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13.ロランド王国の異変

「思い出し笑いか? 珍しいな」


 その声に、ハッと我に返る。

 ヒューは慌てて表情を引き締め、平静を装う。が、エセルバートはニヤニヤと笑っていた。

 初めて魔石獣たちと意思疎通ができたエディスのはしゃぎようを思い出していたら、つい気が緩んでしまったようだ。


「どうやら、エディスを気に入っているみたいだな」

「……いい部下が入って、よかったと思っています」

「まぁ、今のところはそういうことにしておこう」


 エセルバートの言葉に少々ムッとするが、ここでまた反論してもいいように言い返されてしまうのはわかっている。

 ヒューはおとなしく引き下がった。それに、気に入っているというのもあながち間違いではない。


「魔石番については問題なさそうで結構。で、話は変わるのだが……」


 エセルバートがこれまでとは表情を一変させ、深刻になる。そして、手元の書類を確認しながらヒューに告げた。


「エディスの祖国、ロランド王国でちょっとした異変が起こっている」

「異変、ですか?」


 ロランド王国は隣国だ。その異変がこちら側にも起こる可能性がある。

 ヒューは、眉間に皺を寄せた。


「ロランドは我が国とは違い、魔石鉱山を多数所有しているのは知っているな」

「はい。エディスの実家のクルーズ子爵家も、いくつか所有しているはずですが」

「そうだな。だが、ここ最近掘り出される魔石がどんどん減っている。枯渇する鉱山も増えているようだ」

「鉱山はいつか枯渇するものですが、異変というほど多い……のですね?」

「そのとおり」


 ヒューはエセルバートから書類を受け取り、目を通す。そこには、ロランド王国の魔石発掘量の推移が記されていた。

 マドック帝国では周辺各国に諜報部員を派遣し、様々な情報を取得している。これは、ロランド王国に派遣されている者からの報告書だろう。


「確かにおかしいですね。少しずつ減るならわかりますが、ここまで急激に減るのは通常ありえない。枯渇する鉱山も多すぎます」

「国の中枢は今、大変なことになっている。慌てて対策を立てているそうだが、これまで鉱山に頼りきりで、今後の魔石の確保をどうするか考えあぐねているらしい」

「これまでは、考える必要がないほど取れていましたからね」

「とはいえ、将来的にこうなることはわかっていたはずだ。もっと早く動くべきだったな。これほど切羽詰まるまで放っておくなど、愚の骨頂だ」


 エセルバートはなかなかに手厳しい。しかし、国の存亡に関わることなのだから、そう言われても仕方がない。

 仮に魔石が確保できなくなれば、生活水準が百年は衰退する。今更その状況になっては、皆生きていけないだろう。


「原因はわかっているのですか?」

「いや、まだわからないそうだ。原因究明も必要だが、まずは魔石の確保が優先だろう。……ということで、面倒な要請を受けた」

「お断りします、と言いたいところですが、そうもいきませんね。上はどうでもいいが、国民が気の毒です」

「同感だ」


 エセルバートは軽く吐息し、要請内容を伝えた。

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