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1.  姉弟の約束

今回から第一章の開始です。これからもよろしくお願いします。

クリストリンガの北側。焔江山のふもとに一つの邸宅があった。

そこに冬の冷たくも暖かい日差しが差している。

その日差しは昨日の騒動がまるでなかったかのように落ち着いていた。



「うん…。はああああ。ねむ」

龍神優莉はそんな日差しに包まれながら目を覚ました。

うーんと伸びをするとあることに気付いた。


「あっれ。彩葉先輩どこ?消えた?あっれれーー」

優莉は周囲を見回す。

だが、先輩らしき人影はない。

「まじでどこ行っちゃったんだろ?まあウルフに食われてなかったらいいっか。よし二度寝しーっよおっと!はぁ昨日は疲れt……ぎぃやぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!!!」

ふと下を見ると

「すみませんすみませんすみません」

踏んでた。すやすや眠る彩葉を。

優莉は高速で飛びのくとそのまま三回転。

着地と同時に土下座。

と、着地した場所は

「ぐえぇぇぇええええぇぇ!?なんでゲロそのままなん!?マジで!おいおいおいおいおいおいおい?」


ゲロの沼。最悪だ。龍神優莉、一生の不覚!!

「せんぱぁぁぁぁい…。」

「ん?なんだ?」

先輩が眠そうに目を覚ました。

(は?今起きたって何?どゆこと?さっきまで叫んでたのに!それでも起きなかったってのに!なぜ今起きる!寄りにもよってゲロまみれのときに!!!)


優莉が勝手にキレていると彩葉がゆっくりと起き上がってきた。

「あれー?優莉ちゃんゲロまみれじゃん。どしたん?」

「おまえのせいじゃろが」

「ええー?どうして????」


昨日の出来事を本当に忘れているらしく、なんか憎めない。

「もういいや。うちが掃除しますわ。」

「ええ!いいの?ありがとん♪」

のんきだなあ先輩は。

てことで掃除しないとな。ダル


静かに刀を抜く。神経にエネルギーを集中させ、唱える。

「霊龍術 流光 水羅針(みなもらしん)!」

すると、頭上に大きな羅針盤が浮かび上がる。

「解!」

ぱっくりと羅針盤が開き、目にもとまらぬ速さでゲロ吸い込んでいく。

ある程度吸い終わると

「閉!」

少しホッとするとそのまま彩葉を見る。

感動したように彩葉は言った。

「あの二年間の間にいろんなことができるようになったんやな。ビビったよ。これからが楽しみだ。」

それを聞いて優莉は薄く微笑むと戸口の方に体を向けた。


「ありがとうございます。このままずっといるわけにもいかないんで捨ててきますね。」

「ありがと。」

戸口の方へ歩き出す。そのまま扉を開けると寒気と新鮮な空気が流れ込んできた。

「クリストリンガの空気ってっこんなにうまかったんだなあ」

すっかり忘れてしまっていたことを思い出し感動を覚える。

溢れ出る涙をこらえながらゴミ捨て場に向かう。


ゴミ捨て場につくと涙の流出は限界を迎えていた。

「はよ捨てないと…。げんか…い……。うっ。ううっ…。」

嗚咽を漏らしながら水羅針を解き放つ。

「みなも…ら…しん。放!」

羅針盤が開き始める。



びゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんん!!

「______________________!?」

弓がきしむ音と矢が空を切る音。

敵襲!

すぐさま後ろに跳ね退く。と、さっきまでいた場所に太い矢が突き刺さり人影がおりてきた。

(あっ、敵襲じゃない。神宮寺せんぱ)

気付いたときには遅かった

ぶっしゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!


「あ。」

水羅針が開ききった。ゲロが大噴出。しかも人影の上に。


人影は翡翠色の目を大きく見開く。

優莉は叫んだ。

「すみませぇええええぇぇええぇぇぇぇぇぇえぇぇんんんんん!!!!!!!!!!!!」

次は早朝のクリストリンガに優莉の絶叫が響き渡った。



   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「マジで何なんだ。確実に人間だろ。」

亜麻音は声を荒げる。

「そうお気になさらずに」

二本角がなだめる。

「うるさい!」

亜麻音が切れる。

「スミマセン…。」

他の鬼が去っていく。




「ったっくもう。龍神優莉。待っとけよ。楽しませていただこう。君と戦う日を。」

すると部下の鬼が走ってきた。

「亜麻音様!!」

「なんだ霧柳。」

霧柳と呼ばれた鬼は早口でまくし立てる。

「人間どもの住処を発見いたしました!!この場所から巳の方角に3キロほど進んだ場所に大きな宮殿のような邸宅があります。」

「なんと!住民は確認できたか?」

「はい。十代半ばくらいの、和服に長い黒髪、右目を眼帯で覆った少女が今朝邸宅から出てきたところを確認しました。」

(和服に黒髪に眼帯…。龍神優莉の可能性が高いな。チャンスだ。)

「今日の夕暮れそこに案内しろ。奇襲を仕掛ける。」

「兵はいくらほど?」

「兵?いらぬ。私一人で行く。」

霧柳は驚いたような顔をした。

「流石にそれは!万が一のことがあれば!!」

亜麻音はふっと微笑んだ。

「お前は優しいな。私はその覚悟だ。私が進軍したのち、剣鬼の王の座はお前に託す。」

霧柳は亜麻音の気持ちを感じ取ったのか真剣な顔つきになる。

「承知いたしました。謹んでお受けいたします。何事があろうとも亜麻音様のことを忘れず精進してまいります。」

亜麻音は笑うと言った。

「期待しているよ。わが弟よ。」

剣城霧柳は涙をためながら敬礼した。

剣城亜麻音も敬礼した。


鬼の姉弟は誓い合う。

またここで会おうと。

生きてまた笑いあおうと。

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