42-2.ラータを探せ!(2)
森に戻ると、ヒューは事の次第をメイと魔石獣たちに説明する。すると、彼らはワイワイと騒ぎだした。
『オレサマが行く! オレサマがエディスを乗せるからな!』
『いや、オレの方が適役だろう。ランディはエディスを振り落としかねない』
『そんなこと、オレサマがするわけないだろう!』
『え~? ランディならやっちゃいそ~。あ、ワタシも行くわよ。空からラータを探すわ』
『ねぇ、アタシも行きたい。連れていって』
案の定、全員が行くと言ってきかない。
彼らが何を言っているのかわからないが、メイはその主張を把握していた。
「ヒューさん、皆を説得するのは無理だと思います。一緒に連れていってあげてください」
「メイ……」
「こちらのことは任せてください。私はここで、ラータの無事を祈っています。……それと、皆!」
魔石獣たちがメイに注目する。
「不満もあるかもしれないけど、喧嘩しないよう先に言っておくわね。エディスは一人で乗れないから、ヒューさんと一緒です。安全のために、これは絶対よ。で、ヒューさんとエディスを乗せるのは……ランディ。ウォルフはランディをフォローしてあげて。ドロシーは空からラータを探しながら追いかけて。イライジャは、ウォルフかドロシーに連れていってもらってちょうだい」
『やったぁ! オレサマがエディスを乗せるんだ!』
『うううう……仕方ない。わかった』
『わかったわぁ! メイ、すぐにラータを連れて帰ってくるからね~』
『アタシは……誰に連れていってもらおうかしら……』
キョロキョロしているイライジャを見て、ヒューが声をかける。
「イライジャ、俺に巻き付いて……」
「イライジャ!」
ヒューの言葉を遮り、エディスが彼女を呼んだ。イライジャがエディスを見る。
『エディス?』
「イライジャ、私と一緒に行きましょう」
『え!?』
驚いたのはイライジャだけではない。ランディもウォルフもドロシーも、そしてヒューまでもが目を丸くした。メイなど、信じられないというように、何度もまばたきしている。
『なにを……』
「私、もう克服してると思うの。だって、イライジャはいつだって私を気遣ってくれていたもの。これまで遭遇した蛇とはまったく違う存在だって、私はもう知ってる」
『エディス……』
「イライジャが嫌じゃなかったら、だけど……」
エディスは屈んで、そっと腕を伸ばした。
イライジャはしばらく迷っていたようだが、やがて、おずおずとその腕に向かって動き出した。
『いい? 行くわよ』
「ええ。来て」
そう言いつつも、若干の不安はあった。それでも、触れ合わなければトラウマは克服できない。イライジャと他の蛇とは違うとわかっているのだから、大丈夫。それを信じる。
エディスは、にっこりと笑った。
それに安心したように、イライジャがエディスの腕めがけてジャンプし、するりと巻き付く。
『エディス、平気?』
「……ええ、平気よ」
『本当に?』
「イライジャって、思った以上にすべすべしてるのね。それに、ひんやりしていて気持ちいいかも」
エディスの言葉を聞いて、皆が笑った。
エディスとイライジャとの距離が、ついにゼロに。それを一番喜んでいたのは、何を隠そうイライジャだった。
『そうよ! アタシの体はすべすべなんだから! やっと知れてよかったわね!』
「ほんとね。もっと早く触れたらよかったわ」
『ふふん!』
イライジャの喜びように、エディスまで嬉しくなってくる。
実際、思ったよりも全然怖くなかった。それが、エディスにとっても感動だった。
『イライジャ! 調子に乗るな! エディス、エディス、早くオレサマに乗れ!』
ランディがエディスの周りをぐるぐると回る。
ヒューがそれを押さえ、伏せさせた。そして、ランディに轡を装着し、エディスの手を取る。
「エディスは俺の前に」
「はい」
ヒューがランディに跨ると、エディスはその前に同じように跨る。
手綱はヒューが持っているが、自分はどこを持てばいいのか?
エディスが見上げると、ヒューは手綱を持たない手で彼女を抱き寄せた。
「ヒュー!?」
「魔法で保護するが、吹き飛ばされないようにな」
「え?」
「ランディ、皆、行くぞ!」
『おおおおおーーーーっ!』
その瞬間、エディスは風になった。
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