7歳編の公式外伝として6本の短編3(各話完全に独立)
**① 師匠の若き日の秘密 ―リオンと“影”に繋がる伏線**
師匠レイヴンがまだ若く、魔塔の候補生だった頃。
彼は、ある禁書庫で偶然 “黒い残滓” を発見する。
それは魔力の波動ではない。
意識そのものが焼きついた、異質な“存在の痕跡”だった。
『……これは魔族でも神でもない。
まるで……誰かの“魂の欠片”だ』
触れた瞬間、目の奥に映ったのは——
——誰かが世界から“消されていく”記憶。
名前も、足跡も、作った物さえ、全てが砂になる光景。
(こんな力が……本当に存在するのか?)
その痕跡は奇妙だった。
“消される存在”を追うように“黒い何かが流れ込む”イメージが見えたのだ。
後にそれはこう呼ばれる。
《影喰い》
――存在の消滅に寄り添い、歪んだ力を得る現象。
レイヴンはその正体を掴めず、記録だけを残した。
しかし七歳のリオンの暴走を見た瞬間、彼は悟る。
(……あれは、若い頃に見た“影喰い”だ。
少年の中で、何かが再生しようとしている……!)
リオンの異常性をもっとも早く察したのは、実は師匠だった。
**② シルカの嫉妬視点
――“守りたい”の正体**
リオンの暴走後、ずっと胸の奥がざわついていた。
(なんで……あんなに抱きしめられたら、泣きそうになったんだろ……)
自分の手が震えたのを覚えている。
あの光の中心には、本当に彼がいた。
『リオンを奪わないでよっ!』
心の中で叫んだ相手は——
誰なのか自分でも分からない。
黒い何か。
白い何か。
彼に触れようとする存在すべて。
(ずるいよ……リオン……
私が見てないところで、どれだけ成長してるの……?)
胸の奥に熱い感情が溜まっていく。
嫉妬。
焦り。
責任。
そして、理解できない“恋に似たもの”。
その全部をまとめて名づけるとしたら——
(……私はリオンの隣にいたい)
その一言だった。
**③ 闇側から見たリオンの前世記憶の断片
――“消えた世界”の残り香**
闇の中に渦巻く意識は、少年の魂を観察していた。
『また……同じ光景だ。
人間が“存在”を捨てる瞬間……』
彼——影の主人は、リオンの前世を断片的に覗いている。
事故。
祈り。
消滅の願い。
そして“神のミス”による巨大な欠損。
『あれほどの技術痕跡が、丸ごと消えている……?
笑わせる、神々め。
そんな歪みが生じれば——私が目を覚ますのも当然だ』
影は嗤った。
『あの少年は、“穴”だ。
世界から削れた情報の残響が、私を引き寄せている。
あの子は私を憎むだろうが……いずれ気づく』
影がささやく。
『私たちは、運命で繋がっている。
おまえが願った“消滅”こそが、私の誕生だ』
リオンの前世の願いが、影の目覚めの引き金だった。
**④ 別視点その4(王族、魔塔、神殿など)
――上位勢力の緊急会議**
◆王宮
「七歳児が……大気圧を揺らすほどの魔力暴走ですと?」
王は耳を疑った。
報告官は震えている。
「……陛下、あれは規格外です。
光属性と闇属性が同時に発動した記録があります」
部屋が静まる。
(これは、時代が動く大事件だ)
◆魔塔
「面白い。実に興味深い」
塔主は、リオンの魔力波形を見るなり舌なめずりした。
「もし制御できるなら……塔は百年の繁栄を得られる」
だが側近が問う。
「制御できなかった場合は……?」
塔主は静かに答える。
「——国が一つ消えるだけだ」
◆神殿
神官長だけは別の表情だった。
「……あの子の中には、“禁忌の片鱗”が宿っている。
神が手を滑らせたか……あるいは——」
彼は、祭壇の奥でわずかに震える“封印石”に目を向ける。
「ゆっくりと、我らの敵が目覚めつつある」
**⑤ シルカの嫉妬・葛藤回(深掘り)
――“私じゃ、届かないの?”**
リオンが倒れたとき。
抱きしめた腕の中で震える彼の体温に、胸が熱くなった。
(なんで……こんなに苦しそうなのに……
私は少し、嬉しかったの……?)
彼が自分の名前を呼んだ瞬間。
心が跳ね上がった。
でも後で、リオンが母親に抱きしめられるのを見て——
胸がズキッと痛んだ。
(私じゃ……駄目なの?
リオンにとって“特別な存在”にはなれない……?)
そんな不安がずっと胸に残る。
彼の中に“黒い何か”があると知っていても、
それでも側にいたいと思ってしまう。
(……ねえ、リオン。
どうしてそんなに遠くへ行こうとするの?
私はまだ……あなたの隣のままでいたいのに)
**⑥ 師匠が単独で“影の正体”を探り始める
――再び禁書庫へ**
レイヴンは夜の魔塔に忍び込み、
若い頃の禁書庫へ向かった。
目的はただ一つ。
“影喰いの正体”の再調査。
見つけた本にはこう書かれていた。
《存在消滅の直後、必ず“影”が生まれる。
それは魂の残渣ではなく——
“消された世界の怨嗟”である》
レイヴンは息をのむ。
(……リオンの前世の願いが、影を呼んだのか?
だとしたら——あの子は既に宿命の渦中にいる)
その瞬間、棚の奥から黒い揺らめきが覗いた。
〈……探すな。師よ〉
レイヴンは杖を構える。
(やはり……あの“囁き”は実在する!)
影が呟く。
〈少年を解放してやれ……
あれは“生きる”ことを望んでいない〉
「馬鹿を言え。あの子は未来を見ている」
〈ではいずれ、おまえの手で殺すことになる〉
黒い霧はそう残して消えた。
レイヴンは拳を握りしめる。
(そんな未来……絶対に許さない)
**⑦ 7歳編クライマックスの布石
――外敵の影が動き出す**
暴走事件から数日後。
国境近くで“異常な魔素の波”が観測された。
「魔族か……?」
「いいえ……記録にない反応です」
森の奥、巨木の根元。
黒紫の霧が脈動している。
『……適応完了。
この世界の魔力密度……貧弱だが、利用価値はある』
霧の中から細い手が伸び、地面を掴む。
『消滅の残響……まだ近い。
探すだけだ。あの魂を……』
その目は、
まっすぐ“リオンの方向”を向いていた。




