7歳編の公式外伝として6本の短編1(各話完全に独立)
**① 王族の思惑深掘り
『王子レグナートの戦略 ― “少年確保”の真意』**
王都中央宮殿。
レグナート王子は夜遅くまで地図と資料の山を前にしていた。
「……リオン。
7歳で“光と影の混在魔力”。
これは単なる逸材ではない」
彼は資料の一枚を指先で軽く叩く。
《先祖王エルディア四世の血筋に、
神性と影性の混在者が生まれた、という古い記録》
(この国は、光と影のバランスで長く繁栄してきた。
だが最近は“光”に偏り、魔塔も軍も神殿も歪み始めている)
レグナートの考えは単純ではない。
リオンを「味方につける」だけでは足りない。
(あの少年は“国家の歪み”を正す鍵になる。
保護するのではなく……共に国を変える存在だ)
しかし周囲の大人たちは理解していない。
魔塔主は「兵器として管理すべき」と言う。
神殿は「神性の器として保護すべき」と言う。
(彼らは“自分の利益”しか見ていない)
王子は深く息を吐く。
「……リオン。
君となら、この国を立て直せる。
だがまずは、王都に来てもらわねば」
その時、近衛長が報告に入ってきた。
「王子。
召喚準備は整いました。
ただし、師匠クロウが警戒を強めている様子です」
レグナートは静かに笑った。
「構わない。
クロウは賢い。
“敵ではない”と伝われば、邪魔はしないだろう」
窓の外で風が揺れた。
王子は未来を見据えるように呟く。
「リオン──君が世界の何者であれ、
私は“人間として”迎えに行く」
それは政治でも利用でもない。
王子の純粋な理由だった。
**② 闇側の幹部会議
『影の殿堂 ― “観測対象リオン”の処遇』**
場所は世界の裏層。
影だけが形を持つ「殿堂」。
三つの巨大な影が揃うと、空間がざらつく。
◆第一影「王」
『リオンの“器”は順調に拡大している。
本体との同調率も上昇中』
◆第二影「賢者」
『だが光側の干渉が強い。
このままでは“均衡”が崩れる』
◆第三影「刃」
『問題は外敵だ。
我らと同じ“外側”の存在が、この世界に興味を持ち始めている』
“王”が低い轟きで応じる。
『外敵が本格侵入すれば、
リオンがどちら側にも振れず“中立”のまま固まる』
“セージ”が計算式を浮かせた。
『中立化はまずい。
光と影が拮抗したまま大人になると……
リオンは“世界の軸”となり、干渉不可能になる』
“刃”が嗤う。
『じゃあ囲い込みますか?
坊主には素質がある。こっちに引っ張っちまえば──』
影の空間に、さらに一つの影が割り込んできた。
──リオンの“影分身”。
『……好き勝手、言ってくれるな』
三幹部の影がわずかに揺れる。
“王”
『来たか。リオンの“内側”』
“影分身”
『坊主はまだ子供だ。
外敵が動く前に、成長させるのが先だ』
“セージ”
『では、お前はどうするつもりだ?』
“影分身”
『決まってるだろ。
坊主に“俺の力”を使わせる。
そうすりゃ、光側も外敵も手が出せない』
三幹部は沈黙した。
やがて“王”が言い放つ。
『任せる。
だが忘れるな──
お前はリオンの“影”に過ぎぬ』
影分身は笑って消えた。
『……さて、坊主。
そろそろ本気で鍛えてやらねぇとな』
殿堂に、禍々しい笑い声が響いた。
**③ 光側(神殿)の神託回
『白の神殿に降りる声 ― 予言者ミレイユの視界』**
白の神殿・神託の間。
巫女長ミレイユは祈りの最中に突然息を呑んだ。
「……っ、来る……!」
彼女の周囲に光の粒子が集まり、
世界の“外”から声が降りてきた。
――“光と影、混じりし魂。
世界の軸となる子が現れた”――
ミレイユは震える。
「その者……リオン……?」
光がさらに強まる。
――“光を守るか、影を赦すか。
その選択が、王国の未来を決める”――
「選択……?
神よ、どちらを選ぶべきなのですか?」
――“答えは子に委ねられている”――
その瞬間、光に黒い亀裂が走った。
シュッ──……
「なっ……影……?」
光の神託に、影が混ざる。
今まで一度も起きなかった現象。
――“影を拒むな。
排除すれば、世界は“外側”に飲み込まれる”――
ミレイユは目を見開いた。
(排除してはいけない……
つまり、神は“影の共存”を認めている……?)
神託が途切れ、部屋に静寂が戻った。
巫女長は汗を拭い、呟く。
「……リオン様。
あなたは一体……何者なのですか……?」
**④ 師匠・母・シルカの反応編
『少年をめぐる三者会談 ― それぞれの決意』**
家のリビング。
エマ母、クロウ師匠、シルカの三人が集まっていた。
話題はただ一つ。
──リオンの異変。
母エマは深刻な顔。
「……あの子の魔力。
“影”の混ざり方が日に日に強くなってるの」
クロウが頷く。
「リオンの影は、自律思考を持ち始めています」
シルカは勢いよく言う。
「わたし、聞いたの! リオンの後ろから声がして……
『邪魔するな』って!」
二人の大人が黙り込む。
エマは震える声で言った。
「リオンを……助けられるんですか?」
クロウは拳を握った。
「助ける。
私は“師として”あの子を守る」
シルカも迷いなく言う。
「リオンは絶対にわたしが守る。
影なんて、負けない!」
だが、クロウは苦い顔をした。
「相手は……彼の“内側”だ。
外からの助力だけでは限界がある」
エマが涙ぐむ。
「それでも……それでも息子を守るわ。
あの子はまだ、たった七歳よ……」
そのとき、窓の外の影がわずかに揺れた。
三人はまだ知らない。
リオンが“世界規模の争点”になりつつあることを。
**⑤ 外敵による現界の第一段階
『境界の裂け目 ― 観測者たちの前触れ』**
深夜の森。
空気が凍るように静まり返った瞬間──
ピシッ……!
空間に細いひびが走る。
そこから滲み出る“外の気配”。
魔物でも神性でも影性でもない。
『……第一段階、完了……』
声は概念として直接響く。
『この世界の“境界”は弱い。
もう少しで……侵入できる』
大地が軽く震える。
『対象:リオン。
観測レベルを第二段階へ移行』
その瞬間、ひびの向こう側で
無数の眼が一斉に“こちら”を見た。
『世界の光と影が争う時、
扉は自動的に開く……』
外敵は静かに消えた。
だが──森の動物たちは怯え、
空気は一晩中ざわついていた。
それは“始まりの兆し”だった。
**⑥ リオンが召喚状を受け取る話
『王都からの手紙 ― 少年の運命が動き出す』**
朝。家に一通の封筒が届いた。
「……王都、王宮、第一王子レグナート様より?」
母エマが震える手で開く。
クロウも険しい表情で覗き込む。
シルカも背伸びして見ている。
内容は短い。
《リオン・ハーミット殿。
適性検査および特別審査のため、
王都への来訪を要請する。
拒否権はない。》
エマが顔色を失う。
「拒否権……ない?
そんな……!」
クロウが紙を奪うように読み、低く唸る。
「……これは“召喚命令”だ。
王族が本気で動いたか……」
シルカは叫んだ。
「リオンを連れていかせない!!」
しかしそのとき、リオン本人が部屋に入ってきた。
「どうしたの?」
三人は顔を見合わせ──
エマが膝をつき、息子を抱きしめた。
「リオン……王都が、あなたを呼んでいるの」
リオンの胸がざわついた。
王都……呼ばれる理由もわからない。
だが──
彼の影だけは、静かに喜んでいた。
『いい場所じゃねぇか、坊主。
光も影も外敵も……全部集まる。
“成長”には最適だ』
リオンは無意識に拳を握る。
ここから、彼の運命が大きく動き出す。




