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第二章 第十九話 またもや、ばんざいやまのお友だちみんなで、ばんざい! 

お付き合いいただきありがとうございました。

これで最終回です。でも皆さまのお声があれば、私に何か降りてくれば、

あるいはまた……なんてことも、あるかもしれません。


では、どうぞ。

 わいわい、がやがや。

 わいわい、がやがや。

 ばんざいやまのお友だちみんなが、おにババ食堂のまえにあつまっています。

 きのうの今日なのに、みんな笑顔です。


 みんなの視線のさきにあるものは、石になったお友だちです。

 お友だちが石になったのですから、だれかの手によってつくられた石像よりも、それはほんとうのお友だちみたいです。

 ばんざいやまのお友だちのなかでいちばんじょうずに石像をつくる『職人』さんも、すなおに負けをみとめました。

 元がお友だちなのだから、あたりまえですよね。


 かわぞう、ごんた、ごんたのお父さんとお母さん。

 はなのお父さんとお母さん。

 それから、ももとがぶともんもとほろろ。

 語り部さま。

 そして、たぬまる。


 デューの頭のへびにかまれたときのままで、石になっています。

 みんな、お友だちにじろじろと見られていることをわかっているのでしょうか?


 そこにやってきたのはてんぐさまです。

 そばにじゅえるとじゅらすと語り部さまもいます。

 みんなが気づくとともに話し声もちいさくなって、さいごにはしんとしずかになりました。

 ひとつせきばらいをしてから、てんぐさまがいいました。


「やあやあみんな、仕事もほっぽって集まってくれてありがとう」


 みんな笑いました。

 てんぐさまは続けました。


「これから石になったお友だちを元に戻します。そのやくをひきうけてくれた、じゅえるにはくしゅ」


 みんな拍手をしました。

 口笛をふくひともいました。

 またてんぐさまが続けました。


「じゅえるが手にもっているもの。このふしぎな水。これがお友だちを石からひとに戻すふしぎ水なのです」


 そのまんまじゃないかーとやじがとんで、またみんな笑いました。

 笑われたてんぐさまも笑顔です。


「作り方はおおきな声でいうものではないので、いまはいいません。でも、このふしぎ水をかけると、あらふしぎ、石になったお友だちが元通りになるのです。では、じゅえる、どうぞ」


 みんながじゅえるに注目しました。

 じゅえるが手にしているのは『丸底フラスコ』という、手のひらよりもおおきいビンのようなものです。

 そこに『スポイト』をいれてふしぎ水をすいとって、ぽたりぽたりとかわぞうの頭に落としました。

 みんな息をのんで見守っています。


 一秒、二秒、三秒。まだへんかはありません。


 てんぐさまは心のなかで、

 あれあれ?

 と思いました。

 デューからうけとったお友だちを石から戻す魔法の液体を、いわれたとおりに水でうすめたのに、なんで元に戻らないんだ?

 しかも、水もただの水じゃなくて、いずみの水なのに。


 かわぞうのお父さんとお母さんも、なんだか不安になってきました。

 しかし、四秒、五秒と時間がすすむと、かわぞうは頭からすこしずつ、石から戻っていったのです。

 みんなおどろいて、ざわざわとしました。

 さいしょは少しずつだったのですが、ぴかっとひかったと思ったつぎのしゅんかんには、かわぞうは元どおりになっていました。

 これにはあつまったお友だちみんなが大歓声をあげました。

 元に戻ったかわぞうがびっくりするくらいにおおきな声で。


 じゅえるはつぎつぎと、ふしぎ水を石になったお友だちの頭にかけていきました。

 そうすると、みんな石から元のお友だちに戻っていったのです。

 かわぞうのお父さんとお母さんは、かけよって、かわぞうにだきつきました。

 笑いながら泣いています。


 ごんたとごんたのお父さん、お母さんは事態を飲みこめずにいます。

 三人にとっては夕方にデューにおそわれた、と思ったら、昼のおにババ食堂のまえにいる、しかもばんざいやまのお友だちがみんな集まってこっちを見ている!

 という状況なのです。

 理解ができないのもしかたがありませんね。


 ももとがぶともんもとほろろも、はっと身構えたのですが、デューのかわりにお友だちみんながいて驚いています。

 語り部さまは、石から戻っても動じることはありませんでした。


 そして、はなのお父さんとお母さん、たぬまるにも、ふしぎ水がかけられました。

 ぴかっとひかって石から元に戻ったのです。


 はなは走りだしたのですが、ぽこみとぶつかって吹きとばされてしまいました。

 ぽこみも転んだのですが、すぐに立ちあがって、ごめんなさいとはなを立たせると、なにごともなかったかのようにたぬまるのそばに走っていっていいました。


「たぬまるくん。ああ、私、ほんとうに心配で。でも、よかった。どこか痛いとか、へんなところとか、ない?」

「え、うん。いまのところは、大丈夫」

 そのいきおいにあっけにとられたたぬまるでしたが、つぎには、それに輪がかかることになります。

「ちょっと待ってよ、ぽこみちゃん。たぬまるをいちばんに心配するのはわたしよ」

 はなが、石から戻ったお父さんとお母さんをほっぽって、たぬまるを心配しだしたのです。


「たぬまるはわたしを助けて、わたしの代わりに石になったんだから。わたしがいちばんに心配しなきゃすじがとおらないのよ」

「そうなの? でもわたしはたぬまるくんが好きでばんざいやまにきたんだから、わたしだっていちばんに心配する権利は、あるんじゃない?」


 たしかにそのとおりだとはなは思いましたが、ここで引っこむわけにはいかないと、頭を回転させて反論しました。


「でもわたしはいまよりずっとまえからたぬまるのこと知ってるんだから、昨日今日ばんざいやまのお友だちになったぽこみちゃんよりも、たぬまるが心配になってとうぜんなのよ。それに……、それに……、わたしだってたぬまるが好きなんだもん」


 はなは、ばんざいやまのお友だちみんなのまえで告白をしたのです。

 これには子どもたちだけでなくおとなたちも、きょうみしんしんといった目でつづきを待ちました。


「たぬきはたぬきどうしで結婚したほうがいいじゃない。はなちゃんはうまの日であつまったときにあいてを探せばいいでしょ」

「いまの世のなかは、たぬきとうまが結婚したっていいのよ。なかまどうしじゃなかったら結婚できないわけじゃないんだから」

「わたしはたぬきだけど、たぬきはみんなおっとりしてるわけじゃないんだから。たぬまるくんと結婚するのはわたし」

「ううん、わたしよ」


 ぽこみとはなのあいだに火花がちりました。

 まんなかでこまっているたぬまるに、たぬまるはどうするんだとやじがとんできました。

 どうするといわれても、どうしたらいいかなんてわかりません。

 きょろきょろして、あわあわしているたぬまるを、みんなが見ていました。


「すぐになんて答えはでないよ。もうやめにして、みんなでお昼ごはん、食べようよ」


 お昼ごはんときいて、みんな急にお腹がすきはじめました。

 たぬまるは石になっていたので、自分がおにババ食堂のまえに運ばれてきたことはもちろん、しりようがありません。

 たんなる苦しまぎれです。

 でも、そこがおにババ食堂一号店と二号店のまんまえで、おにババとじゅえるがいて、お腹がすいてきてしまったら、三角かんけいの恋のゆくえよりも食欲が勝ってしまうのは、しかたがないことなのです。

 予定にはなかったことですが、みんなでいっしょにお昼を食べることになりました。

 太陽はぽかぽか、風はそよそよ。ばんざいやまでは、みんな笑顔です。





「いってきます」

「いってらっしゃい」


 たぬまるはやまの広場へと家を出ました。

 なぜだか急いだほうがいい気がして、いつもより早い時間に、家を出たのです。

 きっとやまの広場にはいちばんに着くぞ、と思って、それならぜったいにいちばんがいい、走っていこう、と走りだした足を、ぴたっと止めました。


「たぬまる」


 と呼びかけられたからです。

 たぬまるが声のしたほうを見ると、はながいました。


「はな。どうしたんだ?」

「……、あの……まだちゃんと謝ってなかったから。……その、お父さんのこと、いってごめんなさい」

「いいんだよ、そんなこと。おれも怒ったりたたいたり、ごめんな」


 はなが顔をあげると、たぬまるは優しい顔をしていました。

 だからはなは、泣きそうになりました。


「でも、わたし、すごく無神経なこと……」

「いいんだって。おれには父ちゃんはいない。どんな理由かはわからない。でも、しりたくもない。だって、おれにはおれを、ふたりぶんどころか、三人、四人ぶんもかわいがってくれる母ちゃんがいるから。だから、父ちゃんがいなくてかわいそう、なんていうひともいるだろ? おれはそうは思わない。おれには母ちゃんがいる。それだけでじゅうぶんなんだ。だからおれはかわいそうなんかじゃない。はながいったとおり、おれに父ちゃんはいない。あたり。正解。でも、だからなんだい。みんなが父ちゃんと母ちゃんに半分こしてる好きって感情を、おれは母ちゃんひとりにぶつけられる。いいじゃないか。おれはみんなの倍、母ちゃんが好きで、母ちゃんはおれを四人ぶん、五人ぶん、六人ぶんもかわいがってくれてる。みんな生きてればいろんなことがあるんだ。父ちゃんがいないくらいなんだい! おれはそんなのぜえんぜん気にしない。父ちゃんがいなくたってへっちゃらだ。それがおれ、たぬまるだ」

「たぬまる」

「さあ、広場にいこう。学校が始まるまえに、いちばんのりだ」


 ふたりで肩をならべて歩きだそうとしたまさにその瞬間、


「ちょっとまってええええええ」


 と遠くから声が近づいてきました。

 だれでしょう?


「なによ、はなちゃん、ぬけがけして。たぬまるくんはわたしと学校にいくのよ」

 ぽこみです。

「ぽこみちゃん! ぬけがけとはちがうわよ。それに、ぽこみちゃんはたぬまるくん、わたしはたぬまる。わたしのほうが仲よしじゃない」

「なによ」

「なによ」

「負けないんだから」

「わたしだって」


 女の子ふたりにとりあいをされて、たぬまるがうれしい悲鳴をあげていると、女の子ふたりにこうきかれました。

「たぬまるくんは」

「たぬまるは」

「どっちをえらぶの?」

「えええ⁉ どっち……どっち……どっち……。うわああああああ」


 パニックになったたぬまるは、走りだしました。


「たぬまるくん」

「たぬまる、まって」

「ふたりがけんかするんだったら、またないよ」


 恋がたきのふたりも、好きなひとにそういわれては仲よくしないわけにはいきません。

 仲よくするからとたぬまるの背中にいい、やっととまってもらいました。

 ばんざいやまのお友だちにやってきた恋のつばぜりあいは、いったいどうなるのでしょうね? 


 やまのうさぎが、三人を見ていました。


これにて、第二章、閉幕です。

いかがでしたか? 

寂しさはありますけど、やっぱり笑顔になれるような

そんなエンディングにしたつもりです。

それが届いていたら、嬉しいなあ……。


では、また。

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