表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

第二話 きょうはなにして遊ぼうか。

第一話よりも短めになっております。

でもこの先、もっと短い話もあると、さきほど確認して気がつきました。

でもでも、私が知らないだけで、他の作品ではこれくらいが普通なのでしょうか?

私は世間知らずなのでいろいろと教えていただけたら嬉しいです。


では、どうぞ。

1   きゅうびとごんた


 ばんざいやまの子どもたちは、いま、授業中です。

 大きな木々の葉っぱのすきまから、太陽の光がさしこんでいます。

 風がやさしくふきぬけて、みんなは葉っぱのさらさらが耳にくすぐったいようです。

 きょうもいい天気です。


 きょうの先生をつとめているのはてんぐさまです。

 護身術を教えてくれるのはばんざいやまの用心棒のおおかみ男。

 包丁の使いかたを教えてくれるのはおにババ。

 川で遊んだときにおにババに教わったとおりにつかまえた魚をさばくと、それはおいしく食べられるのです。


 ではてんぐさまはなにを教えてくれるのでしょうか?

 てんぐさまが教えるのはひとつではありません。

 読み書きだったり、変化の術だったり、人間にばけて町におりてようすをうかがったときの教訓だったり、さまざまです。

 ばんざいやまの平和をおびやかした悪いお友だちと戦ったときのお話は、子どもたちはもう三十回はきいているのに、いつもいつもおなじところで手に汗をにぎってこうふんしてしまうのです。


 でもきょうの授業は読み書き。

 字を読んだり書いたりできないと、ばんざいやまの歴史書も読めないし、自分の歴史書を書かなければならない状況になったときに、こまったことになってしまうので、たいせつな授業なのです。

 子どもたちはひらがな、かたかなは読み書きできるようになっているので、つぎの段階である漢字を習っています。


 てんぐさまは、たいくつそうにしている子どもには、しかったりはしません。


「じょうずに書けるようになったじゃないか。ここをこうしたら、もっとじょうずになるぞ。やってごらん。そう、うまい。がんばったで賞をあげようかな」


 そうほめてやる気をおこさせるのです。

 ほめられた子どもはにっこりわらって、がんばって漢字を書いて練習します。


 でも、みんながみんな、たいくつに思っているわけではありません。

 ばんざいやまの歴史書を書くのは、やまでいちばん頭がいいお友だちときまっているからです。

 漢字がすらすら書けて、記憶力がとてもよくて、きれいな字を書けるお友だちでないと、つとまらないお仕事だからです。


 そのうえ、ただ歴史書を書くだけではありません。

 やまのお友だちに話してきかせるというとても重要な役目もあります。

 歴史書を書いてそのお話を覚えて話してきかせるお友だちは、みんなから『語り部さま』とよばれて尊敬されています。

 だから子どもたちにはあこがれのお仕事でもあるのです。


「じゃあ、この漢字をあと十回書いたら、きょうの授業はおしまいにします」

「やったー」


 子どもたちはうれしくて声をあげました。


「だからっていそいで書かないで、ていねいに書かかないといけないよ」

「はい」


 いい返事をした子どもたちは、いわれたとおりていねいに十回書きました。

 そして順番にノートをてんぐさまに渡して、さあ、遊びの時間です。


「てんぐさま、さようなら」

「気をつけて帰るんだよ」


 子どもたちひとりひとりにあいさつを返したてんぐさまは、きつねのきゅうびがノートを渡したときに、こういいました。


「きゅうび、がまさんとは、なかよくやっているのか?」

「はい。親切してもらっています。がまおじさんもがまおばさんも、とてもやさしくしてくれます」

「そうか。ならいいんだ。じゃあ、気をつけて、おそくなるまえにはうちに帰るんだよ」

「はい。さようなら」


 さようならと返してくれたてんぐさまにおじぎをして、きゅうびはくまのごんたといっしょに帰りました。

 ふたりは大のなかよしなのです。

 ごんたはいいます。


「ねえきゅうちゃん、きょうはなにして遊ぼうか」

「うーん、なにがいいかな? 山菜とりはこないだしたばっかりだから、川にいって魚とりでもしようか」

「うん。そうしよう。じゃあ、きょうの夕ごはんのおかずは魚にしようって、おにババにいってからいこうよ」

「うん。さきに魚とりしてるひとがいないといいね」


 きゅうびとごんたは、どちらがいったわけでもなく、走りだしました。



 ああ、それから、ばんざいやまのお友だちは、自分たちのことを『ひと』とよんでいます。

 人間ではないのですけど、だれがいいだしたのかわからないくらいずっと昔から、そうよんでいるのです。

 だからきゅうびもごんたも自分たち、ばんざいやまのお友だちのことを『ひと』といっているのです。

 ちょっと頭がこんがらがりそうだけど、きつねもくまもてんぐさまも『ひと』。

 人間じゃないけど、『ひと』。

 だから、ばんざいやまのお友だちが『ひと』っていったら、人間のことか自分たちのことか、考えてみてくださいね。

ばんざいやまのお友だちの間でも、日本語が使われています。

文字も言葉も日本語です。

てんぐさまもきつねもくまも、外国から来たお友だちだって、日本語で話します。


……意地悪言わないでくださいね。

では、また。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ