表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/147

7歳編・第84話:白聖院・光核診断 ― 少年の中の“もう一つ”

白聖院の内部は、外観以上に“神聖”だった。


天井まで届く白大理石の柱が並び、

壁には光の紋章が浮かぶように刻まれている。

魔力石の灯りは柔らかく、

外の喧騒とは完全に切り離された空間だ。


リオンはその中心を、

レイティアの袖を軽く握りながら歩いていた。


胸の奥の脈動は、

外に比べてここではさらに強く感じる。


ドク……ドクン……

(う……また……)


歩くたび、白聖院全体が

光核の反応に“応えている”ようにも思えた。


レイティアはリオンの様子に気づき、

そっと囁いた。


「怖がらなくていいわ。

 あなたの身体を壊すような検査はしません。


 すべては“あなたを守るため”です」


「……うん」


しかし、心はまだざわついていた。



エルミアスに案内され、

白い扉の前に立つ。


扉には“光核診断室”と刻まれている。

そこに流れる魔力の気配は、

一般的な魔法とはまったく異質だった。


「ここで検査を行う。

 恐れることはない。

 むしろ……我々としては、

 “君に会えてよかった”とさえ思っている」


老人の言葉に、リオンは目を瞬かせた。


「会えて……よかった……?」


エルミアスは静かに頷く。


「君の中にあるものは、

 この大陸では数百年ぶりの“兆候”だ。


 正しく扱えば――

 世界を救う光となる可能性がある」


リオンは胸に手を当てた。


(でも……ぼくは……

 光じゃなくて“影”の声を感じてる……)


その不安を察したかのように、

レイティアが肩に手を置く。


「真実を知るところから始めましょう。

 リオン、開けるわね」


扉がゆっくりと開く。



診断室は円形の広い空間だった。


床には複雑な光の陣が刻まれ、

天井からは透明な水晶の柱が垂れ下がっている。

部屋全体が“呼吸するように”

淡く光っていた。


中央には、小さな白い台座。


エルミアスが言う。


「リオン、あの台座に手を置きなさい。

 痛みはない。

 ただ……“感じる”だけだ」


リオンはゆっくりと頷き、

台座に歩み寄る。


手を乗せる瞬間――

胸の光核が激しく脈打った。


ドクンッ!!


「……っ!」


「リオン!」


レイティアが急いで支える。


しかしエルミアスは目を見開き、低く呟いた。


「……間違いない。

 “光核の覚醒”が始まっておる……!」


老人が手を振ると、

診断陣が一斉に光を放ち、


――リオンの胸の奥へ“触れた”。


「う、あ……!」


世界が揺らぐ。


白い空間の中、

リオンは“自分だけの場所”に落ち込んでいた。


足の下は光。

天井も光。

周囲は静寂。


そこに――

真っ黒な霧が渦を巻いて現れた。


――器……。


――目覚メロ……。


――ソレハ……我ノ……。


霧の中から、

細い手のような影が伸びてくる。


(こいつ……!

 ぼくを……!)


引き寄せられそうになる。


その瞬間――

“逆方向”から強い光が走った。


眩しさと温かさを伴う、

優しい光。


――戻りなさい。


その声は、確かに“誰か”の声だった。


母を思わせるような……

懐かしいようで、聞いたことのない声。


黒い影が一瞬たじろぎ、

霧が後退していく。


――器……邪魔……サレタ……。


――マタ会ウ……。


霧はひび割れたように砕け、

光に飲まれるように消えた。


そしてリオンは――


白い診断室に“戻った”。



「リオン!」


レイティアが抱きとめる。

神術官たちは慌てて陣を停止させた。


エルミアスは震える手で杖をつき、

呆然と呟いた。


「……とんでもない……。

 この子の中には……ふたつある……」


「ふたつ……?」


レイティアが息を呑む。


老人は震える声で続けた。


「ひとつは“光核”――

 正統な神性の源。

 王国が守るべき祝福だ。


 だがもうひとつは……

 “古代の影核えいかく”……!」


室内が緊張に凍りついた。


リオンは震える声で問う。


「……あの黒い“声”……

 あれが……ぼくの中に……?」


エルミアスはゆっくり頷いた。


「君の中には“光”と“影”の

 両方が宿っている。


 まるで――

 何者かが意図して“二つを同時に”

 君に埋め込んだかのように」


リオンは顔を伏せた。


(ぼくの中に……

 影がある……?

 ぼくは……悪いものなの……?)


レイティアがすぐに抱きしめる。


「違う。

 あなたが悪いのではないわ。

 そのどちらも“あなたの一部”――

 それだけのこと」


しかしエルミアスは険しい表情のままだった。


「問題は……

 影核は必ず“主”を求める。


 いずれ影は君を――

 器として乗っ取ろうとするだろう」


リオンの肩が震えた。


レイティアの瞳が鋭く光る。


「――そんなこと、

 絶対にさせません」


老人は静かに頷いた。


「ゆえに……急がねばならぬ。

 影核が完全に目覚める前に、

 君を“光側”に固定する儀式が必要だ」


リオンは唇を噛む。


(ぼくの中の……影。

 ぼくを奪おうとしてる……

 絶対に……負けない……)


しかしそのとき――


診断室の天井が突然震えた。


壁の光が一瞬だけ暗転する。


神術官が叫ぶ。


「報告! 王都外縁部の結界に異常魔力反応!

 影霧の侵入を確認!!」


レイティアの表情が凍りつく。


「影霧……!?

 まさか……リオンを追って……?」


エルミアスが震えた声で呟く。


「影核の主が……

 ついに動いたか……」


リオンの胸がドクンと鳴る。


影の声が微かに響いた。


――器……迎エニ……キタ。

『王都に広がる影霧 ― 少年を狙う“主”』


影霧が王都に侵入。

影核の“主”がリオンを迎えに来る。

王都は初めて影に触れ、緊急の結界防衛へ――。


レイティアはリオンを守り切れるのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ