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7歳編・第82話:王都への道中 ― 聖騎士と魔力の脈動

王都へ向かう馬車は、

午前の光を浴びながら森の外周路を進んでいた。


車輪が土を踏みしめるたび、

かすかに木の香りと湿った風が

馬車の小窓から入り込む。


リオンはその風に当たりながら、

胸の奥に広がる“違和感”に眉を寄せた。


(なんだろ……これ……

 胸が……むずむずする……)


脈拍がほんの少し速い。

けれど痛みはない。

むしろ――温度だけが不自然に上がっている。


まるで何かが

“中で動こうとしている”ような感覚。


レイティアは対面の席に座り、

リオンの体の状態を静かに観察していた。


「胸の光が、反応していますね……」


「うん……なんか、変……」


リオンは小さな手を胸に当てる。

すると指先に、微かに“脈動”が伝わってきた。


ドクン……

ドクン……


普通の心臓の鼓動とは違う。

もっと深いところから響いてくる。


まるで――“別の命”が

共鳴しているような音。


レイティアは気づくと、

すぐにリオンの額に手を当てる。


「熱はありません……

 でも魔力が……揺れています」


「魔力が揺れるって……どういうこと?」


レイティアは少し言葉を選ぶように息をついた。


「魔力というのは本来……

 “外へ流れようとする”ものです。

 だから魔法として形を持つ」


「うん」


「けれどあなたの魔力は……

 “内側へ向かっている”。

 まるで――何かを育てるように」


「何かって……ぼくの中に……?」


答える前にレイティアはリオンの手を取り、

震えがないか、魔力が漏れていないかを確認した。


「今すぐに危険はありません。

 ただ……王都での検査は必須です。

 あなたの魔力は“神性に干渉された形跡”がありますから」


(やっぱり……あの声……)


リオンは唇を噛みしめる。


胸の中で感じたあの違和感、

扉の向こうで聞こえた声、

影を飲み込んだあの瞬間――


全部つながっている気がした。


(ぼく……何かに触れちゃったんだ……

 触れちゃいけないものに……)


馬車が揺れる。


その揺れに合わせるように、

胸の脈動も小さく波打った。



昼過ぎ、馬車はひらけた平原に出た。


道脇には緩やかな丘陵が続き、

遠くの空には王都方面特有の

白く細い飛行竜の影が見える。


外に広がる景色を見ていると、

気分がほんの少し軽くなる。


そんなとき――


馬車の外から低い声がした。


「水を補給する。少し休め!」


御者だ。


馬車が止まり、

リオンとレイティアも外に出る。


平原の真ん中で風が吹き抜け、

草がさわさわと揺れる。


レイティアが魔力量計測用の

小さな青い石を取り出す。


「念のため、確認しておきましょう」


「う、うん……」


リオンが青石に触れた瞬間――


ぱああああっ!


眩い白い光が爆ぜる。


レイティアは反射的に息を呑んだ。


「これは……!」


白光は青石を通り越し、

レイティアの腕にまで光の筋を伸ばす。


その光に触れた瞬間、

レイティアの頬に汗が流れた。


「なんて……量……!

 昨日の比じゃありません……!」


「えっ……そんなに?」


「あなたの魔力……増えています。

 爆発的に」


心臓がひゅっとなる。


(やっぱり……ぼくの魔力……あの影のせいで……?)


レイティアは落ち着いた声で言う。


「恐れなくていい。

 魔力そのものはあなたを傷つけません。

 問題は……それを“呼び起こしている何か”」


リオンは喉が乾くのを感じた。


(ぼくの中に……何かがいる……

 本当に……?)


レイティアは強い瞳でリオンを見つめる。


「王都の診断士たちに、

 その“何か”を調べてもらいましょう。

 あなたを守るために」



休憩を終えると、

馬車は再び王都へ向かう。


風の外を見ながら、

リオンは胸の鼓動を確かめるように

そっと手を当てた。


ドクン……


(さっきより……強くなってる……?)


そのとき、馬車の窓に

“影”がはりついたように見えた。


「っ……!」


思わず身を引く。


だが――影はすぐに風に流され、

ただの雲の影だとわかる。


(なんで……あんな風に見えたんだろ……)


レイティアが気づいて声をかけた。


「不安ですか?」


リオンは黙って頷く。


レイティアはそっと手を重ねた。


「大丈夫。

 あなたは一人ではありません。

 私も、騎士隊も、王都も……

 あなたを守るために動いています」


リオンは小さく息を吸い込み、

繋いだ手に力を込めた。


「……ありがとう」


レイティアは微笑む。


「王都まで、あと一日です」


馬車はどこまでも続く道を進んでいく。


だがそのころ――

彼らの後方の森では“黒い霧”が

ゆっくりと、確実に王都方面へと広がっていた。


影の目が細く開く。


――器……

――育ッテイル……

――奪ウ……


その声はまだ誰の耳にも届かない。


だが確実に、

暗い運命がリオンを追い始めていた。

『王都・白光の城門 ― 少年が踏む新たな大地』


ついに王都へ到着。

だがリオンを待つのは、

王国最高機関による“神性検査”――。


そして、彼を見つめるもう一つの影。

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