13-2.ロランド王国の異変(2)
「一ヶ月後、ロランドの使節団が来る。魔石獣について情報を得たいということだから、いろいろ教えてやってくれ」
「……教えても、どうにもならない可能性が高いですが」
なにせ、魔石獣を見つけて且つ彼らに認められなければならない。そうしないと、飼育することは不可能だ。
魔石獣の生息場所は、特に決まっていない。どこにでもいると言えるし、どこにもいないとも言える。出会いは運任せ。だから、マドックでも現在に至るまでは、かなり長い年月を要したのだ。
なのに、いよいよ困った段階になってから動き出すとは。何もしないよりマシだが、その程度である。
「あの国は、この件についてどうも軽く考えているようだ。魔石獣は簡単に見つかるし、すぐに認められると。魔石獣は、幼獣であろうが成獣であろうが魔石を生むし、見つかりさえすれば何とでもなると思っているのだろう」
「楽天的でいいですね。うちで現実を知って、絶望するのでは?」
「それは、こちらの知ったことではない」
そのとおりである。そこまでこちらが考えてやる必要などない。
「メンバーは?」
「気の毒なことに、クルーズ子爵が入っている。かの家は、かなりの量の魔石を国に納めており、重用されているようだからな。伯爵に陞爵されるのも間近だという話だぞ」
名を捨てるくらいだから、エディスは実家の人間と会いたくないはずだ。もしかすると、ここにいることさえ知らせていないかもしれない。
ヒューは、しばし考え込む。
「これは、エディスの意向を確認する必要がありますね」
「だが、彼女が会いたくないと言っても会わざるをえない。使節団への説明に、お前一人では厳しいだろう。補佐が必要だ。メイもしっかりしているが、平民だと侮られるかもしれない。エディスなら貴族として立ち回れるし、対応もできる」
「ですが……」
「それに、歓迎の夜会も開かれる。今回はお前も逃げられない、というかメインだからな。当然強制参加だ。ということは、パートナーが必要になる。……お前の隣を虎視眈々と狙うご令嬢方の中から選ぶか?」
ヒューは、即座に首を横に振る。
夜会は嫌いだ。元々、華やかな場に興味はない。だが嫌いになったのは、間違いなく肉食獣のような貴族令嬢たちのせいだった。
参加すると、どんなに目立たないように隠れていようがすぐに見つけ出され、耳障りな声であれこれ話しかけられる。強引な令嬢だと、腕にしがみついてきたり、わざと胸を押し付けてきたりもする。こういった仕草を歓迎する令息もいるだろうが、ヒューは無理だ。寒気がする。
「……絶対に嫌です」
「なら、誰にする?」
エセルバートが再びニヤニヤ笑いになった。
こんな風に言われると、答えは一つしかない。ヒューは、ぐったりとしながら答えた。
「……エディスに頭を下げます」
その答えに、エセルバートは満足そうに首肯した。
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