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7歳編・第72話:影の衝突 ― 村の夜、三勢力の激突

夜更けの村は、本来なら静寂に包まれているはずだった。

しかし――リオンは胸の奥で、はっきりと“異質な気配”を感じ取っていた。


(来てる……数は、四……いや、五?)

七歳の子供の感覚とは思えない精度だった。


家の扉が勢いよく開き、父エルネストが飛び出してくる。


「リオン、どうした!?」


「お父さん……村に、知らない人たちが……!」


母メイラも青ざめた。


「ま、まさか王都の……?」


エルネストはすぐに事態を悟った。

息子の“暴走”の件が表沙汰になった以上、可能性は高い。


「メイラ、子どもたちを連れて裏山へ。俺は――」


そのとき。


――ザッ……


村の入口の闇から、フード姿の男たちが現れた。


「……! 本当に来やがった……!」


エルネストが身構える。


フードを脱いだ先頭の男は、奇妙な金属の法具を胸に提げていた。


聖輝会・光導派。


「レインフォード一家。少年を保護しに来た。

 抵抗せず引き渡していただきたい」


その声は冷たく、揺らぎがなかった。


エルネストは怒りを抑えきれず叫ぶ。


「保護だと!? 夜中に武装して押し入り、子供をさらうのがか!?」


「反抗は想定どおりだ。

 ……神性保持者の家族は、皆そう言う」


男は淡々と手を掲げた。


「確保班、行け。少年を捕らえろ」


その瞬間――リオンが叫ぶ。


「来る……!!」


村道を駆ける二人の影。

光導派の男たちが魔術を放とうとした、その時。


――轟音。


村の反対側から、強烈な魔力が横合いに叩きつけた。


「なに……!?」


光導派の数名が吹き飛ばされる。


浮遊する魔法陣。

その中心に立つのは、蒼天の塔の魔導師フェルネス。


「やはり教会の狗どもが先に来たか。

 まったく……好き勝手動いてくれる」


フェルネスの冷ややかな声が夜気を裂いた。


「蒼天の塔……! 貴様らも少年を狙うのか!」


光導派の代表が怒声をあげる。


フェルネスは微笑むだけだった。


「狙う? 当然だろう。

 神性魔力――学術的に非常に興味深い。

 あんな狂信者に渡して腐らせたくはない」


「貴様ァ!!」


光導派の魔術師たちが一斉に魔力を放つ。

しかしフェルネスは指をひと振りするだけで霧散させてしまった。


「低品質の祈祷魔術など、私の前では無力だよ?」


(やばい……!

 この人、強い……! 前の大賢者の側近って……本当にやばい人なんだ!)


リオンは震えた。

胸の光が警告を発し続けている。


(近づかれたら危ない……!)



混乱が広がる中――

村道のさらに奥から、地を震わせるような重い足音が響いた。


――カン、カン、カン。


金属が鎧に触れ合う音。


現れたのは、白金騎士団の部隊。

先頭には団長バルター。


「教会、塔、両勢力。

 ……勝手な真似をしてくれたな」


バルターは剣を抜き、地に突き立てた。


「リオン少年は、八歳までは家族のもとにいると正式に決まった。

 それを破るというなら――まずは俺を倒してからにしろ」


光導派も蒼天の塔も、一瞬動きを止める。


(白金騎士団……!

 この人は……ぼくの味方……?)


胸の光が一時的に落ち着く。


だが、状況は最悪だった。


■ 三勢力が“村の中”で完全に衝突――。


光導派(教会)

蒼天の塔(魔導師)

白金騎士団(王国)


どの勢力も、リオンを中心に動いている。


リオンの魔力がざわりと震えた。


(嫌だ……ぼくのせいで、みんなが……!)


心臓が熱くなる。

胸の光が反応し、脈動が徐々に激しくなる。


まるで――

世界の緊張が、そのままリオンへ流れ込んでくるように。



「……来るか」

フェルネスがリオンの胸の光を見て表情を変えた。


「暴走兆候……いや、違う。

 これは――覚醒だ」


光導派のリーダーも叫ぶ。


「まずい! 神性が刺激されている!」


バルターも顔色を変えた。


「リオン、深呼吸しろ!

 落ち着け!」


しかし――遅かった。


三勢力が互いに魔力と武力を解き放った衝撃は、

まるで戦場の魔力嵐のように渦巻き、

リオンの《神性魔力》を刺激した。


胸の光が爆ぜた。


――どくん。


――どくん。


――どくん!!


「っ……!!」


リオンの身体が浮き上がる。

白金の紋が全身を走り、瞳の色がゆっくりと変わっていく。


「り、リオン!?」

メイラが悲鳴を上げる。


リリィが叫んだ。


「お兄ちゃんやだ!!!!

 いかないで!!」


その声は確かに届いた――が。


光は止まらない。


(いやだ……!

 ぼくのせいで誰か傷つくの……いやだ!!)


内なる声が震える。


その瞬間。


リオンの胸の光は、村全体を包むほどの輝きに膨れ上がった。


三勢力の全員が目を見開く。


「……なんだ……この魔力……」

バルターが呟く。


「神性、第二段階……!?」

光導派の代表が震えた。


「美しい……!」

フェルネスが狂気じみた声を漏らす。


そして――


――世界が“鳴った”。


音にならない音。

重力そのものが歪んだような衝撃。


リオンの叫びが夜空に吸い込まれる。


「やめてっ……!!

 もう……やめてぇぇぇええ!!」


――光が爆ぜた。


眩しい閃光が村を包み込み、

三勢力のすべての者を吹き飛ばした。


光は暴走ではなかった。

しかし、誰にも制御できない“世界の力”そのものだった。


ただ一人、妹リリィだけが無傷でリオンに抱きしめられていた。


リオンは震えながら、涙を零す。


「……ぼく、どうすればいいの……?」


その問いに答えられる者は、まだ誰もいなかった。

『沈静と新たな真実 ― リオンの能力が示すもの』


爆発的な光は村を破壊せず、しかし三勢力を圧倒した。

リオンの“神性の第二段階”が示す、本当の意味とは?

そして、なぜリリィだけが無傷だったのか――。


騎士団・教会・蒼天の塔の三者は、

この出来事をそれぞれ全く別の解釈で読み取り始める。


リオンはただ震える。

だが、その背後で“世界そのもの”が静かに動き始めていた。

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