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7歳編・第87話:始まりの光 ― 少年が選んだ未来

世界の中心に浮かぶ金色の光に、リオンは震える手で触れた。


ほんのり暖かい。

まるで、幼い手を包んでくれる母のように優しい。

白の神の光とは違う。

黒の影の王とも違う。


もっとずっと――静かで、弱々しくて、だけど確かに“ここに在る”力。


「これ……ぼく……?」


光は答えるように微かに揺れた。

リオンの胸の奥にあった小さな灯火が、形を持ったのだ。


白は天へと導く力。

黒は地を守る影の力。


そのどちらでもなく――

リオンの最初の、たったひとつの願いから生まれたもの。


「守りたい。

大切な人を、泣かせたくない。」


その祈りが、彼の魂に金色の光を灯していた。


リオンはぎゅっと光を抱くように両手で包む。


「これが……ぼくの“ちから”なら……」


白の光がざわめいた。

黒の影が揺れ動いた。


二柱の力は、まるで抗議するかのように少年へ伸びる。


――選べ。

――どちらかに従え。


「いやだっ!」


リオンは叫んだ。


「ぼくは、どっちも選ばない!

どっちも、すきだし、きらいじゃない……!

でも……ぼくのなかで、けんかしないで!!」


金色の光が――爆ぜた。


白と黒の光が圧され、距離を置く。

小さなリオンの身体には似合わぬ威圧感が、魂の空間に満ちた。


リオンは涙を拭い、拳を握る。


「ぼくが、まもるの。

ぼくの魂は、ぼくのものだよ!」


金色の光がゆっくりとリオンの胸へ沈んでいく。


その瞬間――


魂の空間が白く弾け飛んだ。


◆外界――森の中心


リオンの身体を裂いていた白と黒の魔力が、ピタリと動きを止める。


ロウガが息を飲み、ミレーヌが両手を胸に当てる。


「り……リオン……?」


フェンリルはじっと見つめていた。

その瞳は、深く、わずかに驚きを混ぜて。


「選んだか、小さき王よ。

白でも、影でもなく――

“己の始源”を。」


次の瞬間。


リオンの全身から、ゆっくりと金色の光が溢れ出した。


白でも黒でもない。

均衡した、調和の光。


ミレーヌが思わず泣き声で呟く。


「きれい……」


ロウガはごくりと喉を鳴らす。


「……なんだ、この力……。圧もねぇのに……息ができねぇ……!」


その光は、静かで、攻撃性も狂気もない。

けれど触れた者すべてが、膝を折りそうになるほどの“深さ”を持っていた。


フェンリルだけが、その光の正体を理解していた。


「それは……《創始の(アーク・オリジン)》。

神にも魔にも属さぬ“最初の灯火”。

お前自身が生みにし力――だれのものでもない、リオンだけの魔力だ」


ミレーヌは大きく目を見開く。


「神にも……魔にも……属さない……?」


「そうだ。

お前は、誰かに選ばれた器なのではない。

お前自身の意志で生まれた力を……“いま、取り戻した”のだ」


リオンがゆっくりと目を開く。


その瞳は――金色だった。


「……ただいま」


ミレーヌがその言葉を聞いた瞬間、抑えきれずに泣き出した。


「よかったぁ……ほんとうに……!」


ロウガが鼻をこすりながら、ぶっきらぼうに言う。


「バカ……心配させんなよ……」


リオンは困ったように微笑んだ。


だが、フェンリルだけはその微笑みを見て、静かに頭を垂れる。


「小さき王よ――

その力を持つ者は、いずれ必ず選ばねばならぬ。


世界を繋ぐのか。

世界を断つのか。

あるいは……世界を創り直すのか。」


ロウガもミレーヌも、リオン自身も意味を理解できなかった。


けれどその言葉の重さだけは、森の空気を震わせるほどに濃かった。


フェンリルは振り返らず、森の闇へと消えていく。


「いずれまた会おう。

その時、お前がどの『未来』を選んだのか――

この目で見届けてやろう」


闇に溶けるように姿を消す黒狼王。


残されたリオンは胸に手を当て、小さく呟く。


「ぼくの未来……ぼくが……選ぶ……」


彼の胸の奥で、金色の火が静かに灯ったまま揺れていた。

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