表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/147

5歳編・第10話:秘密の設計図と最初の創造

秋の風が冷たくなり始めた頃。

リオンは、裏庭の大きな穴の前で腕を組んでいた。


あの日の爆発から一か月。

母エルナは怒りよりも心配を優先し、父ダリウスは“魔法”という言葉を避けるようになった。

だがリオンの中では、あの瞬間の感覚が忘れられなかった。


(あの光……あの構造。まるでプログラムを組んでるみたいだった)


彼の頭の中には、見たこともない“魔法陣”のような図形が浮かんでいる。

それは線と記号が入り組んだ――まるで回路図か、ソースコードのような“設計図”だった。


ピィが頭の上で耳を揺らす。

「リオン、また考えてるの?」


「うん……。ピィ、あの時の魔法、もう一度試してみたい」


「ぴぃぃ!? また爆発するかもよ!?」


「今度は、ちゃんと制御してみせるさ」


リオンは地面に木の枝で円を描き始めた。

その中心に、頭の中の“設計図”をなぞるように記号を刻む。

不思議なことに、描くたびに線が淡く光り、魔力が流れるのがわかった。


(これが……創造魔法の“構築”なんだ)


前世でプログラムを書くように、リオンはコードを組む。

“素材”を定義し、“目的”を設定し、“出力形態”を決める。


彼が選んだのは――スコップ。

父が使っていた青銅のスコップは、何度も曲がり、壊れていた。

それを見ていたリオンは、ずっと思っていた。


「もっと強くて、長く使えるスコップを作りたい」


その“想い”を魔法陣に流し込む。

掌をかざすと、光が集まり、空気が震えた。


「創造――《アイアン・スコップ》」


光が爆ぜるように収束し、そこに一つの“形”が現れた。


――銀色に輝くスコップ。


リオンは息をのんだ。

青銅よりもずっと滑らかで、軽い。

手に取ると、しっくりと馴染む。


「……できた。ほんとに、できた!」


ピィが喜びの声をあげて飛び跳ねた。

「ぴぃぃぃ! すごいよ、リオン!」


リオンは夢中で地面を掘り始める。

土は柔らかく、刃が引っかかることもない。

軽い力でどんどん掘れる。


(すごい……こんなに楽になるなんて)


父が使っていた道具よりも、ずっと性能がいい。

少年は達成感に満ちた笑顔を浮かべた。


だが、その光景を――

偶然、畑から戻ってきた父ダリウスが目撃していた。


「リオン、それは……」


驚きに言葉を失う父。

リオンは一瞬焦ったが、隠すことをやめた。

「お父さん。これ、ぼくが作ったんだ」


「作った? ……どうやって?」


「えっとね、魔法で!」


父は唖然とし、息を呑む。

5歳の息子が、金属製の道具を作り出した――そんな話、信じられるはずもない。


だが、リオンが掘った土を見て、すぐに悟った。

「……これ、ただの鉄じゃないな」


「うん、“アイアン”って名前をつけた。強い鉄だよ」


父はしばらく黙っていたが、やがて目を細め、微笑んだ。


「リオン……。ありがとうな」


「え?」


「この村じゃ、みんな道具がすぐ壊れて困ってるんだ。お前のそれがあれば、仕事が楽になる」


その言葉に、リオンの胸がじんわりと温かくなった。

誰かに“ありがとう”と言われたのは、前世以来かもしれない。


(これだ……このために、俺は魔法を使いたいんだ)


リオンは嬉しそうにスコップを差し出した。

「お父さん、これ、使ってみて!」


ダリウスは受け取り、畑の土を掘る。

「おお……軽い。まるで空気みたいだ」


二人は顔を見合わせて笑い合った。

リリィが走ってきて、無邪気に拍手する。


「おにいちゃん、すごーい!」


エルナも台所から顔を出し、柔らかく笑った。

「……まったく、ドジばかりしてると思ったら、とんでもないことをやるわね」


「えへへ……」


その夜、家族そろって夕食を囲んだ。

リオンはいつもより少し多く食べ、ピィはテーブルの上でこっそりパンをついばんでいた。


――“創造魔法”は、ただの力じゃない。

誰かを助けるために使うもの。


リオンは、静かに心の中でそう誓った。


その頃、遠く離れた神界では。

一柱の神がモニターのような光の板を見つめながら、額に手を当てていた。


「……やはり、“rion_コード”が再構築を始めているな」


その声は微かに震えていた。

かつて一人の男が願った“消滅”が、今、新たな形で再び世界に波紋を広げようとしていた。

初めての“創造”は、父の笑顔を呼び、家族を温めた。

だが、その光は遠く天へ届き、神々の沈黙を揺らす。

少年リオンの力が、静かに世界の歯車を動かし始めた――。

次回、「井戸の夢と村の未来」。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ