1.奇人ギルマス アントニオとの決闘
「は…はっはっはっっ!!まだ追ってきてるのか!しぶてえ奴らだ!」
龍神優莉は走っていた。草原地帯の真ん中を走っていた。
…大群に追われながら。
ざっと数えて総勢200体のゴブリン。
「短足なくせに微妙にはえぇのうぜえ…。」
体力はまだ持つが精神は限界だ。
「もう我慢なんねえ!!霊龍術 流光 風雪炎舞!!」
爆発からのオーバーヒートからのオーバーキル☆
腰から勢いよく抜いた刀は炎をまとった。そのままゴブリンどもに向かって振りかざすと、大量の火の粉を振りまきながらドラゴンの形を成し輩共の中心部へ一直線。
(はい、即壊滅~~ ざっこぉ!)
ゴブリン、二秒で全滅。
「ゴブリンってこんなに雑魚かったっけ?」
闇の帝王抹殺に成功した最強の剣士にはゴブリンなど虫以下。
「風雪炎舞で倒せるとはな。魔王城付近の雑魚でも風雪炎舞二回使わんと死ななかったぞ?にしてもほんとにクリストリンガの怪物は弱いな。」
ここはクリストリンガ。智と才を持つものが集まる都。
龍神優莉の故郷だ。
「はあああ。魔王倒したのに怪物増えすぎだろぉぉぉぉ…。倒した意味なかったんじゃね?」
実は一ヶ月程前。
龍神優莉は仲間たちとともに、この世を支配していた闇の帝王アウルギアルを滅ぼした。
にもかかわらず、アウルギアルの支配を受けなくなったことで他の怪物らの行動が活発的になり都市に侵入するようになったのだ。それを受け、優莉は各都市からの援助申請を受ける度に怪物を討伐するために飛び回る日々。
「一人じゃ無理だああああ。どーしよ…。」
ドンチャカドンドンカッ!ドンドンジャンカンドコチャカパンパン!ドンカンチャカドン……
どこからか行進のリズムのようなものが聞こえてくる…。
「なんじゃ?うるさいな。太鼓?」
そのつぶやきを聞きつけたのか、太鼓を叩いていた若い男がこちらを向いた。
「我らはランキング79位!ギルド:カーニバルだ!!そこのお方!我らと共に行進曲を奏でようではないか!」
「結構だ。君たちと戯れている時間はない。」
「なんだと!カーニバルは戯れの場ではない!皆ともに音楽を奏でることで心からだ共に一体化し、さらなる結束を…ん?どうしたルナ?え、何故それを先に言わない!?」
ルナと呼ばれた女は言った。
「アントニオが勝手にしゃべりだすから!相手をちゃんと見てからにしなさい!!この方に失礼極まりないことを!!!!!」
優莉は尋ねた。
「君らはさっきから何を言っているのだ?」
すると、ルナが勢い良く頭を下げた。
「本当にすみません!こいつが無礼なことを!!」
「謝らなくていい。顔を上げ…!?…ょ。」
優莉は驚いた。ルナと呼ばれた女は…。
「あの、すみません。何かあなた様にお詫びをさせていただきたいのですが…。」
「あぁ。なら我の宅にいらっしゃ…んっんん!来い。」
「わかりました。ありがたいです!」
「おい。あんな」
するとアントニオが口をはさんできた。
「おい。あんな、ルナは俺のだ。勝手に奪うんじゃねえ。糞男。」
「「………。」」
「おい、黙るなよ急に。」
「何言ってんの?我は女だが?」
「はあ?何を言って…。ん?お前もしかして、その着物と髪型・刀…。世界最強の剣士 龍神優莉か!?」
「だからそうだって言ってんじゃん…。」
ルナが完全に呆れる。
「あんさ、アントニオあんたほんとに人の話聞かないし、ずっと太鼓叩いててギルマスの仕事も全部私に押し付けて。あの順位も貢献度もランクも!全部私一人のもの。あんたギルマスの資格ないよ?言っとくけどね私甘くないから。私脱退するわ。あんたに会いたくないし。じゃあね。行きましょ!優莉さん!!」
「あっあぁ。こっちだ。」
「おい!ちょっと待て!ルナ!!行くな!!!マイハニー!!!!あぁ!?ギルドの順位が!ランクが!降落していく…!あぁ!待ってくれ!!すまない!!!次はちゃんとするから!!!!行かないでくれえ!!!!!!!」
「きっしょ」
(アントニオかわいそ。にしても、)
優莉はルナを見る。
(なんでここに彩葉先輩が……?)




