5歳編・第9話:初めての魔法実験と大爆発
秋の気配が近づく頃、リオンの興味は完全に“魔法”へと向いていた。
川辺で見た光、鑑定眼、そして精霊ピィとの契約――
それらは彼にとって未知の冒険の入り口だった。
ある朝、家の裏庭で彼はこっそり魔法の練習を始める。
父のダリウスは畑へ、母のエルナは洗濯中。
妹のリリィは昼寝をしている。
今がチャンスだ。
(よし……まずは、あの光を出してみよう)
両手を組み、目を閉じる。
水辺で感じたあの温かい流れを思い出す。
胸の奥に意識を集中し、ゆっくりと吐息を漏らす。
「……出ろ、光」
次の瞬間――彼の掌に淡い光が灯った。
「で、できた……!」
ピィが耳をぴょこんと立てて喜びの鳴き声をあげる。
だが、リオンはそこで調子に乗った。
(なら、もう少し強くしてみよう!)
ぐっと力を込めた。
すると光が一瞬にして膨れ上がり――
ドゴォォォォンッ!!
眩しい閃光とともに、庭の地面がえぐれた。
吹き飛ぶリオン。
土煙が立ち込め、鳥たちが一斉に飛び立つ。
「……げほっ、げほっ!」
頭には焦げた草、服は泥だらけ。
ピィは焦げた毛を立てて震えている。
「おにいちゃん!?」
リリィの泣きそうな声。
家から駆け出してくる母エルナ。
そして畑からは父ダリウスが全力疾走してくる。
「リオン!! 何をやった!?」
「ち、ちがうんだ! ちょっと光を出そうとしたら……」
「光!? お前、まさか魔法を――!?」
父母の顔が凍りつく。
5歳で魔法を発動するなど、ありえないことだった。
リオンは必死に弁解するが、説明すればするほど怪しい。
「光が出て、ピィがびっくりして、それでドカーンって!」
「ピィって誰!?」
「え、えっと……その、ウサギ?」
母エルナはため息をつき、頭を抱えた。
「……リオン、危ないことはしないって約束したでしょう?」
「うぅ……ごめんなさい」
父ダリウスは怒りを抑えながら、えぐれた地面を見る。
土の中には、熱で固まった粘土のような層ができていた。
まるで陶器を焼いたかのようだ。
「これは……火の魔法じゃないな。
光でも、土でも、水でもない……何だ、これは」
リオン自身もわからない。
ただ、あの瞬間、心の中に設計図のような“構造”が浮かんだのを覚えている。
まるでプログラムコードのように。
(……いや、まさか。これは創造魔法の一部?)
リオンは黙り込む。
父母に説明できるはずもない。
その日の夜。
家の外でこっそりピィと話す。
「ピィ、さっきの魔法……何だったの?」
ピィはしばらく考えるように耳を動かした。
「ぴ、ぴぃ……(きっと、リオンの“想い”が形になったの)!」
「想い……?」
“作りたい”という意志が、世界に影響を与える。
前世でシステムを作り続けてきた亮介の精神が、新しい世界で“魔法の構築”として顕在化したのだ。
「……そうか。これが、俺の魔法なんだ」
リオンは夜空を見上げた。
そこには無数の星が瞬いている。
そのどれもが、新しい“世界の可能性”を秘めているように思えた。
(創造魔法……きっと、これを使えば村をもっと良くできる)
リオンは静かに拳を握る。
その目には、未来を見据える光が宿っていた。
ただし――
翌朝、裏庭で見事に地面の穴に落ちたのは言うまでもない。
「……またドジったぁぁぁ!!」
ピィ:「ぴぃぃ!(学ばないの!?)」
その声が、秋空の下に響き渡った。
失敗の中から芽生えた創造の力。
それは、リオンにとって“世界を変える第一歩”だった。
しかし、力を持つ者には必ず試練が訪れる。
次回――「秘密の設計図と最初の創造」。
少年は無意識のうちに、未来を設計し始める。




