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4. 焔江山で

かしゃんことこと…


「先輩お待たせしました」

私は先輩と自分の前に紅茶(ポーション)の入ったカップを置く。

先輩が姿勢を正し真剣にカップの中身を見つめる。

「なんだこれは。普通の紅茶(ポーション)じゃないよな?」

先輩がいぶかしむ。

「これはクリストリンガでしか生産されない特別な紅茶、焔龍茶(フレアフォース)です。」

焔龍茶(フレアフォース)??」

いかにも不思議そうな顔をする。

「はい。先ほども言いましたがフレアフォースはクリストリンガ、特に北側の山間部でしか生産されません。北部に鎮座する焔江山の洞窟に住む炎龍(フレアドラゴン)の鱗粉を受けた茶葉のみから作られ、高い回復能力と筋力、瞬発能力の爆発的向上が見られる最高級のポーションです。」

そう言いながら黄金に輝くフレアフォースを見つめる。


すると先輩はうっとりとしたため息を漏らす。

「はあぁ…。炎龍ねえ…。」

私はこのため息を知っている。これはうっとりとしているんじゃなくて

「我の撲滅対象No.25炎龍(フレアドラゴン) 吐き出す黄金の炎は10000℃を超え、翼を動かしたときに零れ落ちる鱗粉はステータスの爆増に関与し注目度が高い。鱗は強靭な鎧や盾に用いられる。密輸が激しく常に監察官が目を光らせている。また、鱗で作られた鎧は耐久性に優れ約2000℃もの高温に」

急に先輩が狂ったように喋りだした。


敵と完全にみなし、脳内の情報があふれ出ている危険な状態。

オーバーヒート状態だ。このままじゃ、爆は…

ぷしゅーーーーーーーーーーーーーー

(ん?なんの音だ…………。っ!?)

「うぐにゃ!あひゃ!ふれあどらごんはそのたいねつせいかうにゅむ!こうてつにょしゅごしんとぉよばれちょるんだじょい!むにゃは!」


「先輩がぁぁあぁああ!壊れたぁあああぁあぁぁあぁあ!!!」

壊れました先輩が。私の大切な彩葉が。


「うむにゅっぺ!!」

先輩が勢いよくフレアフォースのカップを鷲掴みにし、口の中へ一気に流し込む。

「うびゃあああ!ごくごくごくkkkk。………………。!?うっぷ…。うげええええええええ」

「先輩がぁぁぁあぁあぁぁあぁ!!!吐いたぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!!」

言い忘れてた。

フレアフォースは世界最高級かつ世界一貴重なポーションだが、その味は超絶まずい。

だが、ゆっくり飲む分には甘く感じるという珍しい飲み物だ。

(急いで流し込むからだよ…ほんとにちゃんとしてぇ泣)


「先輩しっかりしてください!!!!!!!」

ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん

先輩の肩を高速でゆする。

「うぐっなんとかなった……」

先輩が正気を取り戻す。


「ふう良かったです!!!!!!」

安心した優莉はさらに肩をゆする。

ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん!!!!

「うわっ!あ、ちょっとゆすりすg…。うげぇえええええぇぇぇぇえぇええ」

「うわああああああ!!せんぱぁぁぁぁぁぁあぁい!!!!!」


夜のクリストリンガに優莉の発狂が響き渡った。


  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なんだ?今の叫び声は。その前によくわからん音も聞こえたが…。」

焔江山の中腹あたりに簡易的なテントが一つ。

そこから鎧がたてる音と複数の話し声が聞こえる。

しかし様子が変だった。

テントの中では一人の女性を囲むように五人の男が座っている。

どの男も頑丈そうな鎧を身にまとい、太く長い剣を手にしている。

しかし、一つ我らと違う点があった。どの者にもなぜか角が生えていた。太く立派で、本数はバラバラ。

よくよく見ると口元からは鋭い犬歯がのぞき、爪も異様に長い。


鬼だ。


その中でも特に強い一族、【剣鬼】である。

女性の正面に座っている二本角の者が口を開いた。

「これはこれは亜麻音様。今ほどの声は獣の唸りでしょう。このような場所に人間どもの住まう場があるとは思いませぬ。お気になさらずに。」

亜麻音という女性は顔をしかめた。

「獣の唸りとは思えんな。そして、人間の可能性は否定してはならぬ。あいつらは何をしでかすか想像がつかない。」

すると次は一本角の者が声高らかに笑った。

「何をおっしゃられるのです亜麻音様。人間どもに何ができると?あの弱き一族に」

亜麻音が声を荒げていった。

「人間を甘く見てはならない。忘れたのか?二か月前を。アウルギアルを龍神とやらが率いる人間どもが討伐した。怪異の王は人間に負けたんだ。お前らはアウルギアルより強かったか?軽口を叩くな。」

全員が沈黙した。的を射た発言だった。

亜麻音は続ける。

「警戒態勢をとる。ここしばらくは周辺区域に特殊部隊を配置する。明け方に指令を出せ。以上だ。下がってよい。明朝、また招集する。」

亜麻音が後ろを向くと五人の男はそそのくさに退散した。

配下の足音が消え周りが完全に静寂に包まれた頃、亜麻音はひとり呟いた。


「龍神優莉。アウルギアルを破った戦士。お前がどんな奴か知らないが必ずどこかで会うだろう。その時は容赦はしない。鬼と人間、どちらが上か試そうではないか。」

亜麻音は夜空を見上げる。

漆黒の闇に輝く大きな満月。

裏で大きなことが動いている。

それを感じさせない穏やかな満月だった。


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