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18-2.ヨランダとリビー(2)

「ご用でしょうか」

「用があるから呼んだのよ! 第二皇子と第三皇子に婚約者はいるの? 教えなさい!」

「……はい。お二人ともに、仲睦まじい婚約者様がいらっしゃいます」


 侍女は、心持ち仲睦まじいを強調して答えたが、リビーには響いていないようだった。


「公爵令嬢とか、侯爵令嬢かしら? 高位の方よね?」


 ぶしつけである。だが、ここははっきりと言っておかねばなるまい。

 侍女は、声を硬くして答えた。


「ニコラス第二皇子殿下のご婚約者様は、エイベル侯爵令嬢です。才色兼備で素晴らしいご令嬢です。そして、ナイジェル第三皇子殿下は、マディソン王国の王女殿下と……」

「他国の王女! そう、そうなの!」


 侍女の話をぶった切り、リビーはほくそ笑む。


(他国の王女なら、付け入る隙があるわね。滅多に会えないんですもの。というか、一度も会ったことがないかもしれない。第二皇子は、自国の侯爵令嬢でちょっと面倒かもしれないわね……。まぁ、二人の顔を見てからでないと判断できないけど、第三皇子は狙えるかも。私ほどの女なら、大陸一の国の妃に迎えられてもおかしくないわ。いえ、そうでなくちゃいけないのよ!)


 普通なら、弱小国の子爵令嬢が帝国の皇族と顔を合わせることなど叶うはずもない。が、使節団の随行者としてなら、目通りが叶う。

 歓迎の夜会は皇太子の主催であるし、他の皇子たちも顔を出すだろう。そこを狙う。大したことをする必要はない。顔を合わせ、ダンスの一つでもすれば──。

 ロランド王国で、リビーに靡かない令息などいなかった。姉の婚約者も、瞬く間にリビーの虜になったのだから。

 男は皆、自分を愛し傅く。リビーは本気でそう思っていた。そして悪いことに、母であるヨランダもまた、それを信じていたのだった。


「あんたが私の侍女よね?」


 リビーが横柄に問う。


「はい」

「そう。なら、明日の夜会では、私がもっとも輝くよう力を尽くしなさい。私が持参したドレスと宝石は申し分ないものよ。これで霞むようなら、あんたの腕が悪いってこと。腕の悪い侍女なんていらないわ。もしできなかったら、あんたはクビよ。いいわね?」


 侍女とはいえ、他国の人間である。しかも、国の力関係で言えば相当上である。勝手にクビになどできるはずがない。それに、侍女とはいえ、彼女もまた貴族だ。

 二人の侍女はともに帝国の子爵令嬢で、ロランド王国では伯爵令嬢に該当する。言ってみれば、リビーよりも立場は上なのである。

 だが、彼女たちは今、侍女としてここにいる。ここまで尊大な態度に出られるとは思ってもみなかったが、渦巻く負の気持ちを抑え込むしかない。


「かしこまりました」


 静かに頭を下げる侍女に、リビーは満足する。そして、再びヨランダと話し始めた。

 二人の話は、とても聞くに堪えない。

 侍女二人は、こっそりと重い溜息をついた。

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