィのガラガラ、かわいい!」

「リオン、それどうやって作ったの!?」


「えっと……ちょっと、秘密」


彼は照れながら笑った。

だが、その笑顔の裏では、あることを考えていた。


(“仕組み”を伝えることが、この村を変える第一歩かもしれない)


子供たちにものづくりを教えれば、暮らしは少しずつ豊かになる。

“便利”を共有することが、人の心を温めるのだ。


その夜。

リオンは火のそばで、木片に何かを書いていた。


それは、文字ではなく“図”。

丸や線で構成された簡単な設計図――ガラガラの構造図だ。

しかし、彼が指で触れた瞬間、それは淡く光った。


「……パネル?」


空中に、見覚えのある青い画面が浮かんでいた。

それはまるで、プログラムのエディタ画面のよう。

タイトルにはこう表示されていた。


【創造魔法パネル:blueprint_mode(試作)】


リオンは息をのむ。

「これが……俺の“創造魔法”……!」


パネルには、彼の描いた設計図がそのまま反映され、そこに魔力を流すと――目の前の空気がゆらぎ、小さな木製のガラガラが再現された。


完璧な形。

音も、前より澄んでいる。


リオンは震える手でそれを握った。

「……やっぱり、これが俺の力なんだ」


ピィが光の中から現れ、ふわりとリオンの肩に乗る。

「ぴぃぃ!(リオン、これ、すごいよ!)」


リオンは微笑んだ。

「ありがとう、ピィ。でも、これはまだ“はじまり”だ」


彼は空を見上げる。

冬の名残の雲が風に流れ、春の星がちらちらと瞬いていた。


(この力で、みんなを幸せにできる。

この家族も、村の人たちも――

俺の作る“モノ”で笑顔にしたい)


その心に、かつて藤堂亮介が抱いていた“理想”が再び灯る。

それは“効率”ではなく、“ぬくもり”を生む技術だった。


彼は小さな手をぎゅっと握り、静かに呟いた。


「この世界では、俺は“創る人”として生きる」


その決意を包み込むように、春の風が村を通り抜けていった。

形を与える力、“創造魔法”。

それは便利さではなく、心をつなぐ力だった。

リオンはガラガラを作りながら、

村に“ものづくり”の灯をともしていく。

次回――「リリィの笑顔と最初の発明」。

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