表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/77

35-2.魔石鉱山枯渇の謎(2)

 デイルが他国へ移住するためには、魔導士全員の承認を得た次期筆頭を決め、王の許しを得る必要がある。相当高いハードルだ。

 仮に、これが帝国なら、魔導士の数が多いので実現は可能だろう。だが、元々魔導士の少ないロランド王国では不可能だ。次期筆頭が決まっても、王が承認しない。


「あと、シートン男爵ですが、相変わらず引きこもったままですね。ですが、王都くらいならどこへでも転移可能とのことで、必ずしも邸に閉じこもっているとは言い難いです」

「なるほど……。だが、買い物なら使用人に頼めばいいし、出かけるとなると、親しい者のところへと考えられるが、彼と仲のよい友人、もしくは恋人はいるのだろうか」

「魔導士にはいないようです。というか、魔導士は皆干渉し合わずのようで……。魔導士以外の友人、恋人に関しては、現在調べています」

「引き続き、よろしく頼む」

「かしこまりました」


 二人の会話を聞きながら、エディスはなんとなく視察のことを思い出していた。


(そういえば、シートン男爵とロニーは年齢が近い感じだったわよね……。まぁ、シートン男爵は勤勉だし、ロニーとは合わなそうだけど……)


 しかし、どこか引っかかる。


(なんだろう? どうして気になるの? シートン男爵は、魔石獣に強い関心を示していた。筆頭に魔道具を送ってもらうくらい、魔石獣と会話をしたがっていた。一方、ロニーは魔石獣に怯えていたくらいだわ。でも、あの時……)


 ヒューが、魔石獣を人の意のままになどできないという話をした時。


(あの顔は、何かを企んでいるかのようだった)


 誰も自分の方など見ていないと思ったのだろう。ロニーは、完全に油断していた。

 あの時の彼の表情は、とても貴族とは思えないほど、エディスの目には卑しく映ったのだ。


「エディス?」

「え? あ、ごめんなさい」

「何か気になることでもあるのか?」


 エリオットとヒューに聞かれ、エディスは慌てる。

 彼らのことは気にはなるが、二人に話せる段階ではない。ただなんとなくもやもやするだけで、上手く言葉にできないのだ。


(どうしよう! 何とか誤魔化さないと!)


 その時、ふと思いついた。


「あの! お兄様、クルーズ子爵家の魔石鉱山の一つが枯渇しそうって話は、その後どうなったの?」


 その言葉に、エリオットが瞳を伏せる。これだけで、答えがわかってしまった。


「完全に枯渇した。それだけじゃなく、別の鉱山の採掘量も目に見えて減ってきているんだ」

「そんな……」

「枯渇した鉱山と同じく、減少具合が急激すぎる」


 これは、クルーズ子爵家所有の鉱山だけではない。他家での鉱山も同様だった。

 この動きは止まらず、増え続けている。このままでは、ロランド王国の魔石鉱山は、一つ残らず枯渇してしまう。


「エリオット殿、一度、枯渇した鉱山を見せてもらえないだろうか」

「お兄様、私も見てみたいわ」


 明らかにおかしな現象だ。何か不可思議な力が働いているとしか思えない。

 ヒューとエディスの申し出に、エリオットはしばらく逡巡する。が、最終的には首を縦に振った。


「わかった。ヒュー様、子爵領は王都から近いとはいえ、まる一日ほどは移動に時間がかかります。それでも構いませんか?」

「うちの馬車を使えば、半日程度に短縮できると思う」


 確かに、あの馬たちならできるだろう。なんなら、もっと短縮できるのではないだろうか。

 ということで、明日の早朝、エリオットの案内でエディスとヒューはクルーズ子爵領の魔石鉱山に向かうことになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ