独立エピソード 王都編クライマックス直前
**① 王都崩壊前夜
『沈む鐘、泣く街』**
王都の空が、色を失っていた。
夕焼けは灰色、雲は肩を落としたように垂れこめ、
街の人々は理由もなく胸騒ぎを覚えていた。
最初の異変が起きたのは、鐘楼だった。
いつもは時刻を告げる澄んだ音。
しかしその日——
――ゴォォォン……
――ゴォ……オン……
まるで喉を枯らした声のように、
鐘は“泣いていた”。
魔塔の魔導士たちが慌てて調査に向かったが、
戻ってきた者たちは震えながら言った。
「鐘が……勝手に、鳴っている。
中に、何もないのに……!」
その音を聞いた瞬間、王宮にいるリオンの胸が締めつけられた。
(これは……外敵の“合図”だ)
影が囁く。
『第三段階の直前だ』
王都の誰も知らない——
崩壊の第一歩がすでに始まっていた。
その夜、王都は不吉な静寂に包まれた。
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**② 外敵“第三段階”開始
『門が開く音』**
深夜——。
王都外縁、誰も寄りつかないはずの古い祠の前に
“黒い縦裂け”のようなものが現れた。
空気が裂ける音。
ヒュ……ッ……ビキィ……
黒い靄が地面を這い、祠の周囲の草木は
触れた瞬間に“影の灰”へと変わった。
次の瞬間、影の声が世界に響く。
『――侵食、第三段階を開始する』
誰も聞いていないはずなのに、
リオンだけは眠りの中でその声を聞いた。
(来た……ッ!)
王宮の窓ガラスが震え、
遠くの空に“黒い光柱”が立ち上がる。
それは王都の人々には見えない。
しかし世界は確かに変質を始めていた。
“開門”だ。
外敵が世界に本格侵入するための、
最初の門が。
王都崩壊は、もう“予定された未来”へ向けて動き出していた。
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**③ リオン覚醒(光と影の統合)
『二色の瞳が開くとき』**
黒い光柱を夢で見た瞬間、リオンは飛び起きた。
胸が痛い。
光と影が身体の中でぶつかり合っている。
(ダメだ……押さえられない……!)
影の声が言う。
『統合しろ。
今のままでは、外敵に飲まれる』
光の声が言う。
【統合は危険。あなたの“心”が壊れてしまう】
「でも……やらなきゃ、王都が!」
痛みが限界に達した瞬間——
リオンは“内面世界”に落ちた。
そこには光の自分と影の自分が向かい合っていた。
光:
【私はあなたを守るためにいる】
影:
『私はお前を強くするためにいる』
光:
【あなたの心は壊れていない】
影:
『お前の力は破壊では終わらない』
光と影:
【『お前が“望む方”に進め』】
リオンは震える声で言った。
「僕は……全部受け入れる。
光も、影も。
ぜんぶ僕で……その上で、守る!」
二人のリオンが重なり合い、
世界が白と黒の光で満ちる。
次の瞬間——
少年の右目は金に、左目は黒に染まっていた。
それは“統合の証”。
外敵すら予測しなかった異常進化。
少年は“境界を越える者”となった。
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**④ 王子視点の嫉妬・敵意
『なぜその力を持つのが…僕ではない』**
王子エリアスは、リオンが覚醒した報告を聞いた瞬間、
胸の奥に燃えるものを感じていた。
嫉妬。
そして、焦り。
(どうしてだ……
僕は王族として努力してきたのに、
あの子は七歳で王都の運命を握るのか?)
リオンが光と影を統合したと聞き、
エリアスは拳を震わせた。
(もし……もし僕があの力を持っていたら、
王都はもっと強く、もっと栄え……
国民に“本当の未来”を与えられたのに)
彼はリオンを見るたびに思う。
——あの少年は危険だ。
——王国の象徴になるのは僕の役目だ。
そして深く確信した。
(いつか……僕は“彼を越えなければならない”)
その目は
“友”を見る目ではなく
“越えるべき存在”を見る戦士の目だった。
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**⑤ シルカとの和解回
『あなたは帰ってくる場所』**
リオンが覚醒した翌日、
シルカはずっと彼を避けていた。
(だって……怖かった。
影が近くにいた時、
リオンの目が、知らない人みたいだった)
リオンは王宮の庭でひとり座っているシルカに近づいた。
「シルカ……」
「……来ないで」
声が震えている。
それでもリオンは一歩だけ近づいた。
「僕は、シルカが怖いと思った気持ち、否定しない。
でも……聞いてほしい。
僕、帰ってくる場所がないと……壊れる」
シルカの瞳が揺れる。
「……帰る場所?」
「うん。
光も影も受け入れたけど……
その“真ん中”で立ってる僕を、
受け止めてくれるのは……シルカだと思う」
涙がこぼれた。
「……バカ。
そんなの、言われたら……泣くよ」
シルカはリオンの手を握った。
「帰る場所は……ずっとここにある。
逃げても、迷っても、
絶対にひとりにしないから」
リオンは強く握り返した。
影の声も、光の声も——
何も言わなかった。
これは“少年と少女”だけの会話だった。
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**⑥ 師匠 vs 外敵上位個体
『老人はまだ死ねない』**
王都外縁。
開いた“黒い門”の前に、師匠が立っていた。
杖を軽く叩くと、空気が震える。
「随分と派手にやってくれたな……」
門の中から、
“人の形をした影”がゆっくり現れる。
外敵上位個体——影将。
『……懐かしい匂い。
老人、かつての封印者よ』
「覚えておるか。若い頃、お前らの同胞を八体ほど斬った」
影将が笑う。
『今のお前では不可能だ。
寿命は尽きかけ、魔力も枯れかけている』
「そうだな。
じゃが——」
師匠は杖を投げ捨て、拳を握った。
「わしは二度と、あの子を泣かせるわけにはいかん」
次の瞬間、
老人の拳から激烈な魔力が炸裂し、
影将の胸を貫いた。
影将は驚愕の声をあげる。
『この魔力……!?
お前……命を燃やしたのか……!』
「これが最後の拳じゃ……受け取れいッ!」
影が弾け、門が揺らぐ。
老人は膝をついた。
「……リオン。
まだ……死ねんな……
お前の未来を……見届けるまで……」
その瞳には、まだ強い光が残っていた。




