46.叙爵
更新が少しあいてしまい、申し訳ございませんでした。
そして、今回ちょっと少なめです…。
「……こっちでも、貴族になっちゃいました」
「よかったな」
「おめでとう、エディスさん。息子のお嫁さんが叙爵の栄誉を賜るなんて、私も誇らしいわ。もちろん、夫もよ。あの場にいたのはわかって? もうにっこにこだったでしょう?」
朝早くからマクニール侯爵邸へ赴き、エディスは侍女たちに身支度を整えてもらった。
ヒューも言っていたとおり、侯爵夫人は以前の夜会でドレスを仕立てた際、他のドレスやワンピースなどもたくさん仕立てていた。その中には、皇帝に謁見する際に身につけるにふさわしい伝統的なドレスも含まれていた。
デザインは少々古風ではあるものの、その分生地に凝っており、光が当たると虹色の光沢を放ち、肌触りも格別な極上のもの。とにかく贅を尽くした、クラシックドレスであった。
由緒正しい結髪、清楚な化粧、完璧な装いで、エディスは皇帝や他のお偉方との謁見に向かった。
間に通される前も後も、油断すると手足が震えてしまうくらい緊張したが、その度にエディスは隣を見上げる。
エディスの右側には、目も眩むほどの麗しい姿でヒューが立っていて、頼もしいばかりだった。彼は時折エディスと視線を合わせ、大丈夫だと微笑む。どこから見ても、仲睦まじい婚約者同士である。
そんな二人に、此度の件について褒賞が与えられることが伝えられた。
ヒューは、なんと陞爵され伯爵に。そしてエディスは、叙爵され、男爵になった。今回の件は、国にとってそれほど重要であり、また二人の働きが認められたということだ。
身分を捨て、マドック帝国に出奔してきたエディスだが、まさか帝国で叙爵されるとは思わなかった。
(帝国での爵位は、ロランドよりも一段階高いのよね……。ロランドで爵位を得るのと帝国とでは、その価値が違う。その分、滅多なことで叙爵や陞爵もされないのに……信じられない!)
これだけでも驚きだが、エディスにとって更に上があった。それは、ビショップ侯爵から明かされた事実であった。
<エディス嬢は魔力なしとの話でしたが、厳密にはそうではありません。魔力とはまた違った力をあなたは持っているのです>
魔力とは違う力──それは、自らの意思で他者の魔力を増幅、減衰することができるというものだった。
<古い文献に記されているその力は、希少も希少、大昔に所持していた人物がいたというくらいで、ここ百年は所持者がいませんでした。もしかすると、もっとかもしれません。なにせ、遡れるまで遡ってみても、記録上に該当する人物はいませんでしたから。エディス嬢の力は、それほどのものなのです>
侯爵の言葉にエディスは驚くばかりだが、ヒューは納得しているようだった。
ビショップ侯爵が以前、神域の森で魔法を発動させた時、いつも以上の力を発揮できたことを不思議に思い、彼はそれを調べたそうだ。そして、今回の結論に至ったらしい。
エディスとしては、そんな力を発動させていたとは思いもよらない。しかし、魔力のない自分が何とか力になりたい、助けたいと強く祈ったことはよく覚えている。
それが、本当に叶っていたとは。
また、この力を持つ者は、神獣に愛されると文献には記されてあったそうだ。
神獣──それはきっと、魔石獣のことを指すのだろう。
エディスは、何故か最初から彼らに好かれていた。魔石番は魔石獣に認められてこそだが、最初から全員に好かれるというのは、やはり珍しいことだったらしい。