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7歳編・第79話:影との戦闘 ― リオンの初めての決断

影の人型が再びリオンへと歩み寄る。


その動きはゆっくりだが――

大地に響くような不気味な重みを持っていた。


赤く光る眼。

軋むような関節の動き。

霧のように揺らぐ輪郭。


リオンは胸の光を押さえながら、一歩も退かない。


(怖い……でも、もう逃げない。

 ぼくが逃げたら、みんなが……

 村が……壊されちゃう……!)


バルター団長が防衛線を固めながら叫んだ。


「リオン! 後ろへ下がれ!!

 お前はまだ子どもだ、戦う必要はない!」


しかしリオンは首を振った。


「ぼく、下がらない。

 あいつは……ぼくを狙ってるんだ。

 ぼくが逃げたら、もっとひどいことになる……!」


バルターは一瞬だけ迷い、

しかし少年の目に宿る覚悟を見て口を閉じた。


エルネストとエルナの両親は震えながらも、

息子の言葉を否定できなかった。


「リオン……無理はするな……」


「絶対に……生きて戻ってくるのよ……」


リオンは小さく頷いた。


そして――影が動いた。



影は疾風のように加速し、一瞬でリオンの目の前へ出た。


「ッ!!」


リオンは反射的に胸から溢れた光を盾のように広げた。


“バァンッ!!”


衝撃波のような音とともに、光の壁が影の攻撃を受け止める。


影の腕は鋭い槍のように変形しており、

その一撃は軽く大木を砕くほどの威力だった。


バルターが目を見開く。


「な……なんだあの防御力は……!?

 黄金の壁……魔法か? いや、魔法じゃない……!」


リオンは光の盾を押し返しながら叫んだ。


「お願い……!

 ぼくの力……もっと強く……!

 みんなを守れるくらい……!」


光の盾が強く輝き、

影の腕を弾き飛ばす。


影は数メートル後ろへ跳ね飛んだが、

霧となって再び形を整える。


しかしその動きが鈍くなったのを

リオンは見逃さなかった。


(効いてる……!

 ぼくの光は、あいつに効いてる……!)


影はギィィィと歪んだ咆哮を上げ、

地を這うようにして周囲へ影の触手を伸ばす。


何本も、何十本も。


村人へ向けて放たれる。


「みんな、避けて!!」


リオンは両手を広げた。


“パァァァァッ!!”


光が爆ぜて広がり、

影の触手ひとつひとつを焼くように消し飛ばす。


「う、うわぁ……」


「な、なんだこの光は……?」


「リオン……お前、本当に……人間、なのか……?」


兵士たちが息を呑む。


だが影は、まだ動きを止めない。


攻撃が効いているとはいえ、

その量と速度は異常だった。


(このままじゃ……押し負ける……

 もっと……もっと強く使わなきゃ……!)


胸の光が呼応し、再び膨らむ。


しかし――


“扉”のノイズが頭を揺らした。


――開けよ……


――お前の力は、まだその先にある……


リオンは歯を食いしばる。


「やだ……!!

 それは開けない!!

 ぼくの力は……ぼくの意思で使うんだ!!」


光は揺らぎ、扉は開こうとしたが、

リオンの拒絶によって寸前で止まった。


影の霧が集まり、再び人型になる。


その眼が、リオンだけを見つめて赤く光る。


(あいつ……ぼくを……“鍵”として見てる……?

 ぼくの力を……開けさせようとしてる……?

 でも絶対に……開けちゃダメなんだ……!)


リオンは両拳を握りしめた。


そして――決断した。



「みんな……下がって!!

 あいつの攻撃、全部……ぼくが受け止める!!」


「なっ……!」


バルターが叫ぶ。


「何を言っているリオン!!

 一人で戦えるわけが――」


「できるよ!!

 ぼく……みんなを守りたいんだ!!

 ぼくが……ここで戦う!!」


その目は、恐怖に濡れながらも決して折れていなかった。


その姿を見て、

大人たちが言葉を失う。


騎士たちも村人たちも、

いつのまにかリオンの背中を見つめていた。


影が再び跳んだ。


赤い残光を引く高速の突進。


その瞬間、リオンの胸から金色の光が柱となって炸裂した。


“ドォォォォン!!”


影は直撃を受け、大きく吹き飛ぶ。


地面に転がり、霧となって崩れ、

何度も形を戻そうとするたびに光が焼く。


リオンは足元がふらつきながらも、

その度に光を放った。


何度も、何度も。


影の再生は弱まり、ついに――


“ジュゥゥゥゥ……”


悲鳴のような音を上げて、

完全に消え去った。


残ったのは黒い粒子だけだった。


静寂が村を覆う。


リオンは膝をつき、肩で息をしながら言った。


「はぁ……はぁ……

 みんな……もう大丈夫……」


バルターは剣を地面に突き刺し、

震える声で言った。


「……リオン。

 お前は……俺たちの命を……救った……」


村人たちが泣き出し、

エルネストとエルナは息子を抱きしめた。


「リオン!!」


「本当に……本当に……よく頑張ったわ……!!」


リオンはその腕の中で小さく微笑んだ。


だが同時に、胸の光が静かに警告をしていた。


(まだ……終わりじゃない。

 あいつ……“ただの影”じゃなかった……

 ぼくを求めてた……

 ぼくの“扉”を……開けさせようとしてた……)


影は倒れた。

だが、その存在の意味は――

この世界の深い秘密につながっている。


リオンの戦いは、

ここからさらに大きく広がっていくのだった。

『影の残滓 ― 王都への報告』


消えたはずの影。

しかし残された黒い粒子は静かに蠢き、

新たな情報を呼び寄せる。


王都からの使者、そして“影”を知る者たち。


リオンの存在が、ついに王国上層部へ知られる――。

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